第17回大阪アジアン映画祭開幕!オープニング作品『柳川』が日本初上映!
優れたアジア映画の新作を毎年いち早く鑑賞できる大阪アジアン映画祭が3月10日(木)より開幕!今年度で17回目を迎え、「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに、より豊かで質の高いアジア映画が上映される。オープニング作品として、中国・日本・韓国合作の『柳川』が日本初上映された。
映画『柳川』…
中年になり自分が不治の病であることを知ったドンは、長年疎遠になっていた兄のチュンを柳川への旅に誘う。柳川は北京語で「リウチュアン」と読み、2人が青春時代に愛した女性「柳川(リウ・チュアン)」と同じだった。20年ほど前、チュンの恋人だったチュアンは、ある日突然、姿を消してしまったが、今は柳川で暮らしているという。誰にも理由を告げずに消えた彼女の存在は、兄弟の中で解けない謎になっていた。2人は、柳川でついにチュアンと再会する。
本作は、『キムチを売る女』』『慶州 ヒョンとユニ』『春の夢』等で知られるチャン・リュルが監督が、11年ぶりに撮った中国語映画。2021年の平遥国際映画祭開幕作品と釜山国際映画祭でワールドプレミア上映された。中国人キャストにはチャン・イーモウ監督の『金陵十三釵』(2011)でデビューを果たし、今や中華圏で絶大な人気を誇るニー・ニー。『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』でも共演している実力派俳優のシン・バイチンとチャン・ルーイーが、かつてふたりが愛した恋人を探しに柳川へ旅をする兄弟を演じている。また、日本からは、池松壮亮さんや中野良子さんもキャストに名を連ねた。
映画『柳川』は、3月15日(火)11:45よりシネ・リーブル梅田でも上映。なお、2022年秋に劇場公開予定。
末期癌を患い、自暴自棄になりかねない中で、長年疎遠になっていた兄と共に福岡県柳川市に向かう主人公のドン。今後、本当に会えなくなるかもしれない兄だからこそ、不治の病をふせてでも旅行に誘う気持ちは、どことなく共感できる。さらに、2人が共に思いを寄せていた女性が住んでいるであろう場所に向かうのなら、旅に出ない理由はない。向かった先は、”日本のヴェニス”と呼ばれる柳川。柳川を選んだ監督の手腕に拍手を送りたい。中国人2人が柳川下りをしながら他愛もない会話をするシーンは、なんとも趣深かった。
そして、迎える日本人キャスト。2人が泊まる宿の主には、池松壮亮さん。落ち着いた振る舞いをしながらも、気掛かりな問題を抱えつつ、お酒に身を委ねてしまう時もある、どこか憎めないキャラクターがしっくりとくる演技をしていた。そして、小料理屋さんの女将を演じたのが、中野良子さん。ベテラン女優さんならではの落ち着いた演技を見せられると、本当に柳川にいそうな気さえさせられた。2人の自然な佇まいによって、日本にいながら不自然なく存在する中国人の姿が自然と受け入れられる。兄弟2人が思いを馳せた恋にまつわる謎をじんわりと追い求めながらも、彼女の歌やダンスによって緩やかながらもエモーショナルに仕上げられた作品であった。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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