人が人を好きになる境界線はない…行定勲監督が新しい愛の在り方を描く『窮鼠はチーズの夢を見る』がいよいよ劇場公開!
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
7年ぶりの再会を果たすふたりの青年の姿を中心に、“人を好きになることの喜びや痛み“を映し出す『窮鼠はチーズの夢を見る』が、9月11日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』は、多くの女性から支持を得た水城せとなさんのコミックを映画化。優柔不断な性格から不倫を重ねてきた広告代理店勤務の大伴恭一の前に、卒業以来会う機会のなかった大学の後輩・今ヶ瀬渉が現れる。今ヶ瀬は妻から派遣された浮気調査員として、恭一の不倫を追っていた。不倫の事実を恭一に突きつけた今ヶ瀬は、その事実を隠す条件を提示する。それは「カラダと引き換えに」という耳を疑うものだった。恭一は当然のように拒絶するが、7年間一途に恭一を思い続けてきたという今ヶ瀬のペースに乗せられてしまう。そして、恭一は今ヶ瀬との2人の時間が次第に心地よくなっていく。
本作は、恋に溺れていく2人の男性を描いた水城せとなさんの人気漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』を、行定勲監督のメガホンにより実写映画化。主人公の大伴恭一役を「関ジャニ∞」の大倉忠義さん、恭一に思いを寄せる今ヶ瀬渉役を成田凌さんが演じる。また、会社の後輩・岡村たまきを『チワワちゃん』の吉田志織さん、大学時代の恋人・夏生をゲスの極み乙女。のドラマー“ほな・いこか”ことさとうほなみさん、妻・知佳子を元宝塚歌劇団雪組トップ娘役の咲妃みゆさん、不倫相手・井出瑠璃子を『ジムノペディに乱れる』の小原徳子さんが演じた。
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』は、9月11日(金)より全国の劇場で公開。
現代における”人たらし”の象徴として描かれる主人公の恭一。目の前で対峙する状況に対して、拒む態度を示さないわけでもないが、結局は受け入れてしまう”流され侍”でもある。そんな恭一に少しでも夢うつつな気分になってしまったら、男女問わず惚れ込んでしまうだろう。恭一がモテる理由に納得してしまわざるを得ない。
本作の原作漫画は、元々はレディースコミック誌の連載作品であり、同性愛を扱っている恋愛作品。だが、リアリティあふれる世界観を以て、読者の共感を呼ぶ心理描写によって、性別を問わず楽しめる作品として作られている。BL作品だと思って毛嫌いしてしまうのは、多少なりとも損ではないか。普通の男であると自身を認識している恭一が、自然な流れで今ヶ瀬を受け入れ、お互いに求め合っていく。丁寧な情景描写をもって表現されており、作品が放つ魅力によって自然と見入ってしまう。人生の中で、胸が苦しくなるほどに誰かを愛したことが経験をしたことがあるならば、恭一や今ヶ瀬に少しでも共感する、と願いたい。
なお、恭一と今ヶ瀬が部屋で過ごす、あるシーンの傍らでは、TVからジャン・コクトー監督の『オルフェ』が映し出されている。既成概念によって作られた立場を超えて相手を愛そうとする登場人物達の姿を重ねてみると、本作がどれだけ切ない作品であることか実感させられてしまう。映画監督として20周年を迎えた行定勲監督が『劇場』に引き続き渾身の力をふり絞って作られた本作、普遍的な愛の姿を是非ご堪能あれ。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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