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樋野先生は、車寅次郎のような人…!『がんと生きる 言葉の処方箋』野澤知之監督に聞く!

2019年6月7日

全国にあるがん哲学外来“メディカル・カフェ“で講演を続けている、順天堂大学医学部・樋野興夫教授。氏の考え方をもとに、がんや病気に悩むすべての人にメッセージを贈るドキュメンタリー『がんと生きる 言葉の処方箋』が関西の劇場でも6月8日(土)より公開される。今回、野澤知之監督にインタビューを行った。

 

映画『がんと生きる 言葉の処方箋』は、がん患者の苦しみを言葉で癒す「言葉の処方箋」とも言われる「がん哲学外来」と、そこから発展して生まれた「がん哲学外来メディカル・カフェ」をテーマに撮り上げたドキュメンタリー。順天堂大学医学部の樋野興夫教授が、医学と哲学を結びつけて提唱した「がん哲学外来」。そして、そこから発展し、患者たちが対話して悩みを分かち合い、病と向き合う場として生まれた交流の場「メディカル・カフェ」。全国のカフェを回って講演する樋野教授や、それぞれにカフェを開設し、がんにかかっても明るく元気に生きる人々たちの姿を通して、がんとともに生きることへの勇気や人生の希望を見いだしていく。監督は、在日一世を描いた『HARUKO ハルコ』やハンセン病療養所で暮らす夫婦を追った『61ha 絆』などを手がけ、自身もがんを患った経験のある野澤和之さん。

 

2016年の春、野澤監督は、本作の企画プロデューサーである岡田さんから「おもしろそうな人がいるので、会ってみないか」と誘われ、樋野先生を紹介された。その後、樋野先生の講演会やがん哲学外来カフェに足を運んでいくうちに興味深く感じていく。本作を撮るにあたり、樋野先生は喜怒哀楽を表現する方ではないので、直接カメラを向けず、患者さんの視点を重点にした。結果的に、2016年から3年間かけて400時間の撮影に及んでいく。

 

本作の編集にあたり、樋野先生による言葉の処方箋や、がん哲学を実践する人達を探していった。がん患者にカメラを向けるのは大変で「特定の人しか登場しないので、説得しながら熟慮の上で選んでいた。構成を考え、難しくも迷いながら撮っていった」と振り返る。最終的に、本作の冒頭は、がんへの不安をテーマにし、後半は実践者を捉えていった。

 

樋野先生について、野澤監督は「臨床医ではなく病理医である。ひたすら顕微鏡でがん細胞を見続け、多くのご遺体を看ており、特殊な視点を持っている」と分析。「臨床医にならなかった理由は、島根県の田舎出身で、コミュニケーションに苦労し、病理医を選んだと仰っていた。結果的に現在は患者を助けているのは興味深い」と受けとめた。

 

樋野先生による「がん哲学外来」は、先生との30分程度の面談が中心で「皆が笑顔になって元気になっていく。不思議ですね。樋野先生にしか出来ない」と野澤監督も驚くばかり。樋野先生と3年間付き合ってきた中で「樋野先生は、『男はつらいよ』の車寅次郎のような人。車寅次郎はどの作品でもマドンナに愛される。樋野先生は本気で相手の話を聞いている。それが相手に伝わる。寅さんは誰に対しても本気なので、皆が慕っている」と独自の視点で説く。「決してカウンセリングではない、アドバイスもしていない」とふまえた上で「先生はいつもこう云っている。『何を言うか、ではなく、誰が言うか。to doではなくto be。やることではなく、存在することが大事」と伝えた。今では「先生がいなくなったら、後を継ぐ人はいない、時代の終焉」と危惧するまで、信頼を寄せている。

 

映画『がんと生きる 言葉の処方箋』は、6月8日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場、6月15日(土)より、京都・烏丸の京都シネマで公開。また、8月3日(土)より、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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