簡単に解決しない、長く訴えないと力にならない…！『戦車闘争』小池和洋プロデューサーに聞く！

2021年1月11日

１９７２年、相模原市の相模総合補給廠で修理された米軍戦車が再び戦地に送られるのを、市民たちが座り込みで抗議して断念させた闘争の実像を関係者の証言で描く『戦車闘争』が関西の劇場でも１月１５日（金）より公開。今回、小池和洋プロデューサーにインタビューを行った。

映画『戦車闘争』は、ベトナム戦争終盤の１９７２年に神奈川県の米軍施設付近で発生した市民による反戦運動「戦車闘争」を題材にしたドキュメンタリー。１９７２年、米軍はベトナムで破損した戦車を神奈川県相模原市の米陸軍相模総合補給廠で修理し、再び戦場へ送るため横浜の港湾施設へ輸送していた。その事実に憤った市民が施設付近に結集し、戦車の輸送を阻止。この事件をきっかけに、およそ１００日間におよぶ抗議活動が始まった。抗議活動参加者、機動隊員、活動に巻き込まれた地元商店主、市議会議員など、あらゆる立場の当事者や専門家など総勢５４人の証言と膨大な資料を通して闘争の顛末を描き、現在の日米関係や憲法の抱える問題をあぶり出していく。ミュージシャン・俳優の泉谷しげるさんがナレーションを担当。

１９７４年生まれで山梨県出身の小池さんは、相模原に住んで２５年になる。映画製作者として「相模原を舞台にした映画作りたい」と願い、２０１７年にＪ３のサッカーチームであるFC相模原をモデルにした映画『ホペイロの憂鬱』を製作。そこで相模原市史を読む機会があり、数頁であるが戦車闘争の記述を発見し「こんなことがあったのか」と驚いた。興味を持ち、独自に資料を集め続けて掘り下げていき、本作の制作に至っていく。とはいえ、予算がない中での製作なので、プロデューサーがインタビュアーとして全面に出演した作品となっている。本来であれば、評論家等がしっかりとリサーチして小池さんがコントロールする立場だが「自ら伺うのが一番早い。能力的にも金銭的にも時間的にも。結果的に全面に出ざるを得なかった」と説く。監督になることも検討したが「撮影も考えていたが限界がある」と実感し、ドキュメンタリー監督の経験がある辻豊史さんを紹介して頂いた。本作の企画を話してみると、興味を持ってもらい「彼自身は勉強家で、センスのある人。PFF入賞者でもありますから、彼のセンスのおかげでおもしろい作品が出来上がりました」と感謝している。

取材にあたり、闘争の参加者は横の繋がりがあり、紹介してもらった。とはいえ、面識のない人達であり、手紙を書いたり電話をしたり様々な手段を利用して出演を依頼。最終的に、気持ちよくお話して頂いた。さらに、当時の警察や機動隊の方も出演しており「あの人達はプロフェッショナル。大勢の機能の一つであり、歴史の教科書で全面に出ることはない。本当は話したくてしょうがなかった。タウン誌に募集記事を掲載したら応募して頂き、連絡がありました」と明かす。しかし、本作は少人数編成の制作であり「私達には実績がないし、知名度もない。果たして様々な方々が会ってくれるだろうか。本作が完成するかどうか分からない中で作らないといけない」と不安だらけの苦しい状況が続いた。だが、幸いにも文化庁の助成金を受け取れることになる。とはいえ、年度末までに完成して見せないといけなくなってしまった。「シナリオがなく、話したいだけ話してもらうことで取材が成り立っている。取材相手が５４人、収録は１００時間以上。構成を簡単には決められない」と撮影と編集を担った辻監督も大変な状況に。「戦車闘争の顛末から現代にどういう影響を投げかけているのか」と話し合いながら、２０２０年の２月最終週まで議論を重ね、３月初旬に完成させた。なお、泉谷しげるさんがナレーションを担っており「面識がなかった。偶然にも、泉谷さんのマネージャーと親しい方が傍におり、オファーしたら御本人が快諾してもらった」と明かしてもらう。

現在、とあるスポンサーからは続編も期待されている。今回、１００時間以上も取材した上で１０４分の作品にしており「ほとんどの映像を割愛せざるを得なかった。さらに興味深い証言が残されている」と明かす。さらに「別の角度から再取材する。戦車闘争はまだまだ出てくる題材が沢山ある」と興味津々だ。なお、本作のサブタイトルには”SAGAMIHARA, YOKOHAMA 1972-20XX”とあり「最初は、”202X”だった。しかし、２０２０年代には解決しないだろう、１世紀を表す”20XX”だ。簡単に解決する問題ではない。大河ドラマのごとく長く訴えていかないと力にならない」と秘めた思いが込められている。

映画『戦車闘争』は、１月１５日（金）より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と京都・九条の京都みなみ会館で公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。

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