Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

クランクイン前、言葉を交わさずとも、心で距離を縮められた…『春に散る』横浜流星さんと佐藤浩市さんを迎え舞台挨拶開催!

2023年8月8日

不公平な判定負けを経験したふたりのボクサーが、共に世界チャンピオンを目指す『春に散る』が8月25日(金)より全国の劇場で公開される。8月8日(金)には、大阪・なんばのTOHOシネマズなんばに横浜流星さんと佐藤浩市さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『春に散る』は、沢木耕太郎さんの小説を佐藤浩市さんと横浜流星さんのダブル主演で映画化し、ボクシングに命をかける男たちの生き様を描いた人間ドラマ。不公平な判定で負けたことをきっかけに渡米し40年ぶりに帰国した元ボクサーの広岡仁一と、同じく不公平な判定負けで心が折れていたボクサーの黒木翔吾。飲み屋で出会って路上で拳を交わしあい、仁一に人生初のダウンを奪われた翔吾は、彼にボクシングを教えてほしいと懇願する。最初は断る仁一だったが、かつてのボクシング仲間である次郎と佐瀬に背中を押されて引き受けることに。仁一は自信満々な翔吾に激しいトレーニングを課し、ボクシングを一から叩き込んでいく。やがて世界チャンピオン・中西との世界戦が決まるが…
共演にも山口智子さん、橋本環奈さん、哀川翔さん、片岡鶴太郎さん、窪田正孝さんら豪華キャストが集結。『ラーゲリより愛を込めて』『護られなかった者たちへ』の瀬々敬久監督がメガホンをとった。

 

上映前、横浜流星さんと佐藤浩市さんが登壇。作品が持つ熱さが鑑賞前から伝わってくる舞台挨拶が繰り広げられた。

 

今や瀬々敬久監督作品の常連と呼ばれるような存在となった佐藤さんだが「あんまり仲良くないんですけどねぇ」と冗談を言いながらも「なぜかお付き合いは長いですね。一番最初は『ヘヴンズストーリー』という4時間38分の映画だった。インディペンデント映画に近い作品からの付き合い。もう何本になるかなぁ」と感慨深げに話す。一方、横浜さんは瀬々監督とは初めてで「とにかく瀬々さんが熱かったですね」と振り返る。オファーを頂いた際、瀬々監督から「この本に全てが込められている」と言われながら、松本大洋さんによるボクシング漫画『ZERO』を渡された。その後、横浜さんはボクシングの練習に取り組んでいく中で、瀬々監督が頻度に観に来ており、様々なことを話してもらった。瀬々監督について、佐藤さんは「無駄に声がデカい。ボクシング練習している狭いジムでも声がデカい。変にデカくて、相手を威圧したいのかな」と言いながらも「ピンク映画出身なので。当時は、オールアフレコ。だから、芝居を観ながら演技指導をすることもある。芝居を観ながら熱くなって『もっともっともっと!』って。その時の癖じゃないかな、声がデカいのは」と推察する。

 

撮影後の今年6月、横浜さんはボクシングプロテストに合格した。きっかけは沢山あったようで「撮影中にも、皆さんから後押しされた。受けたのは撮影が終わってからなので、撮影後もずっと練習を重ねていた。とにかく、格闘家への敬意を表したかったし、失礼のない思いを込めたかったし、この作品に懸ける思いを証明したかったな」と堅い意志を込めており「ボクシングだけなんですよね。プロライセンスというかたちで証明できる」と知り、挑戦している。佐藤さんは「今回、松浦慎一郎さんがボクシング指導・監修かつ出演していたり、レフリーも実際に世界戦をさばいている方。彼の本気度を観て、冗談も含め『やってみたら?』と。でも、本気で受ける、と聞き、こいつの中でケジメなんだな」と気づき「普通に考えると、この映画を撮る前にボクシングテストを受ける。理屈は分かりやすい。ライセンスを取り映画に挑んでいる、というのは分かりやすい。そうじゃなく、彼の中で、自分の映画に対するケジメのつけ方がそれだったんだな」と感じていた。

 

 

