ライフワークの如く創造された貴重な作品を公開!「Visualism 手塚眞アート映画集」京都みなみ会館で開催!
©有限会社ネオンテトラ
『白痴』『ばるぼら』などで知られる映画作家の手塚眞さんがライフワークとして創り続けている短編アート映画の特集上映「Visualism 手塚眞アート映画集」が12月3日(土)より京都・九条の京都みなみ会館で開催される。
特集上映「Visualism 手塚眞アート映画集」は、アニメーションからダンス、音楽、俳優とのコラボレート作品等多岐にわたり、劇映画とは一味違うアート感覚溢れる作品を上映。最新作や未公開作品を含めた、1987年から2022年までの計12作品を、3プログラムにセレクト。上映に際しては手塚監督にゲストも加え連日トークショーが開催される。
各プログラムは以下の通り。
【program black 地霊のダンス】
日本各地で、ダンス、映像、音楽をコラボレートさせる映画プロジェクト。ドキュメンタリーでもドラマでもないアプローチで「土地」を描く表現的な連作。
[上映スケジュール]
12月3日(土)17:00~ ゲスト:アリスセイラーさん(ミュージシャン、アーティスト)
12月5日(月)19:00~ 手塚眞監督トーク
12月7日(水)19:00~ 手塚眞監督トーク
『OKUAGA』(2016/デジタル/20分)
出演:松崎友紀 撮影:辻健司 音楽:田口雅之
新潟県阿賀町で撮影された第1作は、ダンスとカメラの完全な即興による奇跡のアート。
『HINOHARA』(2022/デジタル/40分 ★最新作初公開)
出演:Nourah、芹川有里、他 撮影:辻健司 音楽:赤城忠治、他
東京都唯一の村、檜原村。首都の辺境を3年に渡り取材。古代の原風景から貴重な祭りの情景までをイメージ豊かにモンタージュしてゆく。時空や意味を映画的に超えたフリーフォームの作品。
『TUNOHAZU』(2021/デジタル/32分 ★最新作)
出演:Cay 撮影:辻健司 音楽:PHONOGENIX
「角筈」とは新宿の古名。作者が愛し続ける街、新宿をモチーフに、ダンサーの肉体を通して描かれるフィジカルなコスモポリス論。
『HINOHARA』より ©有限会社ネオンテトラ
【program blue 視覚のエクスタシー】
四大元素をモチーフに連作されたシュールでありながら極めて映画的なアート・フィルム。藤井春日さんのカメラ、橋本一子さんの音楽が繊細に絡み合い、至上の映画美学を構築している。長編映画『白痴』(1999年)の姉妹編とも言える『実験映画』は手塚映画美学の集大成とも言える。
[上映スケジュール]
12月3日(土)19:30~ ゲスト:原將人さん(映画監督)
12月4日(日)17:00~ ゲスト:林海象さん(映画監督)
12月8日(木)19:00~ 手塚眞監督トーク
『NUMANITE』(1995/35mm→デジタル/23分)
出演:田中久美子、宮本はるえ、神林茂典、甲田益也子(ナレーション) 撮影:藤井春日 音楽:橋本一子
「水」をモチーフにした美しい幻想譚。沼の底に棲む姉妹とその恋人の物語は、時間と共に歪み始める。
『NARAKUE』(1997/16mm→デジタル/44分)
出演:倉田和穂、櫻田宗久、小野みゆき、草刈正雄、ほか 撮影:藤井春日 音楽:橋本一子
「土」をモチーフにした地底の映画。映像による地獄巡りとも言える。50シーンを1カットに繋ぐ驚愕の構造が世界でも高く評価された。
『実験映画』(1999/35mm→デジタル/40分)
出演:永瀬正敏、橋本麗香 撮影:藤井春日 音楽:橋本一子
「廃墟の中で一人の少女を映画に撮ること。期限は一週間。」謎の依頼から始まる映画撮影は想像を超えた展開を見せる。永瀬正敏、橋本麗香というプロの俳優を使い、実際に一週間で撮影された脚本の存在しない映画。
『ダニエルとミランダ』(1996/16mm→デジタル/5分 ★デジタル版初公開)
アニメーション:手塚眞 音楽:橋本一子
手塚眞の手書きによるシンプルなアニメーションは『NUMANITE』の変奏曲。「もし絵コンテが動いたら」という発想から生まれたキュートな小品。
『NARAKUE』より ©有限会社ネオンテトラ
【program white フィルムの神秘】
