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僕の人生においてピアノは切っても切れない存在、一緒に乗り越えてこられた…『ミュジコフィリア』井之脇海さん、松本穂香さん、山崎育三郎さん、谷口正晃監督を迎え舞台挨拶開催!

2021年9月30日

類稀な音楽の才能を持ちながら、父や兄の活躍の陰に隠れ音楽へコンプレックス抱く主人公を描く『ミュジコフィリア』が11月12日(金)より京都先行公開、11月19日(金)より全国の劇場でも公開。9月30日(木)には、京都・二条のTOHOシネマズ二条で完成披露京都プレミア試写会が開催され、井之脇海さん、松本穂香さん、山崎育三郎さん、谷口正晃監督を迎え舞台挨拶が行われた。

 

映画『ミュジコフィリア』は、『神童』『マエストロ!』のさそうあきらさんによる音楽マンガを、井之脇海さん、松本穂香さん、山崎育三郎さんの共演で実写映画化。音楽へのコンプレックスを持ちながら、京都の芸術大学に入学した漆原朔は、ひょんなことから現代音楽研究会にひき込まれる。しかし、そこには朔が音楽を遠ざけるきっかけとなった異母兄の貴志野大成と、朔が憧れる大成の彼女・小夜がいた。天才作曲家として注目される存在である大成、そんな大成を一途に愛する小夜との間で朔は苦悩する。子どもの頃からモノの形や色が音として頭の中で鳴っていた朔。その能力が現代音楽を通して表現できることを知る。そして朔と同じように自然の音を理解する女性、浪花凪が彼の前に現れ、朔は秘めたその才能を開花させようとしていた。朔役を映画初主演となる井之脇さん、凪役を松本さん、大成役を山崎さんがそれぞれ演じる。

 

上映前に、京都市立芸術大学有志による、ヴィヴァルディの「協奏曲第1番ホ長調 RV 269「春」とヨハン・パッヘルベルの「カノン」が披露され厳かな雰囲気の中で、井之脇さん、松本さん、山崎さん、谷口正晃監督が登壇。井之脇さんは「初めて一般のお客さんに観て頂く機会なので、どう受け取っていただけるのか」と楽しみにしており、松本さんは「思っていた以上の方を目の前にしてドキドキしています」と緊張ぎみ。山崎さんは「みなさんが楽しかったと思って帰って頂けるように沢山盛り上げていきたい」と意気込み、谷口監督は「感無量です。この映画は京都で撮影したんですが、京都の沢山の方に支えて頂いて、ようやく完成した作品」と感謝の気持ちで一杯だ。

 

京都での撮影となった本作。井之脇さんは「京都の街には撮影で何度か足を運んでいました」と明かし、今作では1ヶ月近く長期滞在し「京都の街を堪能させて頂きました。どのロケ地も全て歴史的な流れや自然の中にも時間を深く感じられる街だなぁ」と堪能。特に、凪と2人で鴨川の中洲で演奏と歌を披露するシーンの撮影を挙げ「こんな景色を見れているのは僕と松本さんしかいないんだな」と嬉しくなり「京都の街と一緒に景色を存分に味わいながら撮影することが出来ました」と京都の街へ感謝の気持ちを伝える。大阪出身の松本さんは、以前から京都に遊びに来ていたが、観光地ばかり行っていたこともあり「今回、初めて鴨川や大文字山など京都の新しい面を撮影を通して見ることが出来て幸せでした。鴨川の中で様々に感じながら演じられ、良い経験をさせてもらいました」と感慨深い。山崎さんは、役柄的に様々な場所に伺えておらず「大成君はタクトを振ることが多く、ホールや学校内での撮影が多かった」と嘆きながらも「泉涌寺の前にオーケストラの皆さんがいて、僕がタクトを振るシーンがあります。泉涌寺を観ながらオーケストラのみなさんがいる中で大きな演奏を聞という最高の体験でした」と印象に残っている。京都出身の谷口監督は「生まれ育った場所なので、観光映画にはしたくなかった」と思いがあり「今回描くのは音楽を志すアーティスト達が音楽を奏でたりぶつかってエネルギーをスパークさせるような場面。魅力ある場所で演技や演奏シーンを撮りたい」と願っていた。「鴨川や大文字山の頂上、泉涌寺や無鄰菴といった素敵な庭園、素晴らしい場所で撮れたことで映画の力が増し、スパークをより掻き立てるものになっている」と表し、撮影出来たことを感謝している。なお、泉涌寺と無鄰菴は映画としては初めてのロケとなり、貴重な機会となった。

