ちょっと変わったメタ構造の映画を楽しんでもらえたら…『ビューティフルドリーマー』小川紗良さんとかざりさんと本広克行監督を迎え舞台挨拶開催!
撮ろうとすると必ず恐ろしいことが起こるという、いわくつきの映画作りに乗り出した大学の映画研究会の部員メンバーたちの奮闘を描く『ビューティフルドリーマー』が、11月6日(金)より全国の劇場で公開中。11月7日(土)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田に小川紗良さんとかざりさんと本広克行監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『ビューティフルドリーマー』は、映画を撮ったことのない映画研究会のメンバーが、“いわくつきの台本”の映画化に挑むさまを描く。文化祭の準備に追われる熱気あふれる先勝美術大学の校内で、映画を撮ったことがない映画研究会の部室だけはいつものようなまったりとした時間が流れていた。「教室の片隅に何かある」という不思議な夢を見たサラは、本当に古いダンボールを見つけてしまう。箱の中に入っていたのは、古い脚本と演出ノート、そして1本の16ミリフィルムだった。しかし、それは「撮ろうとすると必ず何か恐ろしいことが起こる」という、映研に代々伝わるいわくつきの台本だった。
本作は、『踊る大捜査線』シリーズや『サマータイムタイムマシン・ブルース』の本広克行監督が、押井守原案のストーリー「夢みる人」を映画化。本広監督、押井監督、小中和哉監督、上田慎一郎監督によって、かつて実験的、芸術的な映画の製作・配給を行ったATG(日本アート・シアター・ギルド)に影響を受け発足した実写映画レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」の第1弾作品。『イノセント15』『聖なるもの』などで主演を務め、自身も映画監督として活躍する小川紗良さんが主人公のサラ役を演じる。
上映前に、小川紗良さんとかざりさんと本広克行監督が登壇。小川さんは、連続テレビ小説「まんぷく」以来の大阪となり「久々に来れて嬉しいです。満喫していきたいな」とワクワク。かざりさんは、初めての舞台挨拶のため緊張ぎみ。本広監督は、「探偵ナイトスクープ」に顧問として出演以来の大阪を楽しみにしていた。
出演者がエチュード(即興)で自然に出てくる言葉を取り入れていく手法で作られた本作。本広監督は横から指示する立場であり「急な展開があり、おもしろいです」を現場を楽しんでいる。完成した作品を観た小川さんは「脚本は一応あったんですが、全く脚本通りに演じていない。私達映研部員や劇中劇のキャストの皆さんの勝手なお喋りでほとんどが作られているので、ほとんどが即興劇ですよね」と冷静に話す。これを受け、本広監督は「変ですよね、やたら皆が喋っているので」と正直に述べ「普段の日常会話はそうなんです。クロストークになり、相手が喋っているのに上から被せていくことは、昔の映画では出来ないと云われていた。マイクロフォンの技術が到達していなかったが、最近は出来る時代になった」と解説。「ならば、そんな映画を撮りたいな。台詞にすると難しかった。今回は実験的にやっています」と意図を明らかにした。
実験的な設定としては、本作に登場するキャラクターの名前が、俳優の名前と同じになっている。小川さんは「私達映研部員も普段は本名で呼んでいるので、関係性をそのまま表現できたので演じやすかったですね」と振り返りながら、自身が学生の頃から映画を撮っており、本広監督が手掛けていた「さぬき映画祭」でも上映して頂いたことを挙げ「当て書きのような役を頂いて嬉しかったです」と喜びを表す。本広監督は「映画監督は独特の言葉やボキャブラリーを使いますが、やっている人でないと出来ない。監督役でないと出来ないことがある」と説き「小川さんは学生映画でやっていると聞いていた。作品を観てもらえたら、売れるだろうな」と期待している。
