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制限されることによって新たな映画の表現が生まれてくる…!上田慎一郎監督、皆川暢二さん、竹原芳子さんを迎え『ポプラン』公開記念スペシャルトークライブ開催!

2022年1月11日

“家出したイチモツを捕まえろ”というテーマを基に、奇妙でシュールな世界観を持つ、唯一無二のエンタテインメントを描く『ポプラン』が1月14日(金)より全国の劇場で公開。1月11日(火)には、大阪・難波のLoft PlusOne WESTに上田慎一郎監督、皆川暢二さん、竹原芳子(どんぐり)さんを迎え、『ポプラン』公開記念スペシャルトークライブが開催された。

 

映画『ポプラン』は、2018年に『カメラを止めるな!』で映画界に旋風を巻き起こした上田慎一郎監督のオリジナル作品で、ある日突然どこかへいってしまった自分のイチモツを捜す男の姿を、奇妙でシュールな世界観とともに描いた。ある時、東京の上空を高速で横切る黒い影が目撃され、ワイドショーなどは「東京上空に未確認生物か」と騒ぎ立てる。一方、漫画配信で成功を収めた経営者の田上は、自分のイチモツがなくなっていることに驚く。自身のイチモツを捜す田上は、やがて同じようにイチモツを失った人々が集まる「ポプランの会」なる集会にたどり着く。

 

TwitterのDMで皆川さんにオファーした上田監督。最初は、やんわりと作品の内容を話し「脚本について話すと、断られてしまうかもしれない」と恐れ、慎重に。本作の企画自体は以前から存在しており、何度か提案したことはあったが「本格的な動きになることはなかったですね。面白がられるだけ」と日の目を見ることはなかった。今回、主役を演じて頂くにあたり「『カメラを止めるな!』も『スペシャルアクターズ』も、撮影前にキャストとしっかりコミュニケーションをとってから撮影するスタイルなので、撮影前からガッツリと肩を組んで映画に取り組んでくれる人。そして、『カメラを止めるな!』が公開された翌年が『メランコリック』が公開されたが、キャラクターを演じる上で成功の味とその後に訪れる壁の厚さを両方知っている人に演じてほしい」と皆川さんにオファーしている。

 

以前に読んだ本から「映画は何もかも許されている」という言葉が頭の片隅にいつもある上田監督は「不謹慎なことも映画の中で表現として成立していればアリ。何もかも表現として許されているけれども、滅茶苦茶していいわけではない。制限されることによって新たな表現が生まれてくる。自由は制限の中にしかない」と説く。皆川さんも「制限は重要だ」と思っており「『メランコリック』を作った時、金銭面では制限があった。お金がない中でどうするか、頭を振り絞る。制限の中から生まれるもの。自由は、永遠の問いですよね」と共感。上田監督も「制限がなければ、自由が何か分からない。制限があるから自由がある」と重ねていく。

 

独特な世界観がある本作。「ストーリーの着想となったものは特にない」と上田監督は話しており「この映画を制作してから、これが発想元ですか?と沢山云われる。オナニーマシーンの『家出』の歌詞は全然知らなかった。男が考える恐怖からアイデアに辿り着くことがあるのかな。カフカの『変身』は読んでいました」と述べる。だが「10年前、スカイフィッシュが流行りましたよね。高速で飛ぶ未確認生物が好きだったんですよ。バラエティー番組で取り上げられ、噓くさいなと思いながら、ワクワクしながら観ていたのが影響あるかもな。あのスカイフィッシュはもしかしてイチモツなんじゃないか、という妄想があったのかもしれない」と振り返った。皆川さんは「理解できないですね」と言いながらも「ここが上田監督のオリジナリティなんだな」と感心せざるを得ない。

 

上田監督の作品を観た皆川さんは「大人数を使った群像劇を映像で1つのシーンで大勢の人数が出るのは、演出面でも難しい。画として成立させるのも難しい。纏め上げて作品としておもしろく昇華させることが凄いな。コミュニケーションをマメにとって意思疎通をちゃんととってやらないと、手を抜く人がいる。作品を作りながら、人間力が高い人だ」と評する。上田監督は、今作について「『カメラを止めるな!』と『スペシャルアクターズ』で出来なかったことをやりましたね。共に群像劇であり作戦モノ。チーム作戦モノである」と述べ、今までとの違いを説明。さらに「上品に見せることは無茶苦茶意識していました。このあらすじでライトなコメディのテイストだったら、よくあるものになってしまう」と意識している。監督自身は、ジェームス・ガンやタランティーノ、エドガー・ライトといった監督の作品に影響を受けており「トロマ(・エンターテインメント)の血が間接的に僕に入っているんじゃないかな。『アタック・オブ・ザ・キラートマト』は突き抜け過ぎて大好きで、作る前に『アタック・オブ・ザ・キラートマト』×『2001年 宇宙の旅』みたいな映画を作りたいんだ、と言っていたことは覚えています。『マルコビッチの穴』や『ロブスター』、ヘンテコな設定なんだけど、重い演出で作っている映画が好きで影響が大きい」と明かす。

 

 

