生きづらさを感じている女性達の物語を描く『人形たち~Dear Dolls』『Bird Woman』がシアターセブンでいよいよ公開!
4人の女性映画監督が、生きづらさを感じる女性たちの物語を綴ったオムニバス映画『人形たち~Dear Dolls』と短編映画『Bird Woman』が4月15日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開される。
映画『人形たち~Dear Dolls』は、4人の女性監督が、それぞれ人形をモチーフに生きづらさを感じている女性たちを描いた作品で構成されたオムニバス映画。将来に悩む11歳の女の子が、田んぼで拾った手のひらサイズの女性像をきっかけに生きる道しるべを見いだす「JOMON わたしのヴィーナス」(西川文恵監督)。人形と暮らす女が人形と暮らす男と出会う、ボーイミーツガールの物語「Doll Woman」(大原とき緒監督)。上司から受けているハラスメントに苦しむ姉を見て、姉に代わり復讐しようとする妹の姿を描いた「怒れる人形」(海上ミサコ監督)。女らしさとは何か、女性であることとはどういうことか、現実と虚構の間を行き来しながら女性の表象について考察する「オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景」(吉村元希監督)の4作品で構成される。
映画『Bird Woman』は、鳥に変身することで自分の力を見つけた主人公の姿を通して、女性のエンパワーメントを描いた短編作品。パンデミックに見舞われる東京。マスクで顔を隠していることを利用して痴漢をしてくる男たちにうんざりして生きるトキは、鳥のマスクを手に入れる。それを身に着けて電車に乗ったトキは、思いもよらない行動をとる。監督・主演は、映画作家・プロデューサー・俳優として活躍する大原とき緒さん。脚本は、オランダのロッテルダム映画祭で25年にわたりプログラマーを務めてきたヘルチャン・ツィホッフ。2022年、韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭のインターナショナルコンペティション部門に選出され、オンライン上映された139作品の中から観客が選ぶベスト10作品に選ばれた。
映画『人形たち~Dear Dolls』『Bird Woman』は、4月15日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。
『人形たち~Dear Dolls』は、人形をモチーフにしながら、現代を生きる様々な世代の女性を描くエンパワーメントな作品である。
「JOMON わたしのヴィーナス」では、縄文土器を携えながら畦道を歩く女の子に対して、聖なる母的な女性がコンテンポラリーダンスを用いながら語りかけていく。女の子は内なる悩みを抱えているかもしれない。実は何も心配なことはないのかもしれない。されど、畦道を一人で歩いている子は何かを抱えていそうで、語りかけていく姿が印象に残る。されど、最終的には吹っ切れて解放されていく女性を象徴的に描いているようにも感じられた。
「Doll Woman」は、社会の片隅で生きる男女を描いていく。共通するのは、人形が好きであること。思い切って交流しようとするならば、お互いが一番のお気に入りな人形を交換することで心を近づけようとする。でも、それをいきなり実行するのはかなりの勇気が必要で、抵抗さえしてしまうこと。なんだかじんわり温かい気持ちになれる意外なボーイミーツガールの物語。
「怒れる人形」は、会社でのハラスメントへの抵抗を実直に描いていく。ハラスメントを行った側が悪いのは明らかなのに、被られた方が責任を取らされるような展開には怒りしか抱かない。そこで復讐に挑む姿は映画的で応援したくなる。とはいえ、現実的な展開を描きながらも、強く生きていく女性を凛々しく描いており、好感的な作品だ。
「オンナのカタチ ヒトの形をして生まれながらも存在消されしモノの情景」では、女らしさとは何か、女性であることとはどういうことか、といったテーマについて、ヌーヴェルヴァーグ、特にアニエス・ヴァルダをフィーチャーしながら独特のテイストで表現していく。
『Bird Woman』を観ていると、コロナ禍真っ只中で通勤していると、こんなことが起きていたのか!?と驚くほどに憤りを抱いてしまう。そんな状況下、鳥のマスクを用いることで、レジスタンスにもなれるんだ、と意外性があり、興味深い作品である。されど、社会の中には、レジスタンスへの取り締まりをするが如く、変なベクトルに向かっていってしまう。だが、守るべき人が真摯に守る姿を見せられると、社会は正常化していくと信じてやまない限りだ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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