元自衛官のかざりさんは、元々は劇中劇のヒロイン役に関するオーディションに参加。緑色のウィッグが用意されていたが「ウィッグ被らなくていいよ」と云われ、そのままオーディションに参加し、オファーされた。「何が良かったんだろうな」と不思議だったが、本広監督は「元自衛官が役者をやるというのはおもしろい。このストーリーはどうしても戦車が出てくる。戦車をどうやって表現するか。元自衛官の方が戦車をレンタル出来る会社にいたらおもしろいだろうな。台本を全部書き換えた」と明かしていく。監督の言葉を受け、かざりさんは「有り難い限りです。震えますね」と打ち明け「最初に台本を頂いた時、台詞がほとんど書かれていない状態だったので、どうやって表現していけばいいんだろう。新鮮でしたね。初出演でいきなりエチュードだったので、難しかったです」と回想。本広監督は「台詞を云うのは役者さんの能力なんですね。台詞を喋るのは難しいんですよ」とふまえた上で「『かざりさんが普段喋っていることを言って下さい。こういう時はどういうことを喋りますか』と聞いた上で撮ると、自然と出てくる。僕らはかざりさんがやっている演技は出来ませんが、御本人は違和感なく演じられる。アドリブなんで凄いですよ」と称えていく。かざりさんは「自衛隊で鍛えた訓練が今役立って良かったです。有り難い限りです」と感謝の気持ちで一杯だ。
小川さんは、連続テレビ小説「まんぷく」の撮影で2ヶ月程度大阪に滞在して撮影していた。万博の時期の話だったことから「万博記念公園に行きましたね」や「中崎町に1人で行って喫茶店によく行ってました」と振り返る。三重県出身のかざりさんは、学生時代に大阪に遊びに来たことがあり「梅田駅で迷子になってウロウロしてたら、大阪のマダムが助けてくれました。大阪の人情に触れて帰りました」と良い思い出があった。関西育ちの本広監督は、「探偵ナイトスクープ」を上岡龍太郎さんが局長の頃から観ており「演出の勉強になるんですよ。人が泣くときは自然なドキュメンタリーを見ているような感覚があるんですよ。なぜ感動するのかメモしている」と明かす。小川さんが「顧問役は皆がやりたいですよ」と添えると、本広監督は「一時期、秘書は女優さんが担っていたので、今なら紗良さんが出来ますよ」と推薦していく。
学生時代、小川さんは映画祭や関西で女優として撮影に参加しており、関西の芸術大学や専門学校で映画を撮っている学生と関わりがあった。普段は東京の映画サークルと関わっているが「関西で映画を作っている学生達は雰囲気が違い、全てを面白がって取り組んでくれる。活気が凄くて映画サークルの雰囲気が違って新鮮。関西で映画を撮っている人達と一緒にやってみたい」とやる気に溢れている。かざりさんは、関西版の『シン・ゴジラ』があったらおもしろいと思っており「大阪城と共にゴジラと自衛隊が観たいな」と期待。本広監督は、これまで大阪や神戸の地下鉄で撮っており「『交渉人 真下正義』はほとんど関西で撮った作品ですね。『亜人』も大阪の高層タワーで撮っていますね」と挙げ「大阪の皆さんは協力的ですね。皆でおもしろい作品を作りましょう、という熱気がある。グイグイ引っ張ってくれるおっちゃんやおばちゃんがいますね」と信頼している。
最後に、本広監督は、本作について「ちょっと変わった映画です。メタ構造になっており、さらにメタのメタで。本人の名前にしているのもメタ構造。なんか変だな、と思うことが随分あると思います」と正直に話し「演出的なメタ構造を考えて観て頂ければ。皆さん楽しんでください」と伝えた。かざりさんは「皆の楽しい夢が沢山詰まったカオスな映画だと思うので、皆さんに是非楽しんで頂けたら」とコメント。小川さんは「様々な方が観に来て下って嬉しいです。観る方の年代によって違いますね」とシアター内を観ながら話し「私と同じか下の世代だと等身大の青春映画かもしれないし、上の世代になると様々な意味で懐かしい要素が出てくると思います。様々な方に観て頂けるのが嬉しいので、存分に楽しんで頂ければな」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。
映画『ビューティフルドリーマー』は、11月6日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・三条のMOVIX京都、神戸・三宮の シネ・リーブル神戸をはじめ、全国の劇場で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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