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安冨歩さんの魅力的な言葉が如何に有権者を動かしたか改めて考える…『れいわ一揆』原一男監督に聞く!

2020年9月15日

山本太郎代表率いる“れいわ新選組“から出馬した個性豊かな候補者たちの選挙戦を追いかける『れいわ一揆』が9月18日(金)より関西の劇場でも公開。今回、原一男監督にインタビューを行った。

 

映画『れいわ一揆』は、『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』等で知られるドキュメンタリーの鬼才と呼ばれる原一男監督が、2019年の参議院選挙で注目を集めた「れいわ新選組」の候補者を追ったドキュメンタリー。令和元年夏、参議院選挙でさまざまな候補者を擁立したことも話題となったれいわ新選組から、女性装の東大教授として知られる安冨歩さんが比例代表候補として参院選に出馬した。「子どもを守り未来を守る」のスローガンを掲げて、全国遊説の旅に出た安冨さんを中心に10人の個性豊かな候補者たちの姿に原監督のカメラが鋭く迫っていく。

 

「れいわ新選組」からの候補者の中でも安冨歩さんをフィーチャーした本作。原監督は、安冨さんついて「学者さんだから、様々な研究をしている。自身の研究を演説会場でとても分かり易く話す。聴く側にとっては、モヤモヤしていたことをスゥーっと分かり易く話してくれるので、言葉が自然に入ってくる」とその世界観を魅力的に語る。原監督作品には、いつもエッジのある中心人物が登場しており「自分の生き方をきっちり持っている人である。権力に対して喧嘩を売っていかないと世の中は良くならないと分かった上で、自分なりの方法で喧嘩を売っていく人を私は主人公にしてきた」と述べ、安富さんも値する人物であった。今作では、安富さんより「私の映画を作ってくれるなら立候補します」と云われ撮り始めたが「まさに主人公にふさわしい魅力を持っていた」と断言する。

 

撮影に長時間をかけることが多い原監督。本作では、3週間にわたる選挙戦が中心であるため、一本の長編映画が出来るか不安だった。普段は、被写体となった人物の感情を掘り下げていこうとカメラを回していく。今回は、掘り下げていくには短いと感じ「選挙演説の現場でカメラを回すので、候補者が有権者に向けた言葉を真正面から向き合ってみよう」と決断。「言葉が持つ魅力によってどのように伝わるのか」と注視し「そもそも言葉はどういう意味を持つのか。言葉をめぐる哲学的考察がある映画になればいいなぁ」と期待していく。結果として「言葉を通して、候補者のキャラクターが見えてくるように撮れているはず」と確信し「人間性を追うという意識よりも、言葉の持つ魅力を追う」という一貫した気持ちを以てカメラは回していった。なお、安富さんの遊説には専属の音楽家が同行しており、絶えず音楽が流れ、映画音楽として扱っている。さらに、新橋駅SL広場開催された「れいわ祭2」での渋さ知らズオーケストラ 有志によるパフォーマンスも収録されており「目の前で起きている出来事を出来るだけ正確に記録していく。良いなぁと思えたので、最大限に活かすような編集になっている」と話す。

 

編集にあたり、原監督は基本的に編集マンに任せている。基本的な方針や監督の狙いを口頭で伝え、理解した編集マンは自身の世界観を以て映像を繋げていく。そして、一通り出来上がったものを見せてもらい、コメントしながら作業は重ねられる。今作では、デモ田中さんと組み、原監督は大満足。作品によって編集マンを変えており「今回は、編集マンの持ち味を頂いた方が良い映画になるだろうなあ、と判断して選んでいます。投票・開票のシーンを編集マンに委ね、初めて繋いだシーンを観た時、見事だ!と思いました」と絶賛。「劇映画以上にドラマチックに繋がれている。この人に編集を頼んで良かった」と感慨深い。なお、第一段階では、良さそうなシーンを全部入れ込んで流れを作り、7時間もあったが、話し合いをしながら作業を進め2時間も削り、再びやり取りしながら少しずつ内容を凝縮し、4時間になった時点で「シーンに込めた論理が非常に強く表現出来ている。もうこれ以上は落とせない」と意見が一致し、完成に至った。

 

当初、本作は4月公開だったが、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて公開延期。原監督は「この映画は旬を逃したんだなぁ、不運だなぁ」と当時を振り返る。その後、映画館の営業が再開し、再公開日を劇場に交渉し始めた時、れいわ新選組の内紛が明るみに出た。「ついてないなぁ」と思わざるを得なかったが「1年前に私達がカメラを回した時、候補者達が選挙戦に挑み、大きな刺激となって、れいわ新選組ブームと云われる熱狂を記録できた」と思い返す。遂に公開を迎え「熱狂そのものが虚妄だったわけではない。選挙に無感心な人を動かしたことは間違いなくあった。1年経った今、この意味を考えるべきじゃないか。1年前を記録した作品には価値があるんだ」と言い聞かせ「旬を逃していない。この映画にとって今が旬なんだ」と信じて疑わない。

 

映画『れいわ一揆』は、9月18日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都、9月19日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、11月7日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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