映画のコンポジションやメカニズム、テクニックを熟知した作者による紛れもない映画の冒険。代表的な実験映画から最新のアートフィルムまで。「Visualism」に貫かれた手塚眞の映画宇宙。映画を志す者は先ずこれを視るべきだ。
[上映スケジュール]
12月4日(日)19:30~ 手塚眞監督トーク
12月6日(火)19:00~ 手塚眞監督トーク
12月9日(金)19:00~ 手塚眞監督トーク
『MODEL』(1987/16mm→デジタル/10分★デジタル版初公開)
出演:Evelyn 撮影・アニメーション:手塚眞 音楽:土屋昌巳
手塚眞実験映画の初期の代表作で、写真コピーを使ったアニメーション。上下に流れるシンプルな動きは次第に複雑なモンタージュを生み出してゆく。ミニマルアートのスタイルから発展してゆくイメージの多様性。
『燐』(1993/16mm→デジタル/3分 ★デジタル版初公開)
出演:えとうなおこ 撮影・アニメーション:手塚眞 音楽:大津真
燐の光のような仄かなイメージをフィルムに定着。日本的な美の表現である「余白」や「移ろい」を映画の中で描いた動く絵画。写真のコピーのみを素材に使い、繊細なディゾルブも全てコピー機の中で行っていることが興味深い。
『MIND THE GAP』(2020/デジタル/24分 ★初劇場公開)
出演:サヘル・ローズ、田中玲、ほか 撮影:辻健司 音楽:松岡政長
反復するフィルム・ノワール。スリリングに崩壊する構造の美学とユーモア。映画のメカニズムに踏み込んで破壊し、そこから新たな美学を組み上げる力作。
『謎 AENIGMA』(2021/デジタル/46分 ★初公開)
出演:植田せりな、Nourah、蜂谷眞未、峰のりえ、ほか 撮影:辻健司 音楽:GHOST HARMONIC
漢字一文字から想起させるビジョンを俳句のようにシンプルなエピソードにまとめ上げた短編集。「幽」「玄」「杳」の三つのエピソードはそれぞれ全く趣向を異にする。手塚眞が近年取り組むミニマルで静的な映画の旅。
『変容』(2022/デジタル/40分 ★最新作初公開)
出演:蜂谷眞未、岡田帆乃佳 撮影:辻健司 音楽:橋本一子、田口雅之
世界は変容していくのだろうか?手塚眞の最新作は世界的なパンデミックの中でインスピレーションを得たシリーズ作品。表と裏の同時存在、多層的宇宙、ジェンダーを超えた存在といった現代的なテーマを孕んでいる。
『MODEL』より ©有限会社ネオンテトラ
特集上映「Visualism 手塚眞アート映画集」は、12月3日(土)から12月9日(金)まで京都・九条の京都みなみ会館で開催。
手塚眞監督と聞くと、第4回ぴあフィルムフェスティバル入選後に『星くず兄弟の伝説』のような実験的な世界観を以て劇映画を手掛けたり、『白痴』のような耽美な世界観を伴ったアート映画を手掛けていたりと様々な作品に携わっている印象がある。そういった長編映画の裏では、コンスタントに短編映画を制作してきた。今回の特集上映では3つのカテゴリーに分けて上映されていく。可能な限り拝見させて頂いたが、本当に様々であった。
【program black 地霊のダンス】では、人間が日本由来の自然や構築されてきた都会と共にダンスを行い、気づいたら、独自の世界観に惹き込まれてしまう。【program blue 視覚のエクスタシー】では、『白痴』や『ばるぼら』で垣間見た耽美的世界観に酔いしれていく。『ダニエルとミランダ』ではシンプルな手書きのアニメーションを用いても耽美主義を貫いており、驚いてしまった。【program white フィルムの神秘】では、かつてのサイレント映画を観ているような感覚になってしまう。しかし、現代の映像技術を用いてアイデア満載の作品で、いつまでも観たくなった。
各々の作品において、短編作品だからこそ出来ることを存分に表現していた。ヴィジュアリストという肩書きを以て映像制作を手掛けていることに納得せざるを得ない。どんなインスピレーションをしているのか気になってしまう。上映期間中は劇場に毎日来館されているので、是非とも聞いてみたいものだ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!