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壊れた母娘関係を正視し、家族の傷を癒すドキュメンタリー 『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』日本語翻訳出版クラウドファンディング実施中!

2020年11月3日

いつしか上手くコミュニケーションが取れなくなってしまった母・アヌとの関係を、自らも一児の母となった娘が、映画製作を通して母を理解し、関係を修復しようと試みるドキュメンタリー『日常対話』。現在、本作を手掛けた黄惠偵(ホアン・フイチェン)監督が綴ったドキュメンタリー書籍『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』の日本語翻訳出版に向けたクラウドファンディングが実施中だ。

 

映画『日常対話』は、監督の黄恵偵は、娘の誕生をきっかけに、親子らしい会話のなかった母親との「対話」をカメラを通して試みていく。母に関する様々なインタビューから見えてきたのは、元夫のDV、セクシュアリティ、社会の抑圧など、凄まじい経験を抱えながらも健気に生き抜く母の姿だった。では母さん、娘の「私」が長年抱えてきた葛藤を今から話すね…。小学校すら卒業できなかった不遇の子供時代。さらに著者が誰にも明かせないでいた、かつて父親から受けたある虐待の記憶は、いつしかかたちを変え、著者と母親の間の埋められない深い溝となる。そんな母親と向き合い、関係を修復するために作られた。自らの体験を題材にしており、ベルリン国際映画祭をはじめ国内外で高い評価を得て、最終的には第90回米アカデミー賞に台湾の代表作品として出品される。台湾ドキュメンタリー映画としては初の快挙を成し遂げた。関西では、今年開催された「東京ドキュメンタリー映画祭 in OSAKA」にて上映されている。

 

黄惠偵監督は、本作を制作すると共に、家族の物語を文字で編んだもうひとつのセルフ・ドキュメンタリー『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』を台湾で出版。同性愛者である母の半生、存在しない父の記憶、母の恋人たち、そして幼いころ過ごした「家」の思い出。「母は女性が好きなのに、どうして結婚して私達を産んだのだろう?」――誰にも明かせなかった著者の体験と胸の内が、活き活きとした文章で赤裸々に綴られている。

 

本書を手にした台湾映画同好会代表の小島あつ子さんは、本作の書籍であることを知り、日本語に翻訳され、監督の思いと映像作品が沢山の人に届けるべく、クラウドファンディングを起ち上げ。来年春以降を目標にした書籍の翻訳出版、並びに、NHKで放映されたTV版映像のDVD化(日本語字幕付き)を目指している。クラウドファンディングでは、支援がそのまま本やDVDの購入予約となる仕組みい。[11月16日(月)迄の期間内に目標金額に達しなければ、決済されず、本の出版も実施されない。]支援者への特典には、本書の出版記念トークイベント付きオンライン上映会や応援おまけ等が用意されている。

 

ドキュメンタリー書籍『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』の日本語翻訳出版に向けたクラウドファンディングは11月16日(月)まで実施中。書籍の目次や、各章の内容なども掲載されている。

書籍の日本語翻訳出版クラウドファンディングが始まって間もない8月末、『日常対話』の劇場上映を観る機会を得た。ホアン監督の母であるアヌの半生が、娘の視点から立体的に描かれていく。穏やかな映像の中で淡々と語られていく、アヌの波乱に満ちた過去。アヌとホアン監督との間くらいの世代による視点から、様々に感じる点がある良作であった。近年、セクシャルマイノリティに対してスポットライトが当たることは俄かに増えてきた印象はあるが、レズビアンを取り上げた映画作品は(ゲイが主題のものと比較しても)非常に少ない。それでも確かに存在する彼女達が本作で描かれていることに一筋の光を見た。

 

映画を観終えたあと、改めて書籍の方も読みたくなってしまう。翻訳出版はクラウドファンディングが目標金額に達しない場合、発行には至らない。11月16日の期間終了まで間もなくだが、一人でも多くの人に、この作品を知ってほしい、そのためにもクラウドファンディングの成功を願うばかりである。なお、クラウドファンディングのリターンの中に、書籍に加えて映画作品のDVDが付くコースもあるので、映画に興味を持たれた方にもぜひ、応援いただければ。

fromやすえ

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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