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大きな正義感と小さな嘘で狂ってゆく1人の男の人生を描いたヒューマンサスペンス『英雄の証明』がいよいよ劇場公開!

2022年3月31日

(C)2021 Memento Production – Asghar Farhadi Production – ARTE France Cinema

 

金貨をめぐる行動で、SNSやメディアの影響力に翻弄されてしまう男の人生を描き、人間の倫理観という普遍的なテーマを問う『英雄の証明』が4月1日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『英雄の証明』…

SNSやメディアの歪んだ正義と不条理によって、人生を根底から揺るがす事態に巻き込まれていく男の姿を描く。イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され、服役している。そんなある時、婚約者が偶然17枚の金貨を拾う。借金を返済すればその日にでも出所できるラヒムにとって、それはまさに神からの贈り物のように思えた。しかし、罪悪感にさいなまれたラヒムは、金貨を落とし主に返すことを決意する。そのささやかな善行がメディアに報じられると大きな反響を呼び、ラヒムは「正直者の囚人」という美談とともに祭り上げられていく。ところが、 SNSを介して広まったある噂をきっかけに、状況は一変。罪のない吃音症の幼い息子をも巻き込んだ、大きな事件へと発展していく。

 

本作は、『別離』『セールスマン』でアカデミー外国語映画賞を2度受賞するなど世界的に高い評価を受けるイランの名匠アスガー・ファルハディーが手がけ、2021年の第74回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、サリナ・ファルハディらが出演した。

 

(C)2021 Memento Production – Asghar Farhadi Production – ARTE France Cinema

 

映画『英雄の証明』は、4月1日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や心斎橋のシネマート心斎橋、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸などで公開。

まず、本作を鑑賞する上で必要不可欠な知識がある。イランでは借金の保証人制度があり、多額のお金を借りる時には保証人が必要になり、もし債務者が返済できなくなった場合は保証人が代わりに返済を行う。最終的には債務者は借入金の全額と保証人が負担した利息を返済しなければならないが、債務者が返済しない場合、保証人は相手を法廷で訴えることができ、その結果、懲役刑が課せられれば債務者は刑務所に行かなければならない。また、軽犯罪で収監されている囚人は、休暇を取得し刑務所外に出ることができる。日本人の感覚としては驚く内容ではあるが、このイランでの法律を知った上で観ないと、冒頭から作品の理解に難儀してしまうので、前提知識として覚えておいてほしい(作中では、丁寧な解説などはないので)。これは、イスラム教をベースにした考え方であろうか。

 

本作では、主人公のラヒムが、蜘蛛の糸を掴むがごとく、借金の返済に繋がる事態に遭遇するが、良心の呵責ゆえに善行をすることに。しかし、周囲が臭い物には蓋をするが如く、メディアによって祀り上げられてしまう。とはいえ、保証人にとっては、如何ともし難い出来事である。具体的に映し出されないが、SNSという新たなメディアによって反旗を翻してしまう…本作で描かれている出来事は、国や文化が違えど、誰にでも遭遇し得る可能性がある。誰もが称賛する出来事などなく、アンチによるSNSを用いたネガティブキャンペーンも発生してしまう。イランだけなく世界共通で受け入れられる現代的な作品だと感じられた。英題『A HERO』と違い、邦題が『英雄の証明』と作中の意図を十分に組んでいる。英雄であることを証明することは本質的には不可能だと改めて実感させられた。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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