父子関係を通して香港社会の問題描く『誰がための日々』がいよいよ関西の劇場で公開!
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介護うつの末に最愛の母親を失った青年の苦悩と心の再生を描く『誰がための日々』が、3月9日(土)より関西の劇場でも公開される。
映画『誰がための日々』は、介護うつの果てに母を亡くした青年の苦悩と希望を描いた香港映画。婚約者のジェニーと家を買い、結婚をして、家族を作る、そんな将来設計を考えていたトンには寝たきりの母親がいた。弟はアメリカに永住し、父はお金を入れるだけで家には寄り付くことはなかった。自身の身体が思うようにならないいらだちから、トンに冷たくあたる母。それでも母を施設に入れたくはなかったトンは会社を辞め、自宅でひとり母の介護にあたっていた。しかし、ギリギリの状況の中、トンはある事件により母を亡くしてしまう。ショックのあまり重いうつ病を患ったトンは精神病院に入院。1年間の治療を経て退院したトンは、父と2人、狭いアパートでの生活をスタートさせる…
本作では、『インファナル・アフェア』シリーズで知られるショーン・ユーとエリック・ツァンが共演。監督は本作が初の長編監督作となるウォン・ジョン。
映画『誰がための日々』は、3月9日(土)より、大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、3月16日(土)より、京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも順次公開予定。
これほどに辛い内容の映画だが、観終わると充実した感情に満たされる、凄まじく圧倒的なドラマ。既に鑑賞した観客の「観た後のこの気持ちを、どう表現してよいかわからない」という感想をよく聞くが、まさにその通り。
2017年の大阪アジアン映画祭で、他の並み居る豪華キャストの大作や、爽快エンタメ作品群を抜き、グランプリを受賞したのが本作。会場で原題「一年無明」のタイトルが読み上げられ、場内が感嘆のどよめきと納得のため息に包まれた瞬間は、今も鮮明な記憶として存在する。
誰かが悪いわけじゃない。介護を必要とする老いた親がいて、その世話に疲れ果て心を深く傷ついてしまった子供がいて、そんな事には関係なくただ怪しげな隣人を迷惑に思う当たり前の住人たちがいて。誰かに悪意があるわけではない。誰もが少しずつ不幸せで、楽ではない生活を送っている香港の市井を捉えた姿が垣間見える。
「この映画で、現代香港の社会問題を学ぶことが出来る」とお勧めしたいが、高いモチベーションで観る必要はない。観終わって「なんだかシンドイ映画だったね。。。」と落ち込んでしまう人のほうが多いはず。それでもきっと、観た者の心には何かが響く。ショーン・ユーとエリック・ツァンからなる『インファナル・アフェア』の別世界線を見ているような絵面なので、香港映画ファンならばそれだけで満足できるのは間違いない。人気キャストの魅力に誘われて、是非観ていただきたい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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