お客様からの質問も受け、タイトルについて聞かれると、上田監督は「僕はシンプルなものが多いですよね。最初は(仮)にしているんですけど、最終的にそのままで(仮)が取れることが多いです。『ポプラン』も10年前の最初から『ポプラン』でした。『カメラを止めるな!』は商業映画なら絶対に止められるタイトルだと思います」と応えた。これから挑戦してみたい役について聞かれ、皆川さんは「猟奇殺人鬼。猟奇的な役をやってみたいですね。『ダークナイト』のジョーカーや『レオン』のゲイリー・オールドマン。自分が持っている円から外れた役をチャレンジしてみたい」と目を輝かせる。上田監督も「僕も作家性というキャラがある。知っているキャラでのオファーが多いですね。僕は、どんでん返しを求められる。自分でも新しいキャラを作っていかないといけない」と認識していた。今作には皆川さんが全裸になるシーンがあり「元々、日常的に鍛えていた。撮影1ヶ月前ぐらいから、パーソナルトレーナーに通い、役柄的に精通しそうな雰囲気を出した」と役作りしており「『ゴーン・ガール』のベン・アフレック。どうしようもない奴だけど憎めない。ビジネスが成功した人間だけど、人間的な弱さがあり、他人が共感できる。嫌な奴ではなく、人間的な部分が必要」とキャラクターを作り上げていった。

 

スペシャルトークライブは休憩をはさみ、第二部からは、竹原さんが緊急参戦という形で登場。「楽しみにしてきましたぁ〜!」と威勢よく現れた。上田監督は「頻繁ではないですが、わりと頻繁に連絡をとっている。突然電話をかけてくる」と明かすと、竹原さんは「思いついたら電話する」と反応。さらに、上田監督は「季節の贈り物をしっかりしてくれる。突然の場合もある」と心遣いがある一面を紹介すると、竹原さんは「監督といると安心し過ぎてベラベラ喋ってしまうんです」と漏らした。

 

ここで、『カメラを止めるな!』と『メランコリック』のコラボレーションによる『ポプラン』特別映像を会場限定で上映。上田監督は「去年12月中旬に撮影して大急ぎで仕上げました」と振り返り、皆川さんは「ワクワクしましたね。12月初頭、監督から、なにかやりたいね、と提案してくれた。作る、と言ってからのフットワークの早さ凄かった。『カメラを止めるな!』の濱津さんやしゅはまさん、そして竹原さん。こういうコラボが日本ではあまりないので、単純に楽しく、両作品を観た方が楽しんでくれたらいいな」と純粋に願っている。上田監督は「僕が観たくて撮った。両作品のファンの方に『ポプラン』を知ってもらうため。僕がこの2作品のキャラクターが同じ世界線にいて会話しているのは、映画ファンとして盛り上がる。それが無かったから作る。観たいものを作るのが基本なので。凄く楽しかったですね」と喜んでおり「『メランコリック』の田中監督に脚本監修に入って頂いて、一緒に作りました。撮影は半日で。4分という短い中で出来るだけ密度の濃いものを」と思い、作り込んだ。

 

『ポプラン』について、竹原さんは「最初にポスターを見て『え、え』と思い、動揺を隠せず。予告編を見て「私、応援するけど、見ないかもしれない、タイプが違うな」と告白。だが、作品を見せてもらい「おもしろかったんですよ、ハッキリ言います」と断言。「まず、クスッと笑えた。そして、予想だにせず2シーンで泣いた、深い。撮影現場が上田監督らしく、エンドクレジットでは、キャストやスタッフに知っている方の名前を見て、懐かしくて嬉しくなる」と絶賛した。

 

初めて竹原さんを見た皆川さんは「表でも裏でも、このまんま。こんなにバイタリティある人はいない。いるだけで周りを和まし元気をもらえて、嬉しいです」と感激。バイタリティを保つ秘訣について聞いてみた。竹原さんは「55歳で役者を目指して習いにいった。56歳で卒業して、『カメラを止めるな!』が初めての映画。それまでは、NSCで間寛平さんの下で、蛾の役しかやったことがなかった」と振り返り「秘訣は、ものごとを考えない。いつも能天気で生きている。些細なことや奇跡をノートに書いている。OLをしていたことは何もしていなかった」と明かす。

 

上田監督について、竹原さんは「人を大事にしてくれる。ワークショップで、最初に台本が出来上がった時に『皆のこれからに繋がるように名刺代わりになるように作りました』と聞いて、なんて凄い人なんだろう、と思った。人に対して優しく、思いやりがある」と尊敬している。上田監督は、竹原さんについて「20代の出演者と年齢差を感じさせないコミュニケーションをとっていた。歳上に感じない。人を緊張させない力がある」と分析していた。2人のやり取りを眺めながら、皆川さんは、改めて本作について「台本を見た時点と異なる要素が沢山入って完成した作品を観て、違う見え方がする部分がある。最初は不思議な感覚に陥り、回数を重ねて観ると、印象が毎回変わってくる。これからも変わる」と確信している。

 

最後に、竹原さんは「楽しい時間を過ごさせて頂きました」と急な参加に大いに喜んでいた。皆川さんは「『今日はスペシャルなトークが出来る』と言いましたが、他では話さないスペシャルな話が出来たのかな、と。『ポプラン』を多くの人に観て頂きたい」と願っている。上田監督は「皆さんのおかげで無茶苦茶楽しかったです。一見すると軽いコメディかなと思う方もいるかもしれませんが、魂込めて作った映画になっております。観終わった後には色々と語ってほしい映画になっていますので、語り合うところまで含めて楽しんでもらいたいな」と伝え、終始笑いの絶えないスペシャルトークライブが締め括られた。

 

映画『ポプラン』は、1月14日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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