トレーニングは佐藤さん自身も受けており「僕は、元ボクサー(の役)なんで、何故トレーニングに行くんだろうな」と惚けながらも「僕で(クランクインの)2,3ヶ月前か。9月ぐらいから行った。彼は4月ぐらいからやっていた。ミット打ちの練習からシャドウ。ベーシックなことをやらさせて頂いた」と謙遜。横浜さんについて「彼は本当に格闘技をリスペクトしている人間なんで、パンチがかなり強いし重い」と感じており「ミットで受ける場合、パンチを繰り出す相手が『良いパンチがきてるぞ、いいぞ、いいぞ』と気持ちが盛り上がるように、良い音させるにはパンチを受けにいく。退いたらアウト。相手から来たパンチを受けにいく。中には鉄板のようなものが入っており、かなりの衝撃がくる。肘や、特に肩がかなりクる。撮影が終わって、ゴルフが出来なくなったら、プロデューサーを訴えてやろうかな、と思っていた」と冗談交じりに大変さを力説した。これを受け、横浜さんは「その痛みを僕は知っているので、最初は躊躇しちゃうところもあったんですけど、やる度に浩市さんが『本気でこい』と言って下さるので、その言葉に乗っかって飛び込んで思い切りいかせてもらった。でも、痛そうにされているのも見ていたので、毎回『申し訳ないです』と思いながらも」と佐藤さんの大変さを理解しながらも「ミットは信頼関係が成り立たないと絶対出来ないもの。それをクランクイン前に合わせることが出来たので、言葉を交わさずとも、心で距離を縮められた気がする」と話し、貴重な時間を過ごせたようだ。

 

哀川翔さんや片岡鶴太郎さんとのボクシングジムでの三羽烏的な役どころについて、佐藤さんは「いわば負け犬に近い。人生で一番良かったのはボクシングをやっていた時で、世の中に対して斜に構えている部分がある初老の男達。若い奴らからも含め自分達の中にも何かを取り戻したい、と思っている」と表現する。そういった大先輩の方々と共演し、横浜さんは「幸せな環境の中で、翔吾として生きられたなぁ」と実感しており「僕は12月1日からクランクインしたんですけど、もっと撮りたかったなぁ、もっと皆さんといたかったなぁ。でも、その儚さがいいのかなぁ」と感慨深げだ。これを受け、佐藤さんは「こんなところからクランクイン出来るか、という場合もある。下手すると、ラストシーンからクランクインすることもある。何が幸いするか、出来上がりを観なきゃ分からない部分がある。こんなところから入るのは大変だな、と思っても、出来上がったものを観てみると、あそこから入ったことを逆算してみたら、良かった。それぞれの役の背景は映画の中では語られていないけど、どういう過去があったのか、をお客さんが感じながら観て頂ける映画になっている」と冷静に話す。今回の佐藤さんは、大分での橋本環奈さんとの共演シーンからクランクインしており「本人自身の懸ける気持ちが観ていても分かってきた。彼女の役回りについて多くは語られていない。その中で、彼女が僕と過ごしながら、今までと違った雰囲気の中で、自分や人生を語っているな」と伝わってきた。横浜さんも「彼女も役と真摯に向き合っていた。カメラ周っていない時は話さなかった。芝居を通して心を通わせていく。翔吾と佳菜子の関係性も多くを語っておらず、余白がある」も述べていく。

 

 

なお、舞台挨拶の前には、道頓堀にある大型ビジョンであるトンボリステーションに生出演していた。佐藤さんは、23~24歳の時に深作欣二監督の『道頓堀川』に出演しており「ひっかけ橋を渡るシーンからロケで撮った、と記憶しているんです。当時と多少変わったけど、大阪の街の雰囲気は『観たな、ここ』という気がしますね」と思い出深い。横浜さんは「活気づいてきた。人が沢山いて立ち止まって見て下さっていた。嬉しい気持ちになりました」と楽しんだ。コロナ禍から漸く活気が戻ってきた現在について、佐藤さんは「全部が元通りではないけど、皆さん達が一番知っている時の祭りの賑わいとは違うかもしれない。やっと少しだけ日常、祭りを味わっても大丈夫なんだよな、という空気感が出てきた!これが一番大事なことなんじゃないか。それによって、徐々にこれからもっと取り戻していける」と俯瞰している。

 

最後に、横浜さんは「皆さんがこの作品を観て、何か感じたことがあったら、是非周りの方に伝えてこの作品を広めて下さると嬉しいです。きっと熱い作品になっていると思います」とメッセージ。佐藤さんは「映画はもっと熱いです。最後まで観て頂いたら、そういうことだろうな、と思いながらも観終わった後に、もっと大きなお土産を持って帰られる映画になったな、と思います。痛いのが嫌いな女性でも、それを乗り越えたところで、この映画のボクシングシーンも観れると思います」と優しみのある思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『春に散る』は、8月25日(金)より全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や七条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts