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不思議なラウを自由に解釈してほしい!『海を駆ける』公開目前、深田晃司監督に聞く!

2018年5月22日

『淵に立つ』で第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞した深田晃司監督が、インドネシアを舞台にオリジナル脚本で挑むファンタジー『海を駆ける』が関西含め全国の劇場で5月26日(土)より公開される。公開を目前にした今回、深田晃司監督にインタビューを行った。

 

映画『海を駆ける』は、深田晃司監督が、ディーン・フジオカを主演にインドネシア、スマトラ島のバンダ・アチェでオールロケを敢行したオリジナル脚本によるファンタジー作品。インドネシア、バンダ・アチェの海岸で倒れている謎の男が発見される。片言の日本語やインドネシア語を話すその男は、海で発見されたことからインドネシア語で「海」を意味する「ラウ」と名づけられた。NPO法人で災害復興の仕事をしている貴子と息子のタカシ、親戚のサチコは、記憶喪失ではないかと診断されたラウをしばらく預かり、身元捜しを手伝うこととなる。ラウはいつもただ静かにほほ笑んでいるだけだったが、そんなラウの周辺ではさまざまな不可思議な現象が起こりはじめていた…

 

深田監督がこれまで関わってきた映画には東日本大震災に関する作品が度々あった。本作ではスマトラ島沖地震が関係している。深田監督は、2011年12月に京都大学とバンダ・アチェのシアクアラ大学との共同開催による1週間の大きなシンポジウムに記録撮影として参加した。当時は、3月11日の記憶がまだまだ色濃く残っている時期。津波に飲み込まれていく映像はショッキングで「世界観がひっくり返されるような衝撃」を引きずったまま、初めてのインドネシアでありバンダ・アチェだったが「自分の価値観が相対化されていくように感じた強烈な体験だった」と振り返る。バンダ・アチェは2004年のスマトラ島沖地震による大津波の被害を受け、17万人の方々が亡くなった。その地域を前にして「津波の被害は日本だけのものではない」と肌で感じる。当時はバンダ・アチェの津波を映像で見ていたはずだが「海外ニュースの一つとして消費してしまっていた。3月11日の津波映像のような想像力を持っていなかった」と自分の受け止め方を後悔した。自分を発見させられたバンダ・アチェでの体験により「インドネシアと日本における津波の受け止め方には違いがあり興味深い」とバンダ・アチェを舞台にした映画づくりを決心。さらに「バンダ・アチェと日本の映画ファンが出会う接点を作りたい」と想いを込める。

 

本作では、インドネシア語の台詞が沢山ある鶴田真由さんと太賀さんが、撮影前に数ヶ月かけてインドネシア語を猛特訓。鶴田真由さん演じる貴子は20代になってからインドネシアに移住した日本人、太賀君演じるタカシは日系インドネシア人であり生まれた時からインドネシアで過ごしてきた。深田監督は、それぞれの役柄に合わせた語学力をつけようと「貴子は日本語訛りがあり、そんなに上手くないインドネシア語。 タカシはネイティブなインドネシア語」と目標を掲げて取り組んだ。結果的に、太賀さんが話す言葉は、インドネシア人や国際交流基金のインドネシア担当の方が驚くまでに到達。そのレベルは「ちょっとした仕草や友達と話す際の身振りはインドネシアにいる若者の雰囲気が出ていてリアル。現地で培ったと思うが、俳優としての彼のセンスが成せる技術」と評する。なお、リハーサルのために、撮影の2週間前にはメインの若手俳優4人がジャカルタで合流しており「稽古終了後、4人だけで映画を観に行ったり遊んだりしていた。特に、アディパティ・ドルケンと太賀君が凄い仲良くなった」と明かす。そこでも、太賀さんは俳優としての才能を発揮しており「共演者からの芝居やアクションに対して自然に反応できる。反射神経の良さが太賀君の素晴らしさ」と絶賛する。

 

本作でも脚本を手掛けた深田監督は「群像劇のイメージで書いていたので、主要登場人物は全員主役」だと話すが、本作の重要人物は、ディーン・フジオカさん演じる謎の男。バンダ・アチェで映画を作るにあたって「海の中から記憶喪失に陥った謎の男が現れる」イメージを描いた。それはアメリカの作家マーク・トウェインの遺作『不思議な少年』に由来する。「第44号」という謎の少年が、当時の人間の世界観や価値観を相対化し、引っ繰り返して疑いをかけ去っていくストーリー。本作を作るにあたり「『不思議な少年』では少年が悪魔的な存在として描かれている。今作では、超然たる人間離れしたような雰囲気を醸し出せるような人を探していく中、最初は日本やフランスの映画プロデューサーからディーン・フジオカさんはどうかな、と言われて気になり始め、調べてみるとプロフィールが興味深かった」と関心を持ち始める。ディーンさんは福島で生まれ、アジアでデビューし、俳優としてジャカルタを拠点にし日本に出張し活動しており「無国籍なプロフィールがラウというキャラクターを演じてもらう上で邪魔にならない。プロフィール自体がラウと重なっていくことが興味深い」と注目。実際にお会いし「顔を見てこの人だと直感しました。天才的な美貌ですよね。お互いに38歳で同い年ですが、横に並ぶと、同じ生き物といっていいんだろうか」と告白する。なお、不思議な存在であるラウの捉え方について「お客さんは自由に解釈してほしい。ラウは世界中で何処にでも存在し、精霊・河童みたいなもの」と述べた。

 

また、深田監督作品は生と死を扱った作品が多い。深田監督は、死ぬということについて「映画のモチーフとして描きたい欲求はあります。いつか人は死ぬということは最も普遍的なこと。不可避で答えの出ないこと。人が死んだ時に何があるのか誰も答えがわからない」と捉える。だからこそ「わからないものを芸術が一番積極的に扱っていくべき」だと断言。今作を通して「自然災害で多くの人が死んでいくことに対し、自分はなぜ生き残ったのだろうか、何かの罰で人は死んでしまったのか、と人はその意味を考えてしまう。また、結果として偶然に、意図や意味がなく、人を助けたり殺めたりするのも自然でもある」と独自の死生観を述べる。なお、前作の『淵に立つ』と『』は監督の中で通底している作品だと説く。浅野忠信さん演じる八坂草太郎とラウは共通しており「暴力の象徴として八坂を描いた。人間は日常の中で暴力に晒される可能性は常にある。自然災害かもしれないし交通事故かもしれない。意図も意味も理由もなく、突然破壊されていく可能性がある」と論じる。そこで、それぞれのキャラクターについて「八坂は秘められた過去があり、周りとの人間関係性もあり、何を考えているかわからないが、復讐心を持っていると想像できる。ラウに対し、さらに何も想像出来ないような八坂を描くことが一つの目的ではありました」と明かした。

 

なお、公開前には本作の小説も出版される。深田監督は、今作完成後に映画を原作にして小説を書いた。映画と小説について「どちらが先でも構わないが、小説には歴史的な背景を細かく描いており、先に小説を読んだ方が理解が深まる」と提案する。さらに、今後も「順調にいけば、今年は長編映画を1本撮ります。現在、3本が相次進行しており、うまくいけば毎年新作が観られます」と意欲的に活動していく予定だ。

 

映画『海を駆ける』は、5月26日(土)より大阪・梅田のテアトル梅田、難波のなんばパークスシネマ、京都のMOVIX京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸他にて全国ロードショー!

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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