「なんであなたはそこまでするの?なんでそんな行動したの?」と演じた主人公と対峙していった…『コントラ KONTORA』円井わんさんに聞く!
宝のありかを示す祖父の日記を見つけた女子高生が不思議な体験をしていく様子を、印象的なモノクロ映像や独特な世界観で描く『コントラ KONTORA』が6月5日(土)より関西の劇場でも公開。今回、円井わんさんにインタビューを行った。
映画『コントラ KONTORA』は、インド出身で日本在住のアンシュル・チョウハン監督が、日本の田舎町を舞台にモノクロ映像で撮りあげたファンタジックな人間ドラマ。女子高生のソラは父と2人で暮らしているが、父子関係は冷え切っていた。ある日、急死した祖父が遺した第2次世界大戦中の日記を見つけた彼女は、その中に宝の存在を示す記述を発見し、密かに宝探しを始める。時を同じくして、ソラの住む町に、無言で後ろ向きに歩くホームレスの男が現れる。ソラの父が男を車で轢いたことをきっかけに、ソラと男の不思議な交流が始まる。主演は『タイトル、拒絶』の円井わんさん。エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭でグランプリと最優秀音楽賞、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門で優秀作品賞を受賞した。
以前、チョウハン監督による別作品のオーディションを受けたことがある円井さん。その作品は企画自体が消滅してしまったが、監督の記憶に円井さんが印象的に残っており、本作の脚本執筆中に主演のイメージと合致しオファーとなった。円井さんにとっては初主演作となり喜んだが、脚本を読んで「なんじゃこれ」と衝撃を受けてしまう。チョウハン監督の前作『東京不穏詩』を見ていたのですが、全く違う雰囲気になっており「後ろ向きに歩く男が現れる時点で、凄い作品が出来上がる」と予感せざるを得なかった。
本作には、無言で後ろ歩きをする見窄らしい男が突然現れる。円井さんは「地元に顔見知りの人だけがいる空間に、知らない謎の男が現れるのは、興味は湧きますよね」と率直に話す。演じたソラとは会話をしているイメージを描きながら演じており「寝る前にソラと会話することを思い描いていた。『なんであなたはそこまでするの?なんでそんな行動したの?』とずっと聞いていた。ソラと切り離す瞬間を毎晩作り、苦しそうだなぁ、と感じていた」と振り返る。監督からは「ソラを演じるな。円井わんのバックボーンを掘り出して臨んでくれ」と云われたのが、自身としては演じやすかった。昨年の大阪アジアン映画祭での上映時には親が観に来ており「演技してた?中学生の頃のアンタっぽかった」と云われ、実感が湧かず。自身の小中学生時代を思い返し、ソラの気持ちは理解でき、母親のような感覚で客観的に捉えており「地元が嫌いだったことを思い出しました。地元の集まりに参加すると、上京することについて親が問い詰められていた。母親は冒険家気質なので、背中を押してくれた。父親は反対していたので、ソラの父親と似ていたかもしれない」と回想する。
撮影は10日間という短さで大変な現場となり「私だけ10日間休みなし出ずっぱり。撮影当時はまだまだ未熟な二十歳で監督を困らせていた」と自省。中盤からはディスカッションを行い、監督からは「わからないことがあったら言ってくれ」とアドバイスを受け、次第にスムーズに撮影を進められた。とはいえ、後ろ向きに歩く男に話しかけるシーンについて「自分にはない引き出しだった。どういう風に接したらいいんだろう。喋らないので、大人と話しているのか分からなくなり、タメ口と敬語の矛盾が生じる。子供のように扱うけど、大人だしなぁ…」と混乱してしまう。しかし、15分長回しのシーンでは一発OKとなったことがあり「1カット長回しは嬉しかった。こんなに長回しさせてくれる監督は他にいない。セリフを覚える動作があまり要らなかった。ストーリーに沿っていればセリフを変えても良かった」と自信がついた。
完成した本作を観て「最初は感動して泣いていました。当事者としての辛さがあったから泣いたのかな」と振り返るも、戦争で亡くなった方に捧げる思いは監督とも一致しており「本作を世界に届けて浄化されるものがあるという感覚で感動していました」と冷静に語る。また「祖父が戦争で満州に行っており、祖母から戦争の話を5歳の頃に聞いたことを鮮明に覚えている。私は戦争に対して人一倍に疑問や意思があり、本作に参加できて良かった。本作のストーリーは意義のある内容」だと話す。なお、今後は「アクションがやりたい。銃やナイフを使ったり。戦争映画に出たい。スパイなどの格好良い役に挑みたい」とこれまで演じてこなかった強い女性の役を演じようと果敢に挑戦していく心持ちだ。
映画『コントラ KONTORA』は、6月5日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。また、京都・出町柳の出町座や神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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