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心の蓋を開けられて良かった…『こはく』井浦新さん、横尾初喜監督、小関道幸プロデューサーを迎え舞台挨拶開催!

2019年7月12日

長崎県でガラス細工工場を経営する弟と、無職で虚言癖を持つ兄のふたりが、ある時から生き別れの父を捜し、家族と愛を模索する様を描く『こはく』が関西の劇場でも7月12日(金)より公開。初日には、大阪・梅田のテアトル梅田に、井浦新さん、横尾初喜監督、小関道幸プロデューサーを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『こはく』は、兄弟が幼いころに突然姿を消した父を長崎の町で必死に捜し歩く姿を描いたヒューマンドラマ。長崎県に暮らす亮太は、幼いころに別れた父が営んでいたガラス細工の工場を受け継ぎ、なんとか毎日を送っていた。しかし、亮太自身も父と同じように離婚を経験し、子どもたちと会うことがかなわずにいた。ある日、亮太は定職に就くことなくブラブラした生活を送る兄の章一から、町で偶然父の姿を見かけたと告げられる。しかし、虚言癖がある兄の言葉を亮太はにわかに信じることができなかった。そんな折に現在の妻である友里恵から「お父さんになる自信、ある?」と妊娠を告げられた亮太は、自分が父のいない過去を引きずったまま生きていることに気づかされる…
本作では、井浦新さんが弟・亮太役、芸人のアキラ100%が本名の「大橋彰」名義で出演し兄・章一役をそれぞれ演じる。『ゆらり』の横尾初喜監督が手がけ、横尾監督の幼少期の実体験をベースに『きらきら眼鏡』の守口悠介さんが脚本を執筆した。

 

上映後、井浦新さん、横尾初喜監督、小関道幸プロデューサーが登壇。満員立ち見の状況の中で質問が飛び交う賑やかな時間となった。

 

横尾監督は、大学在学中、映像制作に関わりたくて、講師で来られていた小関さんに相談し、修行として大変な現場に放り込まれた。業界に入ったきっかけが小関さんであり、横尾監督は「僕は母子家庭で育ったので、お父さんのような存在として見守って頂いている方です」と親しい間柄であることを説明する。

 

次男役を演じた井浦さんだが、そもそもは長男として育っており、演じた役とは全く違った。個人的には「お兄さんの苦しみが全部伝わってくる」と章一に共感している。今作への出演にあたり「僕が弟だったら、こうしたいことを全部表現している。自分が弟だったら兄ちゃんにこんな風に甘えるだろうな。家族の中での過ごし方や距離感を理想へと近づけていった」と役作りを行った。演じた亮太について「優しいが、優しさが弱点でもあり、弱さや未熟さに繋がってくる。立派な人に描きたくなかった。ちゃんとしてると自分では思っているけど、周りから見たら隙だらけの駄目で未熟な男を描きたかった」と考えており「基本的には、無意識に弟である2週間を楽しもうと思ってやっていました」と振り返る。

 

アキラ100%こと大橋彰さんとの兄弟関係がある役のため、井浦さんは撮影期間中に大橋さんが悩みながら演技していたと気にかけていた。「物凄い苦しみながら悩みながら、章一という役を演じている姿を真横で見ていた」と振り返りながら、苦しんで生まれてきた演技に対し、不器用で苦しみながらも生きてきた兄ちゃん像を愛おしく感じていく。兄役を演じた共演相手として「僕は安心して甘えられる」と感じており「もっと不器用に兄ちゃんをやってもらいたい。実際は同い年ですが、兄ちゃんいじりが面白くなっちゃうぐらい精神的に甘えていける関係に直ぐなりました」と称えた。

 

横尾監督の出身地である長崎県の地元で撮影された本作について、井浦さんは路地が印象に残っており「長崎は坂の多い街ですが、アリの巣のように、不正確に作られた路地が沢山あるんです。ワクワクもしました」とお気に入り。横尾監督にとっては、幼少期に遊んでいた場所でもあり「自分にとっては全てが原風景であり、印象に残る場所です」と語った。また、回想シーンでは「唯一僕がお父さんに対して覚えている記憶をオマージュして作らせてもらっています。本当にそのシーンは強烈に覚えています。兄はこの事実を抱えながら生きてきた」と実感していく。井浦さんは「お兄さんは理解した上で行動していたんでしょうね。兄ちゃんは変わった雰囲気がありますが、逆に作っているような雰囲気がありました」と述べ「本当は冷静で、どうやったら家族が幸せに暮らしていけるのか、頭で考えちゃうタイプの不器用な兄ちゃんなんだろうな」と想像した。

 

順撮りとなった本作は、クライマックスシーンに向けて現場にいる人達皆が総力を結集していく。撮り方も違っており、テストなしの一発本番となったが、井浦さんは「実験的なことをした上でのシーンだったので、あのシーンは特別」と太鼓判を押す。なお、初めて監督をしているシーンがある、と告白。「僕がメガホンを持って、横尾監督が出演者となっているシーンが1シーンだけあるので、僕は思い入れがあります」と話すので、ぜひ注目して発見してほしい。小関さんは「家庭のぬくもりがある、遠藤久美子さんと井浦新さんが肉じゃがを食べるシーンが一番好き」と絶賛。35回も観ており「井浦さんの『肉じゃが、うまかぁ』には涙がボロボロと出てくる。家庭のあたたかさは肉じゃがなんですよ」と力説する。今作での横尾監督は、父親を知らない状態で撮影に臨んでおり「井浦さんとアキラさんと一緒に旅をしながらお父さんを探していたような気がする」と振り返った。

 

本作のタイトルについて、企画段階では『底流』という仮タイトルだったと判明。横尾監督は「暗いなぁ」と思いながら、長崎でシナリオハンティングをした際、べっこう工場を訪れ、琥珀色を見てあたたかみを感じた。「琥珀は元々化石で、眠って固まってしまった思いという意味合いがある。これが父親への思いとするならば、ピッタリだな」と直感する。

 

横尾監督は、父親がいない家族で育ち、結婚に一度失敗した。その時、父親を覚えておらず「子供も平気だろう」と無意識に感じ、離婚している。その後、兄と話す機会があり、兄が父について「俺は無茶苦茶恨んでいる」と聞き、衝撃だった。「平気だろうと思って離婚した私の子供は恨んでいるんだなと分かった。そのタイミングで現在の妻との子供が出来るタイミングに向き合わないといけないと思った」と告白し「開けたくない心の蓋が沢山あり大変でした。現場では井浦さんから”開けなさい”という気持ちで毎日話させて頂いた」と明かす。現在では「開けられて良かった。今、次のステップは何処に向かうのか」と楽しみにしている。最後に「本作は、優しさをテーマに作れないかと思い、企画しました。覚悟を持った優しさは強さが伴わないいけないと皆さんに教えて頂いた。それを以て次に進めます」と述べ「作品を通して、家族の大事さや優しさの多様性を学ばせて頂きました。様々な角度から家族を観れる映画に出来ました」と感謝を伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『こはく』は、大阪・梅田のテアトル梅田で上映中。また、「7月20日(土)より、京都・烏丸の京都シネマ、7月26日(金)より、神戸・三宮の神戸国際松竹で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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