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信じられないほどの悲惨さをリアルに表現した…『太陽がほしい』班忠義監督に聞く!

2019年8月2日

中国における旧日本軍の性暴力について、中国人被害女性や住民、元日本兵らの証言を記録したドキュメンタリー『太陽がほしい』が、8月3日(土)より関西の劇場で公開される。今回、班忠義監督にインタビューを行った。

 

映画『太陽がほしい』は、『王母鄭氏 チョンおばさんのクニ』『ガイサンシーとその姉妹たち』など慰安婦問題をテーマにした作品に取り組んできた班忠義監督によるドキュメンタリー。1992年、東京で開催された「日本の戦後補償に関する国際公聴会」での中国人女性・万愛花さんの証言で明らかになった中国人「性暴力被害者」の存在。当時、留学生として日本で学んでいた班忠義はこの証言に衝撃を受け、万愛花さんのもとを訪ねる。以降、班忠義は中国人被害女性の支援活動を続けている。本作では被害女性たちの多くが強烈な身体的、精神的暴力によって体調や精神に異常をきたし、一切の補償を受けられずにいることが彼女たちの実際の声によって語られるほか、元日本兵とその手下だったという中国人男性たちの証言も紹介。被害女性たちの存在と証言を映像作品として記録することで、彼女たちの尊厳に光をあてていく。

 

本作を従軍慰安婦に関するドキュメンタリーだと思って観ると、全く違うことに驚かされてしまう。班監督は「近代社会では記号化されてしまった言葉を以て、何かを決めると、概念が先行する」と危惧している。性暴力被害でありながら「慰安婦という名前を付けられて一つのカテゴリーに無理くりに纏めてしまうのは、当時の歴史、戦争の実態の把握を妨げている」とミスリードになりかねない。調査したことに基づき「この女性がなぜ慰安婦になったのは最初は分からなかった。しかも、辺鄙な場所になぜ慰安所をつくるのか」と、監督の視点を通して本作を撮っている。

 

日本と中国の架け橋となる役目があった班監督は「調べる責務がある」と感じて、戦後50年となる1995年に現場に伺った。街の中心部に軍本部の大隊レベル向け慰安所が1ヶ所あったが、民家の中にある場合、慰安所ではない。軍内部では、捕まえて監禁する強姦所と呼ばれていた。付近には同様の場所が20ヶ所以上あるが、無法地帯なので、日本軍幹部は知らない。若い日本兵は拉致・強姦など何でもやっている可能性があり「これが中国が受けた戦争被害の一つ」だと改めて認識していく。これは中国内では何処にでも起こっていた事実であり、慰安所以外は性暴力被害を受けていた。このような戦争被害は通常は判明せず、政府機関を通さないと調べれられない。留学生として支援を受けながら細々と調査し続けた班監督は、映画化には5年かかったが「事件全体では氷山の一角。戦時下の性暴力事件は
他の占領した国においても同様に起きていた」と語る。慰安婦は建前の法律があったが「強姦所には一切の規則がない。被害を受けた女性はすべて記憶に残っていた」と説く。

 

1995年に編集を始めるにあたり「映像記録が膨大であるからこそ、分かりやすく、ストーリーの筋が通したい」と方針を決め、事実を理解してもらうようにした。最初の完全版では、各国の慰安婦を理解するために2時間47分に及ぶ大作となる。次に、普及版として、中国の性暴力事件をまとめた上で、今回の劇場版は、起承転結がある分かりやすい要素を込めたストーリーを以て制作。班監督は「信じられないほどの悲惨さをリアルに表現したので、被害女性の運命に同情できる。負けないで戦う真意を訴える精神に頭が上がらない」と述べ、日本の思想が混沌としている社会を表現できた、と満足している。その後、各国の映画祭に出品し、大手映画会社が制作した大作映画と比べて恥ずかしくなりながらも「この内容には歴史的価値があり普遍的な内容として、審査員に評価頂いた」と実感した。

 

現在までに撮り貯めた映像は歴史的事実として価値があると班監督は考えているが、作品化するには難しいと感じている。だが、問題を整理して世の中に訴えたい気持ちがあり「現在も派生している日中間の問題も取り組みたい。迷ってしまうこともあるが、次に向けて作っていきたい」と現在も志高く挑んでいた。

 

映画『太陽がほしい』は、8月3日(土)から、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。また、京都・九条の京都みなみ会館、神戸・元町の元町映画館でも公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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