タイトな撮影とじっくりとした編集で作り上げられた…『恋愛準々決勝戦』小濱匠監督に聞く!
とある夫婦と、妻の親友の女性との間の三角関係を描く『恋愛準々決勝戦』が大阪・十三のシアターセブンで6月18日(土)と6月19日(日)に公開される。今回、小濱匠監督にインタビューを行った。
映画『恋愛準々決勝戦』は、「愛するということ」をテーマに、ひとりの男とふたりの女が織りなす三角関係を描いたラブストーリー。真里と秋親の夫婦に、真里の親友である渚。信頼する2人に裏切られていたことを知った真里は、その事実をなかったことにしようとするが、やがてその行動に異変が起こる。監督は、これが劇場公開デビュー作となる新鋭の小濱匠さん。沖縄出身で琉球放送で報道局カメラアシスタントとして勤務した後、映画監督の道を志して上京し、映画美学校20期フィクションコースに学んだ小濱監督が、映画美学校の仲間とともに作り上げた。
映画美学校の修了制作である本作。フィクションコースの授業内でテーマを持ち寄り、シナリオ化された作品の中で選ばれて撮影することになった。当初、小濱監督は、双子を題材にした作品を考え「同じ顔で別のことを考えている人間を描こう」と模索したが、想定していたおもしろみが表現できず悩んでしまう。だが、生まれ変わりや憑依を題材にすることを着想。そして『恋愛準々決勝戦』というタイトルは、フレッド・アステア主演の『恋愛準決勝戦』を引用しており「ダンスの要素があるライトな作品を構想しました。ストーリーの先に膨らみがあるという意味も込めている」と説く。
キャスティングでは、映画美学校のアクターズコースで学んでいた鈴木睦海さんと仲良くしており、渚役をオファー。柴山晃廣さんと佐伯美波さんとは、別の撮影現場で知り合い、オファーした。なお、柴山さんが演じた秋親は、独特の気だるい雰囲気を醸し出すキャラクターであるが「柴山さんが作ってきたキャラクター。基本的に、役者が作ってきたキャラクターは活かしたい」と役者の意思を大切にしている。
予算が少ない中での撮影を敢行しており、ロケーションは映画美学校の後輩が住む住宅やスタッフが仲良くしている不動産屋さんをお借りすることが出来た。また、映画美学校でお世話になった万田邦敏監督が立教大学で教授をしていることで、学内で撮影させてもらい、費用を抑えている。更に、4日間で撮影というタイトなスケジュールになり、演出に多くの時間をかけられなかったが「僕なりに役者に動きをつけることが出来た」と納得。とはいえ、過密スケジュールに追われ、最終日は頭が回らずシナリオが理解出来ない状態になってしまい「助監督にサポートしてもらいながらリラックスした状態で現場に戻れた。気心知れた役者とスタッフに助けられました」と大いに感謝している。
撮影はタイトなスケジュールだったが、編集に関しては半年かけてじっくりと取り組んだ。監督とカメラマンで取り組んでおり「しっかり話してカット割りを行い、助監督の意見も聞きながら進めていきました。現場でイメージしたカット割りで編集できている」という自信もあるが「こうすればよかったかな、と悔しさもありました」と打ち明ける。さらに自身で整音もしており、かなりの時間を要しながらも仕上げていった。
昨年、東京・吉祥寺のアップリンク吉祥寺で公開しており「僕と面識のないお客さんから良い反応を頂いたり質問を受けたりした時、ようやく映画を撮った、という実感が得られた」と感慨深い。また、知り合いにも観てもらったが「撮らなそうな作品を撮っている、イメージとは違っていた」という反応もあった。なお、3年前に本作を撮って以降、録音技師のアシスタントとして録音部として商業映画の現場に参加してきたが「様々な監督の現場を体験しシナリオを読み、自分自身も創作意欲が湧いている。現在はシナリオを書いており、まずは1本撮りたい」と今後を楽しみにしたい。
映画『恋愛準々決勝戦』は、大阪・十三のシアターセブンで6月18日(土)と6月19日(日)に公開。両日共に小濱匠監督とプロデューサーのアンドリュー・シンさんを迎え舞台挨拶を開催予定。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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