何歳になってもチャレンジできる…!競輪選手として再起をかける元プロ野球選手の姿を描く『ガチ星』江口カン監督を迎え舞台挨拶開催!
競輪発祥の地である福岡県の小倉を舞台に、戦力外通告を受けた元プロ野球選手が、再起を懸けて競輪に挑むさまを描く『ガチ星』が大阪・九条のシネ・ヌーヴォで9月8日(土)より公開された。公開初日には本作を手掛けた江口カン監督を迎えて舞台挨拶が開催された。
映画『ガチ星』は、競輪発祥の地である福岡県小倉を舞台に、競輪選手として再起をかける元プロ野球選手の姿を描く。かつてはプロ野球選手として活躍していたが、8年前に戦力外通告を受け、自堕落な生活を送っている濱島浩司。友人を裏切り、妻や子どもにも捨てられて自暴自棄になっていた濱島は、ひょんなことから競輪選手への道をすすめられる。40歳の濱島はもう一度自分の才能を試すために競輪学校に入学する。しかし、そこで濱島を待っていたのは、教官の苛烈なしごきと、20歳以上も歳の離れた若い生徒たちによるいじめという過酷な現実だった…
今回、大阪・九条のシネ・ヌーヴォでの公開初日、上映前に江口カン監督が登壇。挨拶を行い「福岡・北九州市を皮切りに、新宿を経て、こちらに…」と感慨深い。本作の主人公である濱島について「このだらしなさといったら…」と嘆きながらも「大阪は濱島大量生産地じゃないかな。僕は、大阪の方に観て頂きたいな、と作った時から思っていたので嬉しい。『そうや、濱島、お前が正しい』と言ってほしい」と同意を求めた。
本作は、TVドラマの制作を経て劇場公開となった作品。江口監督は当初から映画として作りたかったが、日本映画界の現状を考えると、ハードルが高過ぎた。誰も相手にしてくれず「映画として作ることを一度は諦めたが、様々な方からの助言や協力があり『TVドラマでいいから形にしたら』と協力頂けた」と振り返る。ドラマ撮影時も「映画としても使えるクオリティのカメラで撮っていた。森川プロデューサーと二人三脚でドラマとして撮り、4回に分けて放送した」と諦めなかった。最終的に、1本の作品として再編集して面白いと感じ「様々な人達にお見せして『これは映画としてやった方が良い』と意見を頂き、なんとかここまで辿り着いた」と感無量の思いだっだ。
主人公の濱島について、江口監督は「破天荒で怪物的だらしなさがある。普通の映画なら、良い感じで進む時でも、調子良くいかない。途中どころか最後までイライラします。でも、そこがおもしろい」と醍醐味を語る。濱島を演じた安部賢一さんはオーディションで選ばれた。脚本の金沢知樹さんと、どういう人が演じたらいいだろうと話し「『有名な方じゃなくても、この主人公に人生を重ね合わせられるような役者さんにやってもらったらどうだ?』と言われ、企画自体がおもしろいので、いいなと思い、東京で募集した」と明かす。40代前後で鳴かず飛ばずの役者を集めたが「40代前後で売れていない理由は確かにある、という人達が物凄く集まり、ここから主演を探すのは難しい」と頭を悩ませた。安部さんは父親が競輪選手で、本人も競輪選手を目指していたことがあり、期待をしていたが「最終的に僕のイメージ通りではなかった」と何度も断念。だが、安部さんも崖っぷちで「『僕にはこれしかないんだ』とホテルの部屋で泣きつかれた。おっさん二人で狭いホテルの部屋の中で、一人は泣いている…承諾するしかない状況になりました」と苦笑いしながら、おもしろく振り返った。主演が決まり、脚本は変えていないが「野球もやっていたが諦め、競輪選手も目指していた。体格も含めてリアリティがある。映画としてリアルを積み重ねるうえで大切だ」と思い直していく。
撮影にあたり、日数も厳しく、ハードな状況だったが、江口監督は「競輪のレースシーンや競輪学校の練習シーンは、しっかり撮りたい。夜中まで撮影が及んだことは何度もあった」と振り返る。あるレースシーンで、阿部さんに猛スピードでこいでもらったが「プロの方と走りながら、タイヤが前の選手のタイヤと引っかかって転びそうになった。『駄目だ…終わった』と思った瞬間、違う選手がぶつかる演技をしながらも支えてくれた」とエピソードを明かす。
48歳の江口監督が初めて撮った映画が本作であるが「『48歳で初監督作品は遅いよ』と業界内では言われるが、僕は年齢は関係ないと思っている。そういう映画なんです」と断言し「こういう声が皆さんのチャレンジや新しい人生を随分邪魔している。”決してそんなことないよ。何歳になってもチャレンジできるよ”というメッセージが描けたかな」と満足している。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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