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大阪・梅田の茶屋町にあるミニシアターとして、感謝の気持ちと共に最後まで全うします…テアトル梅田の木幡明夫支配人に聞く!

2022年9月12日

9月30日(金)の営業をもって閉館することが発表されている大阪・梅田のテアトル梅田の支配人である木幡明夫さんにインタビューを行った。

 

テアトル梅田は、1990年4月のオープン以来、32年にわたって関西のミニシアター文化を牽引してきた。今回、契約満了により9月30日(金)の営業をもって閉館する。エンターテインメント作品からアート作品にいたるまで世界中の良質な作品を上映し、数多くの映画ファンに親しまれてきた。

 

運営元である東京テアトルは、自社が設立した劇場から始まって以来、セゾングループの劇場を運営したり、パルコが持つ劇場(パルコ調布キネマ、厚木テアトルシネパーク、津田沼テアトルシネパーク、新所沢レッツシネパーク)の運営を委託された後に東京テアトルへ組み込んだりしている。また、日活のシネ・リーブルを全面受託したり、シネカノンから継承されているヒューマントラスト有楽町・渋谷もあったり、膨らみながら事業を整理しながら変化してきた。そして、関西の拠点としてフラッグシップとなる劇場として最初に開館したのがテアトル梅田である。

 

現在の支配人である木幡さんは、2017年12月に東京・有楽町のヒューマントラスト有楽町からテアトル梅田の支配人として赴任。途中、2019年後半にシネ・リーブル梅田の支配人を1年間担った後に、再びテアトル梅田の支配人を務めている。神奈川県厚木市の厚木テアトルシネパークに子供の頃から通っていた木幡さんは、まずはアルバイトで働き始めており「仕事がおもしろかった。フィルムを繋いで映写することも楽しかった」と映画館での仕事にのめり込んでいく。茨城県水戸市の水戸テアトル西友でのスタッフ募集に手を挙げ、社員としての勤務がスタートした。数年働いた後には、支配人となり閉館時まで担った。また、埼玉県所沢市の新所沢レッツシネパークでの勤務や千葉県船橋市の津田沼テアトルシネパークにおいても支配人を務め、閉館まで担っている。その後、初めてミニシアターへの配属として、ヒューマントラスト有楽町では営業職として携わり、ミニシアターの実務から細かい仕事まで一通りのノウハウを学んだ。そして、テアトル梅田の支配人へと至っている。

 

東京テアトル系列の映画館における支配人の仕事は、劇場のマネージメント・運営全般と作品の時間や回数の調整、企画といった業務を担う。番組の編成については、本部側の編成担当者が担い、劇場側と相談しながらブッキングしている。配給会社とのやり取りもしながら、支配人は劇場の運営に専念してきた。木幡さんは各地の劇場へと勤務し、支配人も担ってきた中で「東京テアトルは現場主義。出来るだけ現場に出て、現実を感じることを大切にしている」と実感しており、映画館での仕事を愛してやまない。

 

そして、上映される作品は、お客様に長く観て頂けるように努力している。近年では、『この世界の片隅に』に関しては「スタッフの作品に対する思いが強かった」と聞いており「テアトル梅田での上映が長くなるにつれて、お客様にとっては作品の聖地化になってきた。上映作品は先々まで決まっているので、他の配給会社さんに不義理とならないような形で、如何にして上映期間を延長できるか」と大変だった。日頃の業務から「編成担当と現場のぶつかり合いは多少なりとも起こる出来事ですかね」に冷静に話す。最近では、『こちらあみ子』の上映が延長されてきたが「上映することに意義がある作品。お客様同士でも見解の違いがあって話が盛り上がる作品。子供の有無による立場の違いで捉え方が違ったりすることがおもしろかった。社内でも捉え方が違っていた」と受けとめている。「編成担当は脚本段階で読んでおり、嫌悪感すら持っていた作品が映像化されて見方が変化した。現場としても思い入れのある大事な作品」と大切にしており「劇場が上映を延ばしたいと思っていた、というより、編成担当と一緒になって、どのようにして上映していこうか話し合い、出来る限り上映しました」と明かす。結果として「最終日に井浦新さんが舞台挨拶に来て頂いて良かった。お客様の反応が興味深かったので、上映している側としても思い入れが強くなりますよね」と感慨深い作品となった。

 

