新種の植物がもたらす幸福とは…『リトル・ジョー』がいよいよ劇場公開!
(C) COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
女性研究者の開発した植物が引き起こす予想もしない事態を描き出す『リトル・ジョー』が、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う休業要請の緩和により、7月17日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『リトル・ジョー』は、幸せになる香りを放つという新種の植物がもたらす不安を描く異色のスリラー。幸せになる香りを放つ新種の植物「リトル・ジョー」を開発した研究者でシングルマザーのアリスは、ワーカホリックで息子のジョーときちんと向き合えていないことに罪悪感を抱きながら、日々の研究にいそしんでいた。息子のジョーへの贈り物として、彼女にとってもう1人の息子であるリトル・ジョーを自宅に持ち帰る。しかし、リトル・ジョーの香りを嗅いだジョーが奇妙な行動をとり、花粉を吸い込んだアリスの助手クリスもいつもとは違う様子を見せ始める。
本作では、主演のエミリー・ビーチャムが第72回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞。アリスの助手役を『007』シリーズのQ役でもお馴染みのベン・ウィショーが務めている。監督はミヒャエル・ハネケの助手を務め、「ルルドの泉で」で注目された気鋭の女性監督ジェシカ・ハウスナーが担う。
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映画『リトル・ジョー』は、7月17日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸の109シネマズHAT神戸をはじめ全国の劇場で公開。
もし自分の身近な人が、以前とは別人のようになってしまったら、そして、誰も気づいていなかったら。まるでSF小説のようなあらすじは、たびたび題材にされてきたが、本作は新たな切り口からこのテーマに挑んでいる。
幸福感をもたらすことを目的に開発されたリトル・ジョー。甘美な香りで私たちを癒やす夢のような花だが、その花粉は脳に作用し、徐々に人々を変化させていく。人格が主体を失っているようには見えないが、何かが変わっている。その何かを知るのは親しい人だけだ。規則性は見出せず、誰にも信じてもらえないまま、証明しようのない違和感がじわじわと影を伸ばす。主人公のアリスは、リトル・ジョーの開発者でありながら(あるがゆえに)疑心に苦しみ、しかし後戻りすることができない。まるで文明の末路を示唆しているようでもある。
本作では、秩序の保たれた鮮やかな色彩が印象的だが、裏腹にどこか調和を乱す不穏な音楽も素晴らしい。これまで自然を収奪してきた人間が、本来の摂理に取り込まれていく構造を予感させる。リトル・ジョーは生存本能をもった侵食者として描かれる一方で、理想的な共生相手であるようにも思えた。そこに”果たして「変化させられる」ことは不幸だろうか? ”という問いが見え隠れする。リトル・ジョーを創り出したのは人間であり、リトル・ジョーを求めるのもまた人間であるという皮肉な事実、宇宙からの侵略者のような戦うべき相手を用意してはくれない。
fromマエダミアン
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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