田辺・弁慶映画祭セレクション2017!塚田万理奈監督作品『空(カラ)の味』公開!
第10回田辺・弁慶映画祭で受賞を果たした3人の若手新人監督にスポットをあてた特集上映『田辺・弁慶映画祭セレクション2017』が6月10日(土)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で開始。6月10日(土)から6月12日(月)までは塚田万理奈監督の『空(カラ)の味』が上映されている。
「田辺・弁慶映画祭」は、2007年に第1回目を開催し、今年で第11回目を迎える映画祭。新人監督の作品を対象としており、映画有識者による審査だけでなく市民審査員も交えたコンペティションを実施している。過去の受賞者には 沖田修一監督や瀬田なつき監督、今泉力哉監督がおり、その後に商業映画デビューを果たしており、インディーズ映画の登竜門となる映画祭になっている。
今回、昨年の第10回田辺・弁慶映画祭で受賞を果たした3人の若手新人監督作品を特集上映する。6月10日(土)から6月12日(月)までは弁慶グランプリ、市民賞、映検審査員賞、女優賞(堀春菜さん)を受賞した塚田万理奈監督の『空(カラ)の味』が上映されている。
映画『空(カラ)の味』は、摂食障害に悩む女子高生が、ある女性との交流を通して解放されていく姿を描いたドラマ。女子高生の聡子は優しい家族や仲良しの友人たちに囲まれて何不自由ない毎日を送っていたが、いつしか自分が摂食障害に陥っていることに気づく。理由もわからないまま不安を募らせる聡子は、家族や友人との関係もぎくしゃくするようになり追い詰められていく。そんなある日、聡子は街で出会った危うげな女性マキと親しくなるが……
上映後、塚田万理奈監督と主人公の兄役を演じた松井薫平さんが登壇。2人は日本大学芸術学部の同級生であることから、和やかな雰囲気の中、舞台挨拶は始められた。本作の経緯について、塚本監督は「私が摂食障害だった時期があり、当時のことを描いた。私が大学生の頃、痩せ細っていた時に、松井さんは気持ち悪がらずに話しかけてくれ、それ以来の仲良し」と話す。作品の撮影は2年前、当時、松井さんは「春に花見をした後の打ち上げに、塚田監督が来てくれて『誰にも言えなかった私の話を映画で撮りたい』と言ってきた」と明かす。塚田監督は、松井さんから「『俺は、世の中の殆どの人のためではなく、たった一人のために撮る映画は最高だと思う』と言われた」ことを振り返る。塚田監督は「自分でも気持ち悪いと思っていたので、これを撮ろうと思っていなかった。気持ち悪い日々のことを誰かに話すつもりはなく、一生このままで黙っていようとした。作中に登場するマキのモデルになった女性と実際に会って、この人の人生を私は気持ち悪いと言わないで撮ろう」と思い、撮り始めた。
塚本監督は、撮影について「私の実家に2週間泊まり込みで毎日撮影していた」と振り返る。松井さんは「スタッフ含め大学生時代の気心が知れた仲。仲が良過ぎて、撮影中はずっと遊んでいたイメージしかない」と漏らす。塚田監督は「暗い話だから現場の雰囲気も暗いんじゃないか、と言われたりするが、役者さんは役を演じることに心を使って頂いている。むしろ、それ以上のことが気になるような負荷を心にかける必要はないと思っていた。それ以外の事は楽しくやっていた」と回想。「その後の2年は編集を行い、映画祭に出品していった。田辺・弁慶映画祭に出品し賞を頂いたので、今回、上映出来て嬉しく思っております」と塚田監督は感慨深かった。松井さんは「感想等は人それぞれあると思いますが、僕らのための映画が観てくれた一人のためになったらな」と思っている。
塚田監督は「この映画を観て、それぞれの人が感じたものは、その人のものであり、その人の自由でいいと思っており、感想はどんなものでもいいと思っている。私が撮りたくて撮った作品なので、作品を観て頂いただけでもありがたい」と思っている。「私は摂食障害の映画を撮りたいと思ったわけではない。私が当時、様々なことを思い巡らし考えていたことの結果でしかなくて。人が様々に何かを日々思っているならば、それが本物だと思っている。思っているだけでもいいよと。その人がどんな状態でも、どう思っているかが大事だ」と思い、塚田監督は本作を撮った。「役者やスタッフら可愛い人達が心を遣って撮ってくれた私にとって可愛い作品。これからどう生きてくか私は分からなくて日々納得して生きていければと思っている。人生の1本として本作を撮れただけで、私の人生は本当に良かった。2年間本当に死ぬ気で撮り幸せだった日々をくれた作品なので、とても大事にしています」と塚田監督は話し「たくさん上映したいと思っています。お力をお借りできれば」と想いを込めながら、舞台挨拶は締め括られた。
映画『空(カラ)の味』は、『田辺・弁慶映画祭セレクション2017』内で大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で6月12日(月)まで上映。
なお、6月13日(火)と6月14日(水)は野本梢監督の『私は渦の底から』『はじめてのうみ』『あたしがパンツを上げたなら2』『朝をこえて星をこえて』、6月15日(木)と6月16日(金)は永山正史監督による『トータスの旅』が上映される。
- キネ坊主
- 映画ライター
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