レンブラントに熱狂する者達を追うドキュメンタリー『レンブラントは誰の手に』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)2019DiscoursFilm
バロック絵画を代表するオランダの巨匠画家、レンブラントに熱狂する人々の情熱を捉えたドキュメンタリー『レンブラントは誰の手に』が3月19日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『レンブラントは誰の手に』は、オランダ黄金時代に活躍した巨匠レンブラントの絵画をめぐり、アートに魅せられた人々の愛と欲が交錯する様子をドラマティックに描いたドキュメンタリー。レンブラントの肖像画を所有するオランダ貴族の家に生まれた若き画商ヤン・シックスは、ロンドンで競売にかけられた肖像画がレンブラントの作品だと直感し、安値で落札する。本物であればレンブラントの作品が発見されるのは44年ぶりとなるが、思わぬ横やりが入ってしまう。一方、富豪ロスチャイルド家が所有するレンブラントの絵画2点が売りに出されることになり、フランスのルーブル美術館とオランダのアムステルダム国立美術館が獲得に動き出す。事態はいつしか、両国の政治家たちまで巻き込んだ大騒動へと発展していく。監督は『みんなのアムステルダム国立美術館へ』のウケ・ホーヘンダイク。
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映画『レンブラントは誰の手に』は、関西では、3月19日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と京都・烏丸の京都シネマ、3月26日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
レンブラントは複製品が多い画家だ。いわゆる贋作に加えて、一種の公式コピーのような工房の弟子による模写も多く製作されている。一方で、後世の修復で元の姿を留めていないため、彼の作品と気づかれずに埋もれてしまっているものが時に発見されることもあった。いずれにしても希少なこの画家の「真作」が世に出ると、その機会を逃さずに我が物にしようと争奪戦が繰り広げられる。本作も、レンブラントのある作品を巡って、富豪の貴族や国立の美術館が繰り広げる争奪戦を追ったユニークなドキュメンタリー。原題は「My Rembrant」。「この絵は私のものだ!」という独占欲に満ちた叫びが聞こえてくるようである。劇中で落札されるレンブラント作品の価格は、1億6000万ユーロ(約2億ドル)。これまでの世界中の絵画の落札価格として、史上10位に入る金額である。この絵画をいったい誰が手に入れるのか。金額による競り合いだけかと思われたこの出来事は、最後には思いがけない方向に進んでいく。
そして、このコロナ禍の世界において、美術館の事情も変化してきている。本年3月に、ニューヨークのメトロポリタン美術館が、創設以来の長年の大原則をやぶり「所蔵品を売りに出すことで資金を調達する」と発表した。海外からの観客がほぼ無くなった現状では、そうでもしないと従業員の給料を支払えない、という。もはや、資金に糸目を付けずに希少なマスターピースを取り合う時代は、終わりを迎えようとしているのかもしれない。だとしたら、こんな狂宴が見られるのはこれが最後になるだろう。そんな意味でも、今観て頂きたい作品。落札され、とある美術館に展示されているレンブラント作品を取り囲む観客の様子もまた、とても皮肉である。絵画を自分の目でよく見ることよりも、スマホでその写真を撮ることに夢中な人々。もしもこの世界が落ち着いて、ふたたび美術館の中をゆっくりと歩くことが出来る日々が帰ってきたら、そのとき自分はどんな風に観賞するだろう。そんなことも考えながら本作を観てみても、おもしろい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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