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好きな作品だけでなく、視野を広げて新しい世界を開いてほしい…『ホテルアイリス』奥原浩志監督に聞く!

2022年3月3日

母が営む海辺のさびれたホテルを手伝う娘が、孤島に住む乱暴な振る舞いの男にひかれていく様を描きだす『ホテルアイリス』が関西の劇場でも3月4日(金)から公開。今回、奥原浩志監督にインタビューを行った。

 

映画『ホテルアイリス』は、芥川賞作家である小川洋子さんの小説「ホテル・アイリス」を映画化した日本・台湾合作による恋愛ドラマ。海沿いの寂れたリゾート地。日本人の母親が経営するホテル・アイリスを手伝っているマリは、ある嵐の夜、階上に響き渡る女の悲鳴を聞く。男から罵声と暴力を浴びせられ取り乱す女の姿に衝撃を受けるマリだったが、その一方で、自分が男の振る舞いに激しくひかれていることに気づく。男はロシア文学の翻訳家で、小舟で渡った孤島でひとり暮らしているという。住人たちは、男が過去に起きた殺人事件の真犯人ではないかと噂する。一方のマリもまた、台湾人の父親が事故死した過去を持ち、心に深い闇を抱えていた。2人はいつしか愛と死の香りに満ちた禁断の世界へとのめり込んでいく。
男を永瀬正敏さん、マリを台湾の新星・陸夏(ルシア)が演じ、『郊遊 ピクニック』のリー・カンション、『』の菜葉菜さん、『』の寛 一 郎さんが共演。監督・脚本は『青い車』『黒四角』の奥原浩志監督が務めた。

 

小川洋子さんの小説について「自分が撮りたい映画との相性が良いのかな」と気づき、本作を選んだ奥原浩志監督。今回はプロデューサーも兼任しており「矛盾する存在なので。現場でのコストを意識すると人格が分裂したような感覚になりながら撮っていました」と振り返る。

 

ロケ地となった台湾の金門島は、中国の厦門(アモイ)の近くにある島で、以前から訪れたい場所だった。ロケハンを兼ねて訪れ、本作でホテル・アイリスとなる民宿に泊まり「絶対にココで撮りたい」と切望。古き良き時代の雰囲気が多く残っている台湾だが「金門島は、高層ビルがないので、撮影しやすい。昔の雰囲気がある街は他にもあるけど、どうしてもビルが映ってしまう。或いは人が多すぎてしまう」と受けとめ「あのホテルがあることが重要」だと考え、本作の舞台にした。

 

キャスティングにあたり、マリ役については、オーディションで沢山の方に会い「陸夏が一番良かった」と選んでいる。日本人俳優は、日本側のプロデューサーに依頼しており、永瀬正敏さんについては「一度お会いして脚本を読んでもらって、話をして参加して頂けることになった」と話す。菜葉菜さんは、本人とは全然違うタイプの役だが「衣装を合わせながら、2人で楽しんで役を作り込んでいった」と明かす。寛一郎さんは、しっかりと役の準備をして現場に入っており「特に注文を加えることがなかった。『』で初めて観た時は初々しさを感じたけれど、現場で会うと落ち着き払った大人の俳優になっていた」と太鼓判を押す。

 

撮影にあたり、金門島は離島であるため、台北から必要なものを運んでいった。人件費もかかり想定以上に予算が必要だったが「撮影自体はストレスがなく、順調に撮れました」と満足している。完成した作品については、未だに不安が募ることが多いが「公開できるまでの道のりが重要。まだまだこれからです」と正直に話す。

 

完成後、昨年の大阪アジアン映画祭や台湾の高雄映画祭の招待作品として上映され、気に入った方からの反応を聞いているが「アート映画に対する反応として冷静に見ている」と真摯に受けとめていた。現在の芸術・文化に対して「映画だけに限らず、自分の好きなものを大事にしようとする傾向があるので、そういう人達にも観て好きになってくれたら。分からないからといって切り捨てずに、頑張って観てみると、より広い世界が開けるので、チャレンジしてほしいな」と期待しており、今後は「広い世界観のある作品を撮りたい」と語っている。

 

映画『ホテルアイリス』は、3月4日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋、京都・烏丸の京都シネマ、3月18日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

湿った空気が満ちる冷たい鈍色の空の下、浜辺にひとり佇む少女。引き潮の後でまだ濡れている石畳の道が、遠くに見える小さな島へと続いている。寂寥感が漂う風景の中の主人公マリの姿は美しく刹那的で、死の雰囲気も感じさせる。舞台となる土地では国籍不詳の住民たちが入り混じり、会話も主に日本語と中国語が混合して話されていく。原作とは異なる設定だが、もともと浮世離れした異世界のような世界観の作品であり、匿名(恐らく架空)の場所「F島」での物語なので、幻想的な景色やどこか現実的でない会話劇は、小説のイメージそのものだ。映像化にあたって、原作からの違いを云えば、K島への移動手段は大型の遊覧船ではなく、潮が引いている間は徒歩でも歩いて行けて、満潮時は小型の渡し舟に乗って移動する、という地形の設定の改変には驚いた。(ちなみに、原作ではマリが翻訳家に手を振るのは遊覧船発着場の桟橋からである)

 

キャスティングもよくマッチしており、マリ役の陸夏(ルシア)は中国語と片言の日本語とを話し、普通の日本語を話す他の主要人物たちから少し浮いている。このぎこちなさが、現実にはいない少女かもしれない、という不思議な存在感を持たせていた。そして、台湾でもよく言われているそうだが、本当に小松奈々に容貌が似ている。ストーリーの展開上、マリが裸になる場面が何度かあるのだが、俳優の裸体が不必要に映らないようにしている演出とカメラワークは上品だな、と好感を持った。

 

原作では、翻訳家を文中で「老人」と何度も形容され、10代後半の主人公と「50歳近く年の離れた」とあるので、60代半ばだと思われるが、その役を現在55歳の永瀬正敏さんが演じるので、原作ほどの老いた男性というイメージはない。本作を観ている間だけはその存在を信じさせるための美化として、プラスに作用している。小川洋子さんの小説を先に読んだ際、あまりに唐突であっけない幕切れに、「えっ…」と小さく声が出た。原作でも多くは語られないが、経緯の説明が映画では簡潔に省力されている。また、映画ではただ「交通事故」とだけセリフで述べられる、ある人物の死の経緯については、とてもショッキングな事故であり、翻訳家とその甥の行動原理に関する根幹となるので、気になった方は小説も併せて読んでみることをお薦めしたい。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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