 

今作が映画初主演となった井之脇さんは「細々と15,6年も役者をやらせてもらって、番手ではないですが、一つの形として主演を初めてさせて頂いて、素敵なキャストや監督と一緒に作品を作ることが出来た」と感無量であり「やはり、不安やプレッシャーがあったんですが、皆のおかげで撮り切ることができ、そして、初主演作がこのように初めて皆さんに届く瞬間に僕はいて本当に心から嬉しく思います」と話す。役者人生の中で、ピアノを弾く役が人生のターニングポイントとなっており、映画『トウキョウソナタ』への出演を挙げ「12歳だったので、習い事感覚でお仕事をしてしまっていたのが、プロの現場の厳しさや自分の出来なささや不甲斐なさを感じて、この仕事をもっと極めてみたい」と決意したことを振り返る。ピアノを弾く天才少年役として出演したが「小さい頃はピアノをやっていたんですけど、ピアノと離れていたんです。役のために練習し直して、ピアノと一緒に僕のターニングポイントとなるような大きな作品を乗り越えてきました」と述べ「いつか初主演をやることが来ると思っていたんですが、やはりここでもピアノというものが登場し、僕の人生においてピアノは切っても切れないものだな」と深い縁を感じた。撮影現場では主演としてのプレッシャーもあったが「ピアノが一緒だったから気持ちが楽になれた。ピアノと一緒に乗り越えてこられたかな」と安堵している。

 

天性の音楽的センスを持つ凪を演じた松本さんは「天性というより感覚で生きている女の子の役だった」と自身で説明しながら「歌を歌ったりギターを弾いたりと初挑戦のことが多く、周りの方に助けて頂きながら撮影中も井之脇さんと共有し合いながら、最後は楽しくやることが出来ました」と一安心。ダンスのような表現もあり「ピアノ科の変わった女の子で様々なことに巻き込まれつつ、表現をするのが好きな女の子です。おもしろいシーンだと思いながら楽しんで頂けたら」と期待している。天才作曲家の大成という役を演じた山崎さんは「僕とはキャラクターが違うんです。孤独を感じており、自分の中に様々なことを押し込めて生きているような人だった」と自身との違いを説く。昨年、朝ドラ『エール』が終わってすぐ本作の撮影に入っており「笑わないように頑張って演じたんです。おもしろかったですね、僕としては共感できない部分が彼自身には多いけど」と云いながらも「音楽家としての葛藤は、僕も音楽をやるので、共感する部分を見出していたので、感慨深いおもしろい役でした」と振り返る。また「大成君は自分の音楽に対してコンプレックスがあり、自分が考えている音楽以外の音楽を受け入れられなかったりしている。自分よがりで、自分だけの音楽が彼を苦しめたんじゃないかな」と思い「僕も音楽をやっています。オーケストラで指揮者の先生と呼吸を合わせ一緒に作り上げていくことが音楽をやる上では一番大事で素敵だなぁと思う。これを大成君は忘れているような気がしていた。それを見つけていく旅なんじゃないかな」と本作から感じていた。

 

