花を植え続ける夫婦の18年を追ったドキュメンタリー『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)NHK
埼玉県秩父の山中の村にカメラを向け、“ムツばあさん“と呼ばれる老婆をはじめ、自然とともにそこで暮らす人々の生活を見つめていく『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』が、6月12日(金)より関西の劇場で公開される。
映画『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』は、放送を重ねる度に大きな反響を呼び起こし、感動の輪を広げてきたNHKのドキュメンタリーシリーズの劇場版。埼玉県秩父市吉田太田部楢尾。山深い村に暮らす小林ムツさんは60歳を過ぎた頃から、夫の公一さんとともに丹精込めた段々畑をひとつずつ閉じていき、そこに花を植えてきた。長い間世話になった畑が荒れ果てていくのを申し訳なく思ったムツさん夫婦は、せめて花を咲かせて山に還したい思いで、毎日コツコツと花を植え続け、その数は1万本以上にもおよんだ。暮らす人が年々少なくなる村に、春になるとムツさん夫婦の植えた色とりどりの花が咲きほこる。やがて、ムツさんにつらい出来事が訪れてしまう。
本作は、山あいの段々畑に花を植え続けた夫婦と小さな村の人たちを追い、2002年から放送されたNHKの人気ドキュメンタリーシリーズ「秩父山中 花のあとさき」を映画化。NHK仙台放送局に所属するカメラマンの百崎満晴さんが18年間にわたって取材した。「新日本風土記」などのドキュメンタリーを手がけた伊藤純さんがプロデューサー、元NHKアナウンサーの長谷川勝彦が語りを担当している。
(C)NHK
映画『花のあとさき ムツばあさんの歩いた道』は、6月12日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、6月26日(金)より京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも順次公開予定。
「人生なんて本当あっけねえもんだが」ムツさんの言葉が印象的だった。ムツさんは遥か遠くの景色が見えているように感じる。自分が消え誰も居なくなった山のその先を日々穏やかに案じていた。
一つの集落が消えるとはどういうことか。集落の終わりとは少し違う。かつての祭りを再興させるため、或いは、植えられた花々を鑑賞するために住人は居なくなれども町から集落に人々が集う。集落が消えた後もムツさんが植え続けた花々は鮮やかに山の斜面を染め上げる。生命力を感じさせる美しさが印象的であった。主人の居ない土地で綺麗に咲き揃う花は、誰も居ない山に漂う温かな人の残り香のようだ。主人不在のまま精神だけが脈々と引き継がれる。人が亡くなり集落が消えようとも終わるわけではない。いずれ全てが山に呑み込まれるが、生きた人々の痕跡は遥か先にも続いていく。
fromため
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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