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ネッド・ケリーを描き、オーストラリア人のアイデンティティを問う…『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ジャスティン・カーゼル監督に聞く!

2021年8月6日

19世紀のオーストラリアで権力と差別に立ち向かい、英雄として崇められているネッド・ケリーの真実に迫った人間ドラマ『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』が8月6日(金)より関西の劇場でも公開。今回、ジャスティン・カーゼル監督にインタビューを行った。

 

映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』は、『1917 命をかけた伝令』のジョージ・マッケイが19世紀のオーストラリアで権力と差別に立ち向った伝説の反逆者、ネッド・ケリーを演じたドラマ。貧しいアイルランド移民の家庭に育ったネッド・ケリーは、頼りにならない父に代わって母と6人の姉弟妹を支えてきた。父の死後、母は生活のために幼いネッドを山賊のハリー・パワーに売りとばし、ネッドはハリーの共犯者として10代で逮捕される。出所したネッドを横暴なオニール巡査部長、警官のフィッツパトリックらは、難癖をつけ、家族ともども投獄しようする。家族や仲間への理不尽な扱いに、ネッドは弟らや仲間たちとともに「ケリー・ギャング」として立ち上がる。ケリー役のマッケイのほか、ラッセル・クロウ、ニコラス・ホルト、チャーリー・ハナムが顔をそろえる。監督は「アサシン クリード」のジャスティン・カーゼル。

 

オーストラリア人ならば、ネッド・ケリーは誰もが知っている存在。だが、近年(15年程度)では、若者の中には知らない人もいるかもしれず「”ネッド・ケリー・パイ”や”ネッド・ケリー・クリーム”など、食べ物に彼の名前を用いて売っているお店がある。独り歩きして商業化されている一面もある」とジャスティン・カーゼル監督は説く。

 

『True History of the Kelly Gang』という原作小説をベースにした本作。冒頭には「この物語には真実は含まれてない」と表示される。「タイトルを皮肉った遊び心ですね」と笑いながらも「敢えてタイトルを否定している。そもそも、何が真実ですか」と問う。実在の人物を描いた作品では「このストーリーは事実に基づいている」と表示されることが多いが「描かれていることは証拠がある、と正当化している。それ自体が嘘だ」と監督は捉えている。ネッド・ケリー自身が「自分自身の歴史が盗まれる」と云っており「作家やジャーナリストが書く時点で、真実から離れている。ネッド・ケリーは盗まれていくであろう自分の歴史を、これから生まれゆく娘に残すために書くという行為が映画の中で行われる」と言及した。

 

とはいえ、本作の原作小説は素晴らしい、と感じており「ネッド・ケリーを描くことで、オーストラリア人のアイデンティティを問うことにつながる」と受けとめている。監督自身が原作小説を読んでいた頃、4~5年はオーストラリアを離れて外国で映画を撮っており「ホームシックになっていた私に訴えるものがあった。私自身が『オーストラリア人とは何者か』と問う時期と重なった。歴史的にネッド・ケリーは必須の人物。彼がどんな人物であるか、別の視点から再構築するという試みでもありました」と振り返った。なお、歴史の史実にとらわれず、原作小説から忠実に描いており「歴史的事実とは違っていても、ピーター・ケアリーが書いた原作小説は映画に反映している部分がある」と尊重している。独自の解釈として脚色している部分として、男性がドレスを着ていることを挙げ「脚本家のショーン・グラントと私が逸話に魅せられて加えました。原作小説では多くの記述はない。ネッド・ケリーの旅路を強調したかった」と明かす。

 

キャスティングでは、「ケリー・ギャング」の4人が最初に決定。そして母親役が決まり、チャプター毎に血塗られては去っていく独立したキャラクターについては「助演とはいえ、印象深い彼らの登場によって、チャプターが出来上がっている」と称え「オファーして演じてもらうことが楽しい経験だ」と話す。ネッド・ケリーを演じたジョージ・マッケイについて「彼の体型改革こそ見て分かるように、彼は様々な挑戦的課題があった」と挙げ「男性であることで極限まで強くなって疲れていくか。この耐久性が『1917 命をかけた伝令』で演じる上での身体づくりや姿勢が出来た」と本人から聞き、印象深い経験だったと感じている。また、ケリー・ギャングを演じたアール・ケイブとルとイス・ヒューイソンは18歳の頃であり「10代の多感な時期、大人になっていく過程に影響を与えている」と伝わってきた。なお、人質となった英語教師のカーネルがネッド・ケリーに対して自伝の校正を提案した際に、ジョージ・マッケイがネッド・ケリーと化していると感じ「親しくなっている彼が他人に見えました。俳優の目の色が変わったり表情が変わったりと何かが起きている。こういう瞬間を覚えており、今までも経験したことがある」と気づき、本作に対する確信へと繋がっていく。

 

オーストラリア出身のジャスティン・カーゼル監督は、久しぶりに生まれ故郷で撮り「楽しい経験で最高でしたね。友人や家族に囲まれて、好きなクルーと一緒に仕事が出来た」と満足している「自分に近い題材を分かった環境で撮るのは違う」と肌感覚としても感じており「その前に4,5年をロンドンに滞在し、作品によっては想像もしなかった場所で撮影出来たことは素晴らしい経験だった。本作と次の作品をオーストラリアで撮ると、しばらくオーストラリアにいると、また外国で撮ることが楽しみになってくる」とリフレッシュ。自身のルーツがあることの大切さも感じ「自分のルーツにつながりを持って、国から長く離れてしまうと外国人が撮るような目線になってしまう。世界的に活動して撮っている監督も自分の故郷や世界観があるから、作品が撮れている」と納得した。

 

映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』は、関西では、8月6日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都、8月13日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、10月9日(土)より神戸・新開地の神戸アートビレッジセンターで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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