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好きなら素直に好きって言おう!『ウィッチ・フウィッチ』酒井麻衣監督と辻凪子さんを迎えてトークイベント開催!

2018年5月26日

彼氏に一途な大学生の魔女と彼女の恋人である浮気性の狼男の姿を描くファンタジーラブコメディ『ウィッチ・フウィッチ』が関西の劇場で公開中。5月26日(土)には、大阪・十三の第七藝術劇場で酒井麻衣監督と辻凪子さんを迎えてトークイベントが開催された。

 

映画『ウィッチ・フウィッチ』は、ユースメディア「VICE」による「ケータイで撮る」映画プロジェクト第2弾で、「はらはらなのか。」の酒井麻衣監督がスマートフォンで撮影したファンタジックなラブコメディ。大学の芸術学部音楽科に通うイチゴは一見普通の女の子だが、実は先祖は遊郭の花魁で、男を虜にして魔力を得る「魔女」の家系だった。一人前の魔女は多くの男を手玉に取らなくてはならないのに、イチゴは1人の男を愛してしまったばかりか、その男さえ虜にすることができない。しかも彼女の家には、「愛している人とキスすると魔法を失う」という掟まであった。そんなイチゴが愛する男子学生ジンは狼族の家系で、満月や血を見ると獣化してしまう。根っからの女好きで浮気性なジンを虜にするべく奮闘するイチゴだったが……

 

上映後に酒井麻衣監督と辻凪子さんが登壇。大阪での公開ということもあり2人はその嬉しさと共にご挨拶。本作は、VICE MEDIA JAPANによるスマートフォンを用いた映画製作企画の第2弾。第1弾の『ヘドローバ』を撮った『全員死刑』の小林勇貴監督から推薦を請けた。また、ある日、西村喜廣さんから突然facebook電話があり、スマートフォンで映画を撮ることに興味ないかと誘わる。企画を求められ一晩で概要を書き提出し、内容を気に入られVICEに企画書を持ち込み製作に至った。

 

小林勇貴監督はスマートフォンを縦横無尽に動かしリアルに撮影したが、酒井監督は「違う手法として、スマートフォンでも、こんな映像が撮れることを証明していった。フィルム調でカラコレ(カラーコレクション、映像の色彩補正)を殆どしていない」と手法を解説。これを受け、辻さんは「映画用カメラよりスマートフォンの方が、カメラを気にせず自然に演技できる。役者にとっては有り難い」と感謝している。

 

製作にあたり、酒井監督は卒業した京都造形芸術大学のコネクションをフル活用したが「予算とスピード感が重要。10月に企画起ち上げ、12月に撮影し2月には公開だったので、東京で正規な手段でやると負け戦。大学内で学生達と一緒にやれば勝算はある」と見込んだ。監督自身が北白川派プロジェクトで林海象監督の助っ人演出部として助監督を担ってきており「林監督の背中を見て、多様な撮り方を教わった。学生らと一緒に作りながら、スマートフォンで校内で撮れることを背中で見せたかった」と後輩への思いもある。その姿を見た辻さんは「酒井さんが悩んでいるところを見たことがなく、いつもスパッと決めている。映画に魔法をかけたようだ」と捉えた。酒井監督は辻さんが一番緊張していると感じ「”用意スタート!”と声を掛けず、耳元で”ショートコント〇〇”と囁いた。殻が破けて凪子ワールドを展開できた」と、役者への気遣いも行いながら撮影を遂行する。今作で初めて辻さんと現場が一緒になったが「辻さんは、スイッチが入ったら、アドリブが効きおもしろいシーンが出来上がり。現場を任せられる女優。そんな女優さんは滅多にいない」と貴重な才能だと太鼓判を押す。

 

酒井監督は、現実に起こっている出来事を比喩表現で描くことを好む。グリム童話に影響を受けたことを挙げ「各地方の伝説や言い伝えを本にまとめたのがグリム童話。現在なら、園子温監督が実際に遭った映画を基に『冷たい熱帯魚』を撮ったようなもの。事実を比喩表現でエンターテインメントに昇華し、本当に言いたいことは隠しつつ皆さんに伝える」ことに注力している。そもそも、酒井さんが物心ついた時には「両親がディズニーアニメを観せたり、サンタさんはいるよって言い続けてくれたりした」と夢見がちに育ててくれたことを振り返った。

 

今後の辻さんは、「昨年撮った『ぱん。』のメイキングムービーを撮りたい。撮影現場の裏側をドタバタなフィクションを撮ろうとしている。ただ笑ってもらえる映画をこれからもつくっていきたい」と意気込んでいる。なお、現在は、『クレイジーアイランド』を撮り終え、今秋には公開予定。酒井監督は、自身には映画の知識がないと謙遜し「大学は出ているが、ディズニーやジブリで育ってきたので偏っている。幅広く作品を観たり小説を読んだりと努力はしているが、まだまだ足りない。伝説を残した映画監督達はそれ以前に観れる映画が多くない。感性や想像力が優れていた」と分析し、現場では、感性や感覚を研ぎ澄ませて取り組んでいる。とはいえ「金曜ロードショーで何度も放送される映画を撮りたい。ある季節になると欠かせない、大人も子供も楽しめるエンターテインメントを作りたくて映画を撮っている」と野心を表す。最後に、本作のテーマについて「好きだったら素直に好きって言った方が良いよという思いを込めている。最近は、恥ずかしくて好きだと言えなかったり、テクニックに走ったりしてしまうことがあると思う。好きという気持ちは強いエネルギー。素直に行動に移せたら、それほど強いことはない」と述べ「好きな方がいるなら素直に好きって言ってみたらどうですか。そんな煌めきをお届けできたら嬉しいな」と思いを込め、感謝を伝えると共に舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『ウィッチ・フウィッチ』は、大阪・十三の第七藝術劇場、神戸・元町の元町映画館、京都・桂川のイオンシネマ京都桂川で上映中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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