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コロナ禍で腹立っていることをかなり盛り込んだ…『夜明けまでバス停で』高橋伴明監督に聞く!

2022年10月21日

コロナ禍で住まいと職を失いホームレスになった女性と、その周囲の人々の自尊心ゆえに生まれる“社会的孤立”を浮き彫りにする『夜明けまでバス停で』が10月21日(金)より関西の劇場でも公開。今回、高橋伴明監督にインタビューを行った。

 

映画『夜明けまでバス停で』は、『痛くない死に方』『禅 ZEN』等の高橋伴明監督が板谷由夏さんを主演に迎え、バス停で寝泊まりするホームレスにならざるを得なかった女性を主人公に、社会的孤立を描いたドラマ。昼間はアトリエで自作アクセサリーを販売し、夜は焼鳥屋で住み込みのパートとして働く北林三知子。しかし突然訪れたコロナ禍により、仕事も住む家も失ってしまう。新しい仕事は見つからず、ファミレスや漫画喫茶も閉まっている。行き場をなくした彼女がたどり着いたのは、街灯の下にポツリとたたずむバス停だった。誰にも弱みを見せられないままホームレスとなった三知子は、公園で古参ホームレスのバクダンと出会う。一方、三知子が働いていた焼鳥屋の店長である寺島千晴は、コロナ禍の厳しい現実と従業員との板挟みになり、恋人であるマネージャーの大河原智からのパワハラやセクハラにも悩まされていた。

 

東京・幡ヶ谷のバス停で、2020年の冬に実際に起きた事件を基にした本作について、高橋監督はアウトラインや方向性を決め、シナリオ形式にしたものについて、梶原阿貴さんと時間をかけてキャッチボールをしながら、脚本を仕上げていった。各メディアからの取材を受けていく中で「どちらが書いたセリフか?」と聞かれるが「今回は自分の名前を出していない。私が書いたものを彼女が反映させた以上は梶原の脚本なんですよ」と断言する。コロナ禍に関することをベースとして、方向性を最初に決めており「クライマックスは最初から決めていた。事件はヒントになったが、実際の人物とは年齢が違う。その時点で、クライマックスは自由に出来る。新たな登場人物を作ることができ、自由な発想で様々なエピソードを追加していった」と説く。顕著な例として、ホームレスの老人を3人登場させていることを挙げ「制作意欲が湧いてくる物語になっていきました」と表す。昨今の日本の情勢について、ずっと腹立っており「安倍政権が極めて顕著。元を考えれば岸信介。腹立っていることをかなり盛り込んだ」と話すが「本当は、憲法改正問題や『教育と愛国』が取り上げた問題を抱えているが、盛り込めない。盛り込み過ぎると別の作品になってしまう」と察した。とはいえ「またチャンスがあればふれたい」と怒りを作品に反映させていく意欲は止まらない。

 

キャスティングにあたり、高橋監督が依頼した方と、プロデューサーから提案された方がいるが「初対面の人も結構いますが、初めての方と出会うのは好きなので。どんな演技をするのか観る必要はない。役者として仕事をしている以上、力量を確認する必要はない」と各々の俳優を信頼している。一緒に作ってみたい人や、この台詞を言わせたい人などといった選んだ理由は様々だが「柄本明に関しては、ぜひ演じてほしかった」と明かす。しかし、当時の柄本さんは明治座で座長公演を上演しており、映画の出演は到底無理で諦めようとしたが、御本人が「どうしても出演したい」と伝えてきた。柄本さんにとっても「これに出ておかないと…」という思いがあり「自分の代弁者のような役割分担だったので、結果的に撮れて良かった」と監督は満足している。主演の板谷由夏さんとは20年ぶりではあったが「何も変わっていない印象がある。シンプルで余計なことをしない、昔のままの板谷だな」と感じながらの再会となった。焼鳥屋のマネージャー役を演じた三浦貴大さんについては、スタッフから「彼が嫌な役柄をしっかりと演じたら、おもしろいかな」「彼が汚れ役を演じたら、逆におもしろい」と声が挙がりキャスティングしている。セクハラな振る舞いをするシーンでは、三浦さん自身も遠慮することがあったが「女優さんの了解の下、思い切って嫌な奴をしっかりと演じてくれた」と称えた。

 

撮影に関しては大きな苦労をすることがなく、基本的には順調に進められている。三浦さんがゴミを浴びるシーンがあるが、上手くゴミが引っかかることもあったが「概ね気持ち良く進行しました。特に、都庁に向かって歩き出すシーンは、高倉健と池辺良をイメージしていて好きなシーンだ」と語った。また、作中では実際のニュース映像が挿入されているが、国会のアーカイブ映像を使用しており「何を云われてもかまわない」と開き直り、堂々としている。なお、これまで手掛けてきた作品に対して「どこかで格好つけていた」と認識しており、今作では「難しい言葉を排除し、自分の思いを簡単な優しい言葉で表現できたのが良かった」と満足していた。完成した作品について「キャストやスタッフの皆が概ね納得している。クライマックスシーンについては気持ち良さがあり、気に入ってくれました」と達成感がある。

 

映画『夜明けまでバス停で』は、関西では、10月21日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、10月22日(土)より大阪・難波のなんばパークスシネマや十三の第七藝術劇場、神戸・三宮のkinocinema神戸国際で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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