1991年8月のソ連でのクーデターで自由と変化を求める声が沸き起こる姿を追った『新生ロシア1991』関西の劇場でも公開中!
(C)Atoms & Void
1991年の旧ソビエト連邦で起きたクーデターを追ったドキュメンタリー『新生ロシア1991』が関西の劇場でも公開中だ。
映画『新生ロシア1991』は、『ドンバス』『ミスター・ランズベルギス』のセルゲイ・ロズニツァ監督が、1991年8月にソ連のモスクワで起きた「ソ連8月クーデター」を題材に手がけたドキュメンタリー。1991年8月19日、ゴルバチョフ政権によって進められていたペレストロイカに反対する保守派勢力が、ゴルバチョフ大統領を軟禁し軍事クーデターを宣言した。しかし、速報を伝えるはずの公共放送は「白鳥の湖」を流し、混乱したレニングラードの人々はモスクワの状況を知ろうと街に繰り出した。宮殿広場の集会に押し寄せる人の波はいつしか大群衆となり、人々はそこである出来事を目撃する。8月クーデターの3日間、レニングラードに集まった民衆による民主主義の決起を訴える8万人のデモなど市街の様子を、全編アーカイブ映像で描き、ソ連崩壊へとつながる歴史的な出来事を記録した。
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映画『新生ロシア1991』は、関西では、京都・烏丸の京都シネマで公開中。また、2月4日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、2月25日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。
連邦解体が加速する終末ソビエト。保守派による軍事クーデターに直面したレニングラードの町を舞台に、セルゲイ・ロズニツァ監督はカメラを回した人々の記録した歴史を映画に再構成している。
再構成された歴史は、観客に自由化を求める人々の行動、言葉、歌、仕草をエネルギッシュな物語として伝えていく。情報統制のためにテレビで流され続けたという「白鳥の湖」をBGMに、クーデターを批判するために集まった人々のエネルギーはやがて自由化からソビエトの打倒、新生ロシアの建国の声となり、政治と軍をまとめた運動に発展する。物語のダイナミズムがボリシェビキによって神話とされた「十月革命」のプロットと似通っているのが皮肉だ。社会主義による労働者と農民の融和を謳ったボリシェビキの旗は、自由を求める人々が掲げた三色旗によって引きずりおろされたが、今やその旗は圧政と破壊のシンボルになってしまった。
観るものをスクリーンに引きずり込むような自由のための反抗が生み出したものが新たな圧政であったことを振り返ると、熱狂に包まれた1991年のレニングラードを見る目が変わってくる。観客は車からデモの町に降りてくる男達の中にある男がいることに気がつくかもしれない。まるでロズニツァ監督のメッセージのサブリミナルに思えてならなかった。
fromにしの
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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