ウッドフォード氏は凄い野心を持っている稀有な存在!オリンパス事件の真相追った『サムライと愚か者』山本兵衛監督を迎え舞台挨拶開催!
日本有数の大企業オリンパス内で起きた損失隠蔽事件の真相に迫るドキュメンタリー『サムライと愚か者』が関西の劇場で8月11日(土)より公開。公開初日には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で山本兵衛監督を迎えて舞台挨拶が開催された。
映画『サムライと愚か者』は、日本有数の大企業オリンパスが起こした損失隠蔽事件の真相に迫ったドキュメンタリー。2011年、総合情報誌「FACTA」のスクープとイギリス人社長マイケル・ウッドフォード氏の不当解雇をきっかけに、オリンパスが巨額の損失を隠蔽していたことが発覚した。イギリス重大不正捜査局やアメリカ連邦捜査局をも巻き込んだこの事件は世界中のメディアで報道され、日本社会の隠蔽体質が露見することに…
本作は、2015年にBBCで放映された。スクープを掴んだジャーナリストの山口義正さん、内部告発を行った元オリンパス代表のマイケル・ウッドフォード氏、海外メディア報道の火付け役となったFinancial Timesの元記者ジョナサン・ソーブルら当事者のインタビューを中心に構成され、事件の全容と日本社会の隠蔽体質に切り込んでいく。監督の山本兵衛さんは本作で長編デビューを果たした。
上映後に山本兵衛監督が登壇。暑い中、劇場に駆けつけて頂いたお客さんを労いながら挨拶を行った。
本作は、オリンパス事件発覚の1年後、2012年に元松竹の奥山プロデューサーから、一緒に企画をやろうと声をかけてもらい始まる。一番熱心に取り組みたいと言われたのが、オリンパス事件だった。ドキュメンタリーかフィクションでやりたい、と企画を練っていた時、マイケル・ウッドフォード氏が書かれた「解任」が出版される。奥山プロデューサーがこれを読み「これは俺がやるんだ」と思い、話を持ちかけられた。山本監督自身も「当時の事件は何かあったんだなと聞いていたが、詳細は知らなかったので、リサーチさせてもらった。海外で勉強し生活していた経験があり、外国人が日本の社会に入っていくと興味深い部分が見えてくるので、ぜひやらせてください」とお願いする。当時は、マイケル・ウッドフォード氏が来日するタイミング。さっそく撮影を始め、関係者諸々のインタビューを実施。資金集めは大変だったが、海外の映画企画マーケットでプレゼンを行い、最終的にBBCが出資。2015年に作品が完成し、権利問題等を解決し、ようやく公開に至った。
マイケル・ウッドフォード氏について、山本監督は「非常にカリスマ性がある。当時、外国人社長は流行っていたが、彼は違っていた。30年間もオリンパスに勤めた叩き上げだが、リバプール出身の労働階級であり、大学出身でもない。シュエップスの営業マンから伸し上っており、野心がある」と分析。来日時に実際に会い「非常にフレンドリーでユーモアを絶やさず、話しやすい方。インタビューさせてもらい、凄くアグレッシブな方だと感じた。明らかに凄い野心を持っている稀有な存在」だと感じた。なお、現在のウッドフォード氏は、自身の経験を以ってコンサルティング業を営んでいる。撮影当時には「様々な企業から役員就任オファーを頂いたが、企業社会に戻りたくなく断り続けている」と伝えた。また、交通安全のチャリティに情熱を注いでおり、来日時のエピソードも添え「一度情熱を注いだものは放さない。それほどの熱意を持っている」と称える。
なお、現在も訴訟が続いており、完全に事件は終結していない。山本監督は、2012年から2015年にかけて本作を制作したが「当時は、ここまで日本社会に愚か者達が様々なことを引き起こしてくれるとは思わなかった。描いたテーマがタイムリーだったのか全く分からなかったが、今となっては、他業種で様々な問題がここまで表面化するとは…。悲しいかな、これからもっと増えていくのかなと思いつつ、このタイミングで公開されてよかった」と、現在の日本を憂いながらも、今作の公開を喜んだ。
映画『サムライと愚か者』は、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で公開中。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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