今回、テアトル梅田の閉館となり「私自身で閉館する劇場は今回で3館目。社内では、”クローザー”と呼ばれています」と苦笑いしながらも「歴史ある劇場であり、東京テアトルに入社する前から知っている劇場でした。大阪のミニシアターといえば…!という存在」と物語る。また「1980年代頃、お洒落で背伸びしていくような場所として、ミニシアターは東京でオープンしてきた。関西では、テアトル梅田が”走り”の存在として、茶屋町エリアの開発に合わせて、梅田ロフトと同時にオープンした。映画をはじめとした大阪の文化的な街である茶屋町として形作った一角ではあった」と受けとめてきた。「1980年代から1990年代にかけてのミニシアターブーム当時の状況と比較すると、苦しんできたこともあります。だが、テアトル梅田を閉める、とは社内の多くの人間が考えたことすらなかった」と打ち明けながら「大ヒット作があった年はどうにかなるが、ヒット作がない年はかなり厳しい、というのはどの劇場も同じ。ミニシアターがどうあるべきか。どうしたらお客様に来てもらえるか。どのようにして未来につなげていけるか」とコロナ禍以前から議論は続いている。そんな状況下、コロナ禍や様々な要因がある中で「大阪ではテアトル梅田とシネ・リーブル梅田の2館があり、其々だけで考えることではない。梅田に6スクリーンがあるということで様々に考えてきた」と鑑みながら「テアトル梅田は、過去のミニシアターブーム含め、牽引する役割を担ってきたことは間違いない。だが、その役目は終わったんじゃないか」という議論がなされていく。「シネ・リーブル梅田は、4スクリーンもあり、資源を集中して盛り上げていく。テアトル梅田が茶屋町の開発と共に発展したと同じように、うめきた地区がこれから開発されていく未来があり発展的な場所となる」と未来を見据え「テアトル梅田は役割を終え、整理されることになった。様々なことが複合的に重なり、閉館という判断になった」と説明する。とはいえ、閉館することを聞いた時「そんなのはありえない、残念だ」と、イチ映画館のファンとしても、働いている者としても受け入れ難かった。経緯を直接聞き「会社として前向きな判断なんだ」と理解しながらも、悔やむに悔やみきれない。なお、7月19日(火)に閉館が発表されて以降、Twitterからも様々な声が挙がっていたが、その中にはテアトル梅田へと繋がる階段に関する言及もあった。独特の音楽が流れているが「外側の音に関しては全く関与しておらず、梅田ロフトさんの趣向ですね。こちらが聞きたいですね」と応えながらも「あれを聞くと、テアトル梅田に来たなぁ、と思って下さる。スタッフは毎日聞いているので、逆に聞こえなくなっていると思います」と指摘。木幡さん自身は「独特なリズムなので、当初、毎日聴いていると気が狂いそうになりましたね」と漏らした。

 

9月16日(金)からは、さよなら興行『テアトル梅田を彩った映画たち』が開催される。32年の歴史を振り返ることになるが、フィルム映写機は数年前に完全に撤去しており、2010年以前のフィルムしか素材がない作品は上映できない。「午前十時の映画祭」やデジタルリマスター版によるDCP素材やBlu-ray素材があれば、権利があれば上映可能だ。しかし、上映権を日本で持っていた会社がなくなっている場合もミニシアター系の作品ではかなりの数がある。編成担当や劇場のスタッフにも「さよなら興行で何を上映しようか」と相談しながら、テアトル梅田の歴代動員数ランキングの中からは『アメリ』『トレインスポッティング』『この世界の片隅に』『ピンポン』『ムトゥ 踊るマハラジャ』といった作品がラインナップされており「どうしても後年の作品ばかりになってしまう。出来れば1990年代の作品を…と画策し、どうにか揃いました」と話す。また、さよなら興行では、アニメーション作品にも力を入れており「ファミリー向けや漫画原作ものがメジャーにある一方で、大人向けやオタク向けに始まったアニメーションが当時はコアなものだと云われていた。都市圏ではミニシアターで上映される作品だった」と説く。新海誠監督や細田守監督の初期作品はミニシアターでロードショー公開されていたが「一気にアニメーションがメジャーになり、コアなものではなくなった。ローカルでは、地元の映画館が淘汰され、シネコンで上映されていたが、都市圏での『空の境界』シリーズや今敏監督作品をミニシアターで上映する役割を担ってきた」と振り返り「お客さんが熱く、物販が飛ぶように売れていく熱狂は未だにスタッフの記憶にあります。昔の話をすると当時のアニメーション作品の熱狂や大変さも印象的ですよね。ミニシアターブームとは違う盛り上がり」と懐かしむ。とはいえ、最後の週まで現在の興行も続ける必要もあり「9月16日(金)公開の『よだかの⽚想い』は勿論、『ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3』も『WKW 4K ウォン・カーウァイ 4K」も沢山のお客様に観に来て頂いていますので、出来る限り上映したい」と意気込んでいる。特に、ウォン・カーウァイ監督作品については、木幡さんが高校生時代に渋谷のミニシアターへと行き始めた頃に劇場で観ており「出来るだけ上映し続けたい」と思い入れは強い。

 

9月30日(金)の閉館に向けて「非常に残念なことではありますが、テアトル梅田がこれまで担ってきた役割は、皆さんが惜しんでくれる声を聞くにつれ、その役割を全うできたんじゃないか。よく頑張った」という思いがあり、東京テアトルとして「テアトル梅田がこれまで担ってきたことを前向きな形でシネ・リーブル梅田に引き継ぎながらやっていきます」と話す。幕を閉じることについて「泣く泣く…ではなく、全うしました、ありがとうございました、という気持ちで最後まで続けたい」と望んでおり「閉館して退去した後も、出来ればココに映画館が出来てほしい。シネ・リーブル梅田とは競合になりますが、大阪のミニシアターのスクリーンが減ることは損失。早く映画館が出来てくれればいいなぁ」と願っている。

 

さよなら興行『テアトル梅田を彩った映画たち』は、9月16日(金)より開催。テアトル梅田は9月30日(金)の営業をもって閉館する。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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