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借金取り立て屋の男と花形役者の青年が恋に落ちる…『ソン・ランの響き』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2020年3月25日

(C)2019 STUDIO68

 

現・ホーチミンである1980年代のサイゴンを舞台に、借金取り立て屋とベトナムの伝統歌劇カイルオンの俳優という境遇の異なる青年ふたりの人生があるきっかけから交錯していく様を描く『ソン・ランの響き』が3月27日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『ソン・ランの響き』は、1980年代のサイゴン(現ホーチミン市)を舞台に、孤独な2人の男がひかれあう3日間の刹那的な物語を、ベトナムの民族楽器ソン・ランの音色にのせて描いたドラマ。1980年代のサイゴン。借金の取り立て屋ユンは、ベトナムの伝統歌舞劇「カイルオン」の花形役者リン・フンと運命的な出会いを果たす。はじめは反発し合っていた2人だったが、リン・フンがユンの家に泊まることになり、そこで心を通わせていく。実はユンは、カイルオンに欠かせない民族楽器ソン・ランの奏者を志していたことがあり、今でもソン・ランを大事に持っていた。対照的だがそれぞれに悲しい過去を持つ2人は孤独を埋めるように結ばれ、再会を約束して別れるが…

 

本作でスクリーンデビューを果たしたリエン・ビン・ファットがユンを演じ、ボーイズグループ365dabandのメンバーとしても活動していたアイザックがリン・フンに扮した。また、レオン・レの長編初監督作となっている。

 

(C)2019 STUDIO68

 

映画『ソン・ランの響き』は、3月27日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、3月28日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。

寡黙な主人公ユンは変わらない日々を淡々と過ごしていた。借金の取り立てという仕事柄、脅すことや粗野な行動を取ることもあり、若者たちから恐れられながらも親しまれていた。そんなある日、お金を徴収しに劇場へ向かう。煌びやかな美しい舞台衣装にガソリンをかけていると、自分とは正反対の若者に出会う。彼の名はリン。2人の出会いは映画らしく最悪だ。だからこそ、2人の感情の移り変わりが時が経つほどに、見事に映えるように工夫されている。出会い方は少々刺激が強かったが、これほど純粋で素敵な交流はないと、観た後にしみじみとしてしまうことは間違いない。

 

1人で生きてきた人生にゆっくりと誰かが入り込み、遠慮がちに交わっていく人間同士の尊さ。ここでリンが女性だったら、そんな風に2人の関係が素敵なものとはならなかっただろう。恋愛関係に発展してしまうような、よくある凡庸で退屈な映画になってしまったかもしれない。同性同士の交流であるからこそ垣間見える純粋さがあるのだ。誰にも邪魔して欲しく無い恋とは違う関係。

 

1980年代を描くために丹念に気を使ったシネマトグラフィーと青年の若気さが織り成す、純粋な物語。ぜひ劇場でこのかけがえのない2人の人間の、交流するわずかな時間をご覧ください。ソン・ランは打楽器の方であることをどうか忘れずに。

from君山

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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