印象に残っている好きなシーンとして、井之脇さんは、凪と2人で鴨川で演奏するシーンと共に、朔と大成が終盤にぶつかり合ってしまうシーンを挙げ「二人で演じながら、理屈じゃない部分で演技で繋がれたような気がしていて、熱量は育三郎さんと二人だからこそ作れたものかな」と話す。山崎さんも共感し「台本を読んだ時には『これどういうことだ』と正直思った。『どういう風に表現していこうかな』と思い、撮影の終盤で撮ったこともあり、積み重ねてきたものが二人で台本を超えるような瞬間があり、魂でぶつかり合いが出来たシーン」と印象深い。松本さんも同じ気持ちで「2人のシーンは見ていなかったので、台本を読むしかなかった。出来上がった作品を観てみて、こんな風になっていたんだ…と。大成さんの苦しみやプレッシャーがあるんだろうし、溢れ出ているので、誰が観ても共感できるところがあるだろうし、グッとくるシーン」だと印象に残っている。谷口監督は、皆が挙げたシーンには手応えを感じており「これで映画が形になる、核になる部分が撮れたな」と実感していた。原作の描写を大事にしながらも「何でもかんでも原作をなぞるわけではなく、漫画的表現を抑制し過ぎないほうが良いな」と思い「チャレンジだと思ってやってみたら、松本さんも井之脇君もポップに弾んだ感じが上手くいった」と納得している。

 

さそうあきらさんによる原作について、谷口監督は「様々な音楽が出てくる作品ですが、現代音楽に光が当てられている」とピックアップ。「現代音楽は聞いたことがあっても、そんなに詳しくない」と明かし「主人公達が現代音楽をやっており、現代音楽をやる人達の有り様がおもしろおかしく、拘りが強く、自分の美意識もある。人からどう思われようが、自分が良いものを探求する感覚は、京都の人ならではの感覚に通じ、古典的でありながら革新的なものも受け入れてしまう」と解説。「京都を舞台に現代音楽が描かれるのは、京都出身の僕から観てもストンと落ちるものがあり、おもしろいし良いな」と受けとめ「さそう先生の原作の凄さは、音楽をやる人達の表現だけでなく、その人の人生における人間の業や怖い部分や毒も含めて音楽を作り出していくエネルギーになっている。ポジティブな部分だけでなく怖いところも含めて生み出されていく。生き方と芸術は切り離せないものなんだ」理解し「映画でも描くと深いものが出来るだろうな」と確信できた。

 

最後に、谷口監督は、本作について「朔が本当は音楽が大好きで、音楽の申し子のはずが、とある原因で音楽と向き合おうとしてこなかった。だが、ひょんなことから現代音楽部に入ることになって、凪と出会ったり大成と出会ったりするなかで、混じったりぶつかったりする中で彼の閉じていた扉が開かれていく。いつか朔のように人と人が交わってぶつかって弾けるエネルギーが新しいものを生み出す力になるし人の人生が前に進んでいく」と説明し、現在の状況を鑑み「早くそういう日が取り戻せることを切に願っています」と思いを込めていく。山崎さんは「大成は人と交わらないことで苦しみます。音楽も人生を生きていくことも同じだと思っています。人と共有したり共感したり寄り添うことで温かい気持ちになれたり人に伝えられたりすることが作品の大きなテーマなんじゃないかなと思っています。一人で悩んだり殻に閉じこもったりしないで人と関わっていくというメッセージを感じて頂ければ」と伝えた。松本さんは「純粋に最後まで映画を楽しんで帰ってもらえたらいいな、という思いです」と感謝を伝え、井之脇さんは「朔という主人公を通して様々な人物と音楽を通してぶつかり合ったり関係を深めていったりする様子が丁寧に描かれています。音楽に対する喜びや才能について悩むキャラクターが沢山登場します。その姿はきっと共感して頂けるところもあります。悩んでいる方がいたら後押ししてくれるような映画になっているじゃないかな。と。僕にとって初主演で大切な作品なので、ぜひ多くの方に観て頂きたいと思っています」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『ミュジコフィリア』は、11月12日(金)より京都先行公開、11月19日(金)より全国の劇場でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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