等身大の私で演じられた…『いつかのふたり』中島ひろ子さん、長尾元監督、棚橋公子プロデューサーを迎え舞台挨拶開催!
ハンドメイドのレザークラフトを通じて、お互いに本音を言えない今どきの母と娘の気持ちの繋がりをコミカルに描く『いつかのふたり』が、11月1日(金)より関西の劇場で公開。11月2日(土)には、大阪・十三のシアターセブンに中島ひろ子さん、長尾元監督、棚橋公子プロデューサーを迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『いつかのふたり』は、レザークラフトを通じて母と娘の微妙な心のつながりをコミカルに描いたドラマ。シングルマザーの木嶋麻子と一人娘の真友。真友は高校卒業後、小説家に弟子入りするために大阪で一人暮らしをする予定になっていた。麻子はたまたま見かけた手芸用品店のレザークラフトに心魅かれ、ともに作品を作ることにのめり込んだ麻子と真友は充実した日々を送っていくが、2人にはちょっとしたわだかまりがあった。それは、麻子は真友に「大阪についていきたい」と言えず、真友も麻子に「大阪についてきてくれ」と言い出せないことだった。なかなか素直になることができない親子に、人生の選択の時期が迫ってきた。麻子役を中島ひろ子さん、真友役を新人の南乃彩希さん、別れた夫役を岡田義徳さんがそれぞれ演じる。監督は黒沢清、瀬々敬久作品などで助監督を務め、本作が監督デビュー作となる長尾元さんが務める。
上映後、中島ひろ子さん、長尾元監督、棚橋公子プロデューサーが登壇。満員立ち見状態を受け、緊張の面持ちの中、舞台挨拶が開催された。
2年前、長尾さんは助監督を担い、棚橋さんがスタイリスト、中島さんが出演している作品があり、2年後に映画を撮ろうと盛り上がった。作風について、棚橋さんから、シングルマザーに関する話とレザークラフトをする主婦に関する話を挙げられ、長尾さんなりに考えていく。当時、トビー・フーパー監督やジョージ・A・ロメロ監督が亡くなり「僕も何かと考えながら台本を書いていく中で、父方の祖母が亡くなり、本作の話が見えてきました」と振り返る。
レザークラフトについて、中島さん自身は全くの未経験だったが、撮影までに修行しており、劇中で持っていたバックも作り上げた。お客さんからの拍手も受け、長尾監督は大いに感謝している。本作では、頼りない母親を演じた中島さんだが「二十歳の時から乳飲み子を抱えたお母さん役ばかりでした。実際には子供はいませんが、どれだけお母さん役をやったことか」と感慨深い。演じた麻子さんについて「どういう生き方をしても、人はそれぞれ個性があっていいんだ」と受けとめ「当時46歳だった私の気持ちが掻き立てられ、背中を押された。それでいいんだ、と思わせてもらった」とお気に入り。「等身大の私を演じたらいいのかな」と考え、棚橋さんの親子をみたり、監督のお母様の話を聞いたりしながら、参考にしていった。これを受け、長尾監督は「棚橋さんは、シングルマザーのご家庭で、真友と同じ歳の娘さんがいます。ウチの親については盛りだくさんなので」とフォローしていく。中島さんは「監督のお母さんはレザークラフトをやっている素敵な方。監督は、お母さん思いなんだなぁ」と素直な気持ちを語った。
あったかい空気感に包まれた本作では、なんとも可愛らしいトラブルが起こっていく。中島さん自身も親子の対立シーンでは、思わずクスッと笑ってしまう。娘役の南乃彩希さんについて「彼女は上手いんですよね」と称えると、長尾監督も「天才でしたからね」と絶賛。中島さんは「監督が細かいところまで教えているが、何を演じてもパッと考えて演じられてしまう。リラックスして演じてもらった」と才能ある女優との共演による醍醐味を味わった。なお、長尾監督自身も出演しており「撮られる側の気持ちも分かり、吐きそうでした」と告白。監督の姿を見て、棚橋さんは「自分で書いた台本なのに、ずっと台本を持って台詞の暗記に勤しんでいました」と明かすと、長尾監督は「しっかり覚えたのに、現場に行ったら全部忘れた」と漏らさざるを得ない。撮影中の監督について、中島さんは「険しい顔をして見入っていましたよね」と振り返ると、長尾監督は「モニターがなくても、愉快に楽しく撮影したじゃないですか」と普段とは異なる環境でも気丈に振舞ったことに念を押す。
様々な場所で撮影が行われている本作だが、長尾監督は「脚本に温泉と書くと、棚橋さんがエラいことになって…」と慌てふためき「温泉を見つけるだけでも…」と驚くばかり。これを受け、棚橋さんは「
自由に発想して頂いて、イイ話が出来ると思いますけども…」と前置きしながらも「初プロデューサーでしたので、どう対処していいか大変でした」と困惑した。40年間もスタイリストとして業界に携わってきており「自主映画の予算の少なさを見せないためにも、日替わりで衣装を変えてもらっている」と出来得る限り努力している。なお、本作は11日半の期間で撮影しており、中島さんは「温泉での撮影は、朝5時に集合し伊香保に行って、着いた途端に撮影を始めて、寝たのが2,3時。スタッフの方が寝れていないですよ」と労っていく。だが、長尾監督は「でも毎日呑んでましたけどね」と自ら明かした。
最後に、棚橋さんは「誰の心にも寄り添えるような様々な人の様々な心を動かせるような作品になっています」と改めて推していく。長尾監督は「お一人お一人の感想を聞きたいぐらいの心持ちです」と現在の心境を話す。中島さんは、関西のノリに舞い上がりながら「大阪は楽しくて、本当に好きなので、大阪弁が聞こえてくると血が騒ぎます」と話しながら、感謝の気持ちを込めて、舞台挨拶を締め括った。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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