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人生には様々な選択肢がある!と顕信さんが教えてくれた…『ずぶぬれて犬ころ』本田孝義監督に聞く!

2019年7月12日

俳句ブームの現在、密かに脚光を浴びる早世の俳人、住宅顕信に焦点をあてた人間ドラマ『ずぶぬれて犬ころ』が、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで、7月13日(土)より公開される。今回、本田孝義監督にインタビューを行った。

 

映画『ずぶぬれて犬ころ』は、25歳でこの世を去った俳人・住宅顕信(すみたくけんしん)の俳句に生きた人生を、生きづらさを感じている現代の中学生に重ね合わせて描いていく作品。2017年、放課後の校内で見回りをしていた師岡敬教頭は、掃除用具ロッカーに閉じ込められていた生徒・小堀明彦を発見する。散らかっていたゴミの中に見つけた紙には「予定は決定ではなく未定である」と記されていた。その言葉は、かつて師岡が出会った少年・住宅春美、後の住宅顕信が書いたものだった。住宅春美が高校には進学せず、調理師学校に行くことを聞かされてから数年後、師岡の元に住宅春美から一通のハガキが届く。そこには春美が仕事を辞めて浄土真宗の僧侶になり、法名を顕信としたことが記されていた。住宅顕信が自宅に作った「無量寿庵」を訪れた師岡は、顕信から五七五にとらわれない自由律俳句に凝っていることを聞かされる…

 

住宅顕信さんは、2002年に全国ブームになったことがあり、その際に知った方が岡山では多い。本田監督の印象としては「時代が一回りして、特に若い方は知らない人が多い」と受けとめている。監督自身は、若い頃の住宅さんの生き方には型破りさを感じていた。

 

本田監督は、これまでにコンスタントにドキュメンタリーを撮ってきながらも、2014年の春、45歳の頃に現実的な問題に直面し、行き詰まりを感じる。「これからどう生きていけばいいのだろう?映画なんか辞めちまえ」という気持ちになってしまった。だが、辞めようと思った時に『ずぶぬれて犬ころ』を思い出す。「この句は顕信さんが闘病している自分を犬に仮託し、自虐的に自身を詠んでいる」と気づき「この句を詠んだ住宅顕信という人物はどういう人だったんだろう」と調べ始め、今作を作るきっかけになった。住宅顕信さんが発表したのは281句。句集を出す時には取捨選択されている中で「顕信さん直筆の色紙が残っている。息子さんからデータを頂いたが、僕が知らない句があった」と発見。「言葉遣いも違っており、捨てた句はある程度あるんだろうな」と推測する。

 

本作は、本田監督にとって初めての劇映画。スタッフには中学と高校の同級生がおり「各々がその世界で活躍している人間で助かった。奇跡としか思えない様々な出会いがあった」と感激した。キャスティングは、仁科貴さんと田中美里さんは決まっていたが、基本的にオーディションによって決定。しかし、主演は、オーディションでは決まらず。最終的に、候補に挙げていた木口健太さんに決まった。

 

なお、本作のストーリーは印象的なエンディングで幕を閉じる。本田監督としては、ポジティブに捉えて撮っており、人生には様々な選択肢がある、という意味を込めた。当初は、住宅顕信さんの伝記映画を撮りたいと思っていたが「現代の出来事を絡めてくるアイデアを提案したのは脚本を担った山口文子さん。しばらく悩んだが最終的に承諾して脚本を書き出して頂いた」と話し、本作の出来上がりに満足している。

 

予告編でも流れるテーマ曲は、”あらかじめ決められた恋人たちへ”の「blast」。本田監督は、”あら恋”が大好きで、前作でも楽曲を使っており、LIVEにもよく行っている。”あら恋”のリーダーである池永正二さんは大阪芸術大学の映画学科出身。「映画に沿うような自己主張しない音楽が良い。手掛けてきた映画音楽はどれも素晴らしい」と絶賛しており、今作では「blast」を使いたかった。監督自身も今作を作る過程で「blast」に励まされている。LIVEで改めて「blast」を体感し「池永さんのピアニカは音数が少なくても、切なかったり強かったりする。あのピアニカの音は、顕信さんや少年の心情と合うんじゃないか」と確信した。

 

映画『ずぶぬれて犬ころ』は、7月13日(土)から、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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