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深みがあり底が見えない感じの目をしていた阿部さんを再び引き出せた…『死刑にいたる病』阿部サダヲさんと白石和彌監督を迎え舞台挨拶開催!

2022年4月15日

連続殺人で世間を震撼させた犯人から、ひとつの冤罪証明を依頼された大学生が、真相を解明するために奔走する姿を描く『死刑にいたる病』が5月6日(金)より全国の劇場で公開。4月15日(金)には、大阪・梅田の梅田ブルク7に阿部サダヲさんと白石和彌監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『死刑にいたる病』は、『凶悪』『孤狼の血』の白石和彌監督が、櫛木理宇さんの小説『死刑にいたる病』を映画化したサイコサスペンス。鬱屈した日々を送る大学生である雅也のもとに、世間を震撼させた連続殺人事件の犯人である榛村から1通の手紙が届く。24件の殺人容疑で逮捕され死刑判決を受けた榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよく店を訪れていた。手紙の中で、榛村は自身の罪を認めたものの、最後の事件は冤罪だと訴え、犯人が他にいることを証明してほしいと雅也に依頼する。独自に事件を調べ始めた雅也は、想像を超えるほどに残酷な真相にたどり着く。『彼女がその名を知らない鳥たち』の阿部サダヲさんと『望み』の岡田健史さんが主演を務め、岩田剛典さん、中山美穂さんが共演。『そこのみにて光輝く』の高田亮さんが脚本を手がけた。

 

今回、上映前に阿部サダヲさんと白石和彌監督が登壇。互いに経緯を以て話す和やかな舞台挨拶となった。

 

公開1ヶ月を切り、阿部さんは「もう1ヶ月ないんだ…」と我に返りながらも「早く皆さんに観て頂きたいし、感想を凄く聞きたい映画ですね。あまりこういう役をやったことがないので、是非観て頂いて感想を聞きたい」と期待。白石監督も「出来るだけ多くの方に観て頂きたいですし。観た後にどんな感じになるのか」と楽しみにしている。今やSNSでは映画の感想が多く語られているが、阿部さんは「いや、あまり…」と打ち明け「褒めて頂いている意見は見ます」と告白。今作については「どうなんだろうなぁ」と思っており「東京での完成披露試写会でウチの娘が観たんですけど。車で迎えに行ったら、『乗りたくない』って云って…そうなんだぁ。怖かったんですかねぇ」と心配ぎみ。白石監督の場合は「良い意見も指摘する意見も次の作品を作っていく力の源になっていくので。出来るだけ、見たりスタッフから送ってもらったり」と、いつも大切にしている。

 

久しぶりの来阪となった今回。大阪は、二人にとっては『彼女がその名を知らない鳥たち』を共に撮影した場所でもある思い出の地。白石監督は「楽しい思い出しかないような印象がありますね」と話す。阿部さんは大阪弁に苦労したが「僕の勝手なイメージですが、発想が自由な感じがしますね。普通がなく、自分でやりたいことをやる感じがしますね。だから沢山喋るんでしょうね。僕は普段はそんなに喋らないので。ずっと喋って頂けるので、楽ですね」と親しんでいる。なお、関西に来る度にカレーを食しており「カレーが進んでいるんですよ、関西は。スパイスカレーも関西ですよね」とお気に入り。今回は、出汁をかけて食べるカレーを堪能した。

 

連続殺人犯である榛村という役について、阿部さんは、白石監督からのオファーであることで即決。原作を読んだ時には「こういう役が自分に来るとは思っていなかった」と驚いた。白石監督から「清潔感を出す」という要望を受け「歯を白く、ホワイトコートを施しました。『彼女がその名を知らない鳥たち』の時は、歯を汚してたんです、汚く見せるために。今回は、清潔感で歯を白くしよう」と役作り。白石監督は「元々、阿部さんは清潔感のある方」だと思っているが「よりシュッとさせたいな」と考え「そこで特殊メイクチームで型取りして白く塗ったのを付けたけど全部ダメで。マニキュアみたい出来ると聞いて行ったら、ビックリするぐらい白くなって」と驚くほどの変貌を見せた。

 

