1969年の北アイルランド暴動を背景に、成長していく少年と家族の愛と絆が描かれる『ベルファスト』がいよいよ劇場公開!
(C)2021 Focus Features, LLC.
9歳の少年の目を通して、愛と笑顔に満ちた日常と、時代に翻弄され変貌していく北アイルランド・ベルファストの街を克明に描く『ベルファスト』が3月25日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ベルファスト』は、北アイルランドのベルファストを舞台に、激動の時代に翻弄されるベルファストの様子や、困難の中で大人になっていく少年の成長などを、力強いモノクロの映像でつづった。ベルファストで生まれ育った9歳の少年バディは、家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごしていた。笑顔と愛に包まれた日常はバディにとって完璧な世界だった。しかし、1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民への攻撃を始め、穏やかだったバディの世界は突如として悪夢へと変わってしまう。住民すべてが顔なじみで、ひとつの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断され、暴力と隣り合わせの日々の中で、バディと家族たちも故郷を離れるか否かの決断を迫られる。
本作は、俳優・監督・舞台演出家として世界的に活躍するケネス・ブラナーが、自身の幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品。アカデミー賞の前哨戦として名高い第46回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞。第94回アカデミー賞でも作品賞、監督賞ほか計7部門にノミネートされた。
(C)2021 Focus Features, LLC.
映画『ベルファスト』は、3月25日(金)より全国の劇場で公開。
プロテスタントとカトリックが反目したことをきっかけに始まった、いわゆる北アイルランド紛争。この戦いを契機にした、その後の物語を描いた作品はこれまで幾つもあった。本作は、紛争の起こりを一つの家族の視点を以て描いていく。ケネス・ブラナーの幼少期をモデルにした主人公のバディ、9歳。家族に見守られながら、愛と笑顔に満ちた日常を過ごしていたある日、突如として、目の前で紛争が始まった。あくまで少年バディの視点によって描かれており、何が何だか分からない中で戦いが始まったことは恐怖にしか感じられない。カトリックを信仰する家族であるため、決して攻撃は受けないだろうと思っていても、いつ飛び火を受けるかもしれない恐ろしさをバディと共に感じてしまった。バディの家族はプロテスタントだが、あくまで博愛主義に満ちている。武装集団となったプロテスタントにとっては、味方を多く必要としており、どのような主義主張がある者であろうと、プロテスタントなら率いたい。されど、味方にならないのであれば敵でしかなく、プロテスタントであろうと容赦しなかった。博愛的でありながら、住んでいる世界の中で分断されようとする厳しさには余りにも憤りを感じてしまう。そして、武装集団が抱えている本質的な部分に気づかされた時、如何に愚かなものであるか、と気づかされた。
なお、物語は、決して暗いだけのストーリーではない。戦争の始まりから描かれても、不安な空気がある中でのベルファストでの日常を丁寧に描いていく。バディが通う小学校では、テストで高得点を獲得して憧れの女の子と席を並べようとしていた。バディがおじいちゃんやおばあちゃんと行うコミュニケーションの中には人生の真理すらも描かれている。1969年の日常をモノクロ映像で描いているが、家族揃ってお出かけした先で観たものは鮮やかなカラー表現が用いられていた。非日常空間を楽しんでいることが十分に伝わってくる。戦争とは関係ない悲しい出来事も描かれるが、その先には明るい未来の兆しがあるかの如く、素敵な宴も披露されていく。予告編にも盛り込まれている楽曲「Everlasting Love」を体感すると、如何に本作が愛に満ちた作品であるか実感することが出来た。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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