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こんな家族のかたちがあってもいいんだぁ…『沈没家族 劇場版』加納土監督を迎えトークショー開催!

2019年5月18日

加納土監督が大学の卒業制作として発表した、監督の実母が始めたユニークな共同保育“沈没家族“を紐解き、“家族のカタチ“を見つめ直すドキュメンタリー『沈没家族 劇場版』が、5月18日(土)より関西の劇場でも公開。初日には、加納土監督を迎え、トークショーが開催された。

 

映画『沈没家族 劇場版』は、1990年代半ばに共同保育で幼少期を送った加納土監督が、自身の生まれ育った場所での生活を振り返るドキュメンタリー。加納土の母親はシングルマザーのため、自分が家にいない間、幼い息子を代わりに保育してくれる人を募集し、彼女が撒いたビラを見て集まった大人たちによって共同保育がスタートする。子どもたちの面倒を見ながら共同生活を送る保育人たち。この取り組みは「沈没家族」と名づけられた。大学生になった加納土は、自身が育った「沈没家族」、そして家族とは何なのかとの思いから、かつて一緒に生活した人たちをたどる。母の思い、そして不在だった父の姿を追いかける中で、家族の形を見つめなおしていく。加納監督が武蔵大学在学中の卒業制作として発表したドキュメンタリー映画を劇場版として再編集等を施して公開。

 

上映後、加納土監督が登壇。和やかな雰囲気の中でトークショーが繰り広げられた。

 

大学入学直後の加納監督は、沈没家族に対して興味や関心もなく覚えてもいなかった。今から5年前に穂子さんが沈没同窓会を企画。当時関わっていた人達や一緒に育った子達が集まって宴会が開催された。全然顔を覚えておらず「大人達が笑いながら当時の出来事を話していた。僕は苦笑いするしかない」とモヤモヤするしかない。だが「今の自分があるのはこの人たちのおかげ。これを知らないのは嫌だな」と気づいていく。そこで、大学の卒業制作としてドキュメンタリー制作に至る。

 

沈没家族に対してぼんやりとした記憶しかなく、客観的に見ると「共同保育による新しい家族の形を提示する運動」と受けとめていた。だが、1人1人に会っていくと「皆が自分のために楽しく取り組み、救われている。保育してもらうシングルマザーの親側もそうじゃなければやっていけない。個人的なサバイブするための理由があったった」と気づいていく。「集まってきた人達もコンセプトに賛同するという気持ちより、行けば子どもと遊べ、大人とも交流できることが大きかった。目の前にある楽しさや生きやすさを目指して1つずつやっている集まりだった」と沈没家族に対する捉え方が変化した。

 

撮影を終えて、穂子さんに対する尊敬の念が芽生えており「カッコいいな」と素直に感じている。「頼る力や頼られる力がありますね。なんだろう、あの巻き込み力は。自分には出来ない」と悔しい気持ちしかない。「人を巻き込めるようになりたい」と思い、映画の製作を通して「大学の卒業制作は僕一人で始めた。劇場公開にあたり、劇場や配給宣伝の方や応援してくれる人も含めて、巻き込めているので、穂子さんに勝ちたいな」と果敢に挑んでいる。

 

卒業制作版と劇場版では、ナレーションの有無も含め、編集や構成も違う。特に、劇場版のためにMONO NO AWAREがエンディングテーマを作り、Vo.の玉置周啓さんが挿入歌2曲を映画のために書き下ろしていることを加納監督は強調する。玉置さんとは、八丈島の高校の先輩であり。ファミレスで直談判した。「彼は映画卒業制作版を観てくれていて、おもしろい映画だから作りたいと云ってくれた。エンディングテーマの『A・I・A・O・U』という良い曲を作ってくれた。映画の物語を強めるだけでなく、曲だけでも自分の家族や育ってきた過程を思い起こさせるような曲だなぁ」と気に入っている。

 

なお、本作で特に印象に残る存在が、加納監督のお父さんだ。加納監督は、当時の沈没家族や穂子さんとの関係を父親と話したことがなく、監督自身から聞いたこともなかった。撮影当時を振り返り「迫力あるシーンを撮っている自覚がなかった。僕自身もパニック状態だった」と物語る。出来上がった作品を観て「彼によって、僕の感情も出ている。言葉選びが俳優並み」だと称えた。

 

本作を通して、加納監督は「沈没家族が絶対唯一の正しい選択だと云いたいわけではない。少なくとも、僕にとっては、そこで育ったことが有難かったし、感謝を伝えている」と主張する。そこで「これがあってもいんだ、と選択肢の一つとして考えてもらえると、肩の荷が下りる人もいる」と提示していく。多様な意見があることを鑑みながら「沈没家族のような仕組みがあることを知ってほしい。勿論、理解できず受け入れられない人もいると思います。同時に、希望を持つ人もいると思います」と踏まえた上で「緩やかに自分の家族について人に話せるようになると、気持ちが楽になる。この映画を通して話したくなるきっかけになれば嬉しい」と思いを込め、トークショーは締め括られた。

 

映画『沈没家族 劇場版』は、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。また、7月20日(土)より、京都・出町柳の出町座、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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