山と対峙する孤独な男描く『山〈モンテ〉』がいよいよ関西の劇場で公開!
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中世後期イタリアに南アルプスの山の麓に暮らす男が、さまざまな受難に直面しながらも、すべての元凶たる山と対峙する姿を幻想的に描く『山〈モンテ〉』が、3月9日(土)より関西の劇場でも公開される。
映画『山〈モンテ〉』は、宗教・自然・人間のすべてと対峙する孤独な男の戦いを描いたドラマ。中世後期のイタリア。南アルプス山麓にある小さな村の外れで暮らすアゴスティーノと妻ニーナ、息子ジョバンニ。壁のようにそびえる山に日光を遮られて作物が思うように育たないため村人のほとんどが去って行ったが、アゴスティーノたちは先祖の墓や亡き娘の墓があるこの地を離れられずにいた。アゴスティーノは飢えた家族のためあらゆる手を尽くすが、周辺の村の人々からは異端者として差別され、ついにはそこで暮らすことさえ禁止されて家族は離れ離れになってしまう。神や自然、そして人間からも見棄てられたアゴスティーノは、たったひとりで忌まわしき山と対峙することになり……
本作では、『駆ける少年』や『CUT』などの現代イラン映画界の巨匠アミール・ナデリ監督がイタリアでオールロケを敢行。主演を務めたのは、『バスターズ』のアンドレア・サルトレッティ。。第73回ベネチア国際映画祭で「監督・ばんざい!」賞を受賞。2016年の第17回東京フィルメックス特別招待作品。
映画『山〈モンテ〉』は、3月16日(土)より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォと京都・出町柳の出町座で公開。また、3月23日(土)より、神戸・元町の元町映画館で公開。
人間の業(カルマ)に対峙する男に孤立無援の花は咲くのか…
日本では西島秀俊さん主演『CUT』を手掛けたアミール・ナデリ監督が、これでもか、と重厚な重みを観客に突き付けてくる作品を世に放ってきた。これほどまでに生きていくのが大変な地でも家族が眠る場所から離れようとしなかったアゴスティーノとは、どれ程強い人物なのだろう。翻って弱さしかない人物でもあるが、イエス・キリストのごとく十字架を背負っているようでもある。
監督曰く「これは、黒澤明の精神から生まれた物語だ」と説く。黒澤明監督のどの作品にも通じる箇所がいくつも垣間見えるが、私は、特に原節子さん主演『わが青春に悔なし』の後半部分を見せられているような気分にもなった。ということは、やはり、この主人公は強い人物像として描かれていると分析できる。忌まわしき山は、主人公にとって、観客にとって、どのような意味が備わっているか、その辺りを考えながら、最後まで観てほしい。
- キネ坊主
- 映画ライター
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- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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