二面性がテーマでもある本作。白石監督は、阿部さんについて「いつも、そんなに構えずスッと役の中に入って下さる」という印象があるが「今回、流石に普段はやらない役であり、割と様々な作品を観てもらった。阿部さんでも役を自分の中に取り入れる時に苦労されることがあるんだな」と感心。自身の作品である『凶悪』も観てくれたことを喜んでいる。阿部さんは、シリアルキラーが登場する『テッド・バンディ』や『ハンニバル』も観てみたが「英語なので、分からないですよね。吹替版を観ても、良い声の人が言っているだけなので、参考にはならないですね」と嘆きながらも「表情は研究したかもしれないですね。24人連続殺人犯の気持ちは未だに分からないですよね。分かっちゃいけないですよ」と冷静に話す。白石監督について、阿部さんは「『凶悪』や『孤狼の血』を撮っている凄く怖い監督だ」と当初は思っていたが「本当に優しくて、ずっと平坦でいますよね。声を荒げたところとか見たことないですし。ずっと笑顔で温かい現場なので、居心地が良いギャップなんですよね。スタッフさんにも凄く優しい」と印象が変わった。撮影現場は食事に行けない現場であったため「控室に生ビールサーバーを置いてくれた。スタッフさんに飲んでもらうようにしていた。本当に優しい監督ですよね」と感心しきり。白石監督は「ありがとうございます」と恐縮しながらも「生ビールサーバーを入れたんですけど。ある日、同じところに辛ラーメンが箱で届いて。誰から送られて来たのか、名前が書いていないんですよ。『食っちゃヤバいヤツなんじゃないの』と噂になって。2週間ぐらいほったらかしにしていた。『阿部さん、実はね、こういうのが送られて来たんですよ』『あ、それ、僕』って。阿部さんも優しかった」とエピソードを披露。阿部さんは「云わなきゃ誰も開けないんですね。そうですよね。辛いものが監督も好きだって」と弁明しながらも、白石監督は「好きって話していたんですけど、ピンとこなかったんですよ」と正直に話す。2人の様子から、和気藹々とした撮影現場であることが伝わっており、阿部さんは「有り難いですよね、役者として」と感謝している。阿部さんは連続殺人犯を演じたが「役は引きずらないですね。切らないと、やっぱり。引きずったら大変じゃないですか。連続殺人犯を引きずるのは、なかなか出来ないですからね。僕は切り替えようとは思っていない。現場で私服に着替えたら、もう終わり」と冷静だ。

 

作中では、阿部さんは、岡田健史さん以外とは長時間かけて一緒に演じておらず「(他の役者さんとは)すれ違いが多かったので。中山美穂さんは昔から観ていた人だ、心では『ミポリン』とは呼んでいましたけど、凄いですね。話しかけて良いのか分からなかった。プライベートな話はしていなかった」と打ち明ける。キャスティングにあたり、白石監督は「良い人生を送っているんだろうな、という方に出てもらう」という方針があった。「その方が役の幅に深みが出る。阿部さんもそうですし、皆さんもそうですけど、それがベースの上で、本人とはまた違うイメージの役をやって頂いた方が良い」と考えており「俳優さんは『なんで僕なんだろう』という引っかかりがあった方が、粋に感じてくれるような気がしているので、なるべく、その新鮮さをちゃんと感じてもらえるようなことをいつも気にしてやっています」と説く。阿部さんのキャスティングについては「『彼女がその名を知らない鳥たち』で、電車の中から男の子を突き落として蒼井優さんが演じる十和子を見た目が、深みがある底が見えない感じの目をしていた。それが僕にずっとこべりついていて、時々思い出していた。あの目は何だったんだろう、と。阿部さんと偶にご飯を食べて帰った後もあの目が蘇ってくることがずっと続いていた」と印象に残っており「今回、映画を作るにあたって、榛村大和はあの目だよな、と思って阿部さんにお願いした。それがふんだんに出ている。阿部さんに、あの目をしてください、とは一切話していないですけど、多分この役で、あの場に立った時は、阿部さんは自動的にあの目をして下さった」と、物凄い快感を覚えていた。これを受け、阿部さんは「嬉しいですよね。覚えて下さっているというのは」と喜んでいる。また、岩田剛典さんについて、阿部さんは「今回の映画では、皆さんがご覧になったことないような感じだと思います」と話しながらも「岩田さんも僕を見上げて、死んだような目をされている、と。意識していなかったんですけど、そんな風に見えるんだ」と認識させられた。

 

最後に、白石監督は「ようやく皆さんに観て頂ける機会を作れて本当に感無量です」感慨深く「コロナ禍で撮影が1年延びたんですけど、1年延びたことも僕達は糧にして、これだけおもしろい映画が出来たと思います。けっこうキツい描写もあるとは思うんですけど、映画の中に様々なメッセージを込めていますので」と思いを伝えていく。阿部さんは「上映後に皆さんの顔を見たい映画なんです。何回観ても様々なところに仕込まれているものが沢山あります。観終わった後に誰かと喋りたくなると思うんですよね。映画の感想や、これから自分はどうしたらいいか、友達や家族と感想を言い合ったり」と話しながら「僕は岡田健史君に、働いてくれて、ありがとう、と言いたかった」と添えて、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『死刑にいたる病』は、5月6日(金)より全国の劇場で公開。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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