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今映画館で観てほしい映画の魅力が詰まっている…!『よこがお』筒井真理子さんと深田晃司監督を迎え舞台挨拶開催!

2019年7月28日

終末期医療の現場で看護師として働く女性が、とある出来事をきっかけに不条理な現実と直面する様を描く『よこがお』が全国の劇場で公開中。7月28日(日)には、大阪・梅田のテアトル梅田に、筒井真理子さんと深田晃司監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『よこがお』は、不条理な現実に巻き込まれたひとりの善良な女性の絶望と希望を描いたサスペンス。周囲からの信頼も厚い訪問看護師の市子は、1年ほど前から看護に通っている大石家の長女・基子に、介護福祉士になるための勉強を見てやっていた。ニートだった基子は気の許せる唯一無二の存在として市子を密かに慕っていたが、基子から市子への思いは憧れ以上の感情へと変化していった。ある日、基子の妹・サキが失踪する。1週間後にサキは無事に保護されるが、誘拐犯として逮捕されたのは意外な人物だった。この誘拐事件への関与を疑われたことを契機に市子の日常は一変。これまで築きあげてきた生活が崩壊した市子は、理不尽な状況へと追い込まれていく。
カンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を受賞した『淵に立つ』の深田晃司監督が、同作でもタッグを組んだ筒井真理子さんを再び主演に迎えるほか、市川実日子さん、池松壮亮さん、吹越満さんらが脇を固める。

 

上映後、筒井真理子さんと深田晃司監督が登壇。劇場公開を迎え、筒井さんは多くのお客様からの気持ちを受け取り、感謝している。深田監督も、お客様の感想や反応を聞いて「今やっと映画が生まれた」と感じていた。

 

劇団「第三舞台」の一員として活躍していた筒井さんは、大阪公演として、かつての近鉄劇場によく来ており「お気に入りのたこ焼き屋さんには毎回来ていました」と大阪に親しみがある。深田監督にとって、大阪は思い入れのある場所。初めての特集上映は2011年の大阪アジアン映画祭で組まれており「大阪は自分にとって馴染みのある場所。初めて賞を貰ったのがシネ・ドライブ2010でした」と所縁を感じている。

 

精神的にも大変な市子を演じた筒井さんは台本を読んだ時に「監督はどこまで市子を虐めるのかな」と心配していた。”犬”のシーンが出て来た時に、おもしろいと感じたが「これ私がやるんだな。どうするんだろ?」と肉体的にも追い込まれていく。湖に入っていくシーンの撮影については「極寒で、朝にパラパラと雪が舞う日だったんです。途中でドシャ降りにもなっていく中で氷点下の湖に入ったんです」と告白。まさに体を張った演技だが「何度か入ったり出たりして、体が冷えてはいけないので、ロケバスの中で養生してもらっていた。スタッフはびしょ濡れになっても傘をさしたり車で暖を取ったりしない」と気づき、涙が出そうになり「この映画は愛で出来ている」と実感した。

 

今作は、脚本が出来上がる前に筒井さんにオファーし、承諾して頂いている。深田監督は『淵に立つ』制作時に「またやりたいね」とプロデューサーと話していた中で、出演をOKして頂いたので、感慨深い。「映画は小説や漫画とは違って集団創作。脚本で難しい役を書くとなると、俳優が演じられるか心配してしまい、ブレーキがかかってしまう」と解説した上で「今回、筒井さんに演じてもらえるなら大丈夫と考え、演技力にブレーキをかけていない」と明かす。「”犬”や”湖”のシーンも筒井さんなら出来る」と無茶ぶりしたが、楽しい脚本作りとなった。筒井さんは”犬”のシーンの撮影にあたり「どなたかに『女優としては世界初のアクションだよね』と云われて、その気にさせられてしまいました」と打ち明ける。四足歩行指導の方にコーチをして頂いたが「簡単そうに見えるんですが、体中が痛かった。誰にも分からないだろうなと思ってずっと我慢していました」と漏らした。なお、トレーナーの方が本番中に来て下さって実演して頂いたが「痛いと云っていた。私も泣き言を言ってもいいかな」とホッとしている。深田監督は「映画監督は、自分に出来ないことを役者にやらせる仕事なので、しょうがないかな」と言わざるを得ないが、筒井さんは「台本がいつも素晴らしいので、これはやろうとモチベーションが上がります」と応じていく。作品を通して女優と監督の信頼関係は出来上がっている。

 

なお、本作は、第72回ロカルノ国際映画祭の国際コンペティション部門へ出品が発表された。8月7日から開催の映画祭では、10日にプレミア上映を予定している。筒井さんは「意気込みたいのですが、これから頑張れることはないのですが…」と本音を漏らしながらも「素晴らしい外国映画を観ると、すぐ隣にいる人の話だと感じます。この映画もそんな風に届いたらいいな」と楽しみにしていた。深田監督は「ロカルノ国際映画祭は、品質重視で格の高い映画祭。内容重視で良い作品を選ぶ映画祭という印象があり、信頼している同世代の監督達が世界の映画と向き合っている」と話し、この機会を光栄に感じ、楽しみにしている。

 

最後に、筒井さんは「まだまだお一人お一人のお話を座談会を開いてゆっくりと聞きたい。皆さんの声をお聞かせください」と感想を求めていく。深田監督は、映画が完成し上映が始まった現在、2つのことを考えている。一つは「自分が思っていた以上にこの映画は今の時代にフィットしているのかもしれない」ということ。「様々な事件が起きてニュースが更新されて物凄い速さで流れていく。その中で様々な人が関わっていて、事件一つ一つが自分の作りたい映画と重なって見えるので、今観てほしい映画」だと改めて解説していく。もう一つは、映画館で上映するために音に拘っていること。「最後に流れる音は、映画館で聞くことを前提にしてギリギリのボリュームまで上げて音を設計している。DVDだと再現できない。ご家庭の環境だと間違いなく隣の家から苦情が来ます」と笑いながら話しながらも、今映画館で観てほしい映画として、多くのお客様に呼びかけていた。

 

映画『よこがお』は、全国の劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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