夫と元彼たちがホテルに大集合?『今宵、212号室で』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema
結婚20年目にして夫婦の危機を迎えた人妻の、一夜の不可思議な体験を描く『今宵、212号室で』が、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う休業要請の緩和により、7月3日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『今宵、212号室で』は、パリのホテルを舞台に展開する恋愛ドラマ。マリアとリシャールの夫婦は付き合って25年、結婚して20年になる。ある日、密かに重ねていたマリアの浮気が夫のリシャールにばれてしまう。怒った夫と距離を置くため、マリアは一晩だけアパルトマンの真向かいにあるホテルの212号室に宿泊する。そんなマリアのもとに20年前の姿をしたリシャールが現れ、さらに元カレたちも次々と登場するという不思議な一夜が幕を開ける。
本作では、マリア役をキアラ・マストロヤンニ、若き日の夫リシャール役を『アマンダと僕』のバンサン・ラコスト、夫役をフランス・ポップス界の名プロデューサーであり人気ミュージシャンのバンジャマン・ビオレがそれぞれ演じる。キアラ・マストロヤンニが第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門最優秀演技賞を受賞した。『愛のあしあと』のクリストフ・オノレが監督を務め、シャンソンの名曲に乗せた小粋なタッチや、スタイリッシュな映像も魅力を放っている。
(C)Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema
映画『今宵、212号室で』は、関西では7月3日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸の京都シネマで公開。また、7月10日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
「君は2+2を4じゃなくて、5にする人だった」──浮気していることがバレた妻マリアと、マリアの浮気を知ってしまった夫リシャール。過去の自分を見つめ直すコメディかと思いきや、れっきとした哲学的なロマンス映画。哲学と称したのは、本来そこにいるはずのない者達=彼女の奥深くにしまわれた”記憶”と、彼女が交流する形で話が展開されるからだ。リシャールはリシャールの、マリアはマリアの、”過去”と話す。過去の擬人化と表現した方が正しいかもしれない。だからこそ、「記憶のままの君だ」 とイレーヌに向けたリシャールの言葉が、”記憶”以上の登場人物は出てこれないのだ、と胸に沁みる。
浮気が発覚した時、傷心的に話す”25年間浮気したことがない”リシャールを信じないマリアのあっけらかんとした態度には共感できる部分は微塵もなかった。浮気することが夫婦生活を上手く続けるコツだと思っているマリアと、リシャールとでは最初から立っている場所(価値観)が違うということを忘れないでおきたい。その上、リシャールの前にはイレーヌしか現れなかった。 さらに、リシャールの言う「君との25年を無駄にした」は相手を手軽に瀕死にさせるほどの力を持った強い言葉である。誠に身勝手な感想でしかない。しかし、相手に裏切られた時に言ってしまいがちな言葉でもあるから厄介だ。リシャールと25年間も一緒にいることにより、マリアは確実に意識をアップデートさせているはずだし、続けていること(浮気)があれば勿論やめたこと、始めたことだってあるはずだ。誰かと一緒にいて、そのままでいる方が凄い。その時間はお互いにとって無駄ではなかったはずだと、疑問に感じてしまった。”無駄だった”と簡単に言ってしまったリシャールは完全に浮気の被害者ではない。マリアが一見、悪者に見えるが、リシャールだってそうだ。
登場人物たちの何気ない言葉に考えさせられ、キャラクターのほとんどが記憶・感情の擬人化という、一風変わった映画であることは間違いない。「出会いの映画はよく作ったけど、映画が始まった時にはもうカップルになっている映画あまり作ってこなくて、作りたいと思ったんだ。」という監督の言葉には頷ける。人生は物事の始まりばかりではなく、始まりと同じだけ続きがある。邦題は原題である『Chambre 212(212号室を表す)』を踏襲した素敵なタイトルとなっていることにも嬉しい気持ちになった。
from君山
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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