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『武曲 MUKOKU』関西で公開中!熊切和嘉監督迎え舞台挨拶開催!

2017年6月11日

6月3日(土)より全国の映画館で、芥川賞作家の藤沢周氏が2002年に刊行した『武曲』を実写化した映画『武曲 MUKOKU』が上映されている。6月11日(日)には公開を記念して本作を監督した熊切和嘉さんを迎えて舞台挨拶がシネ・リーブル梅田でも開催された。

映画『武曲』は、現代の鎌倉を舞台に、生きる気力を失った凄腕剣士と、天性の剣の才能を持つ少年が繰り広げる宿命の対決を活写する。剣道の達人だった父に幼少時から鍛えられ、剣道5段の腕を持つ矢田部研吾。しかし父をめぐるある事件をきっかけに剣を捨て、自堕落な日々を送っていた。研吾のもう1人の師匠である僧侶・光邑は、研吾を立ち直らせるため、ラップのリリック作りに夢中な高校生・羽田融を送り込む。融は剣道初心者だったが、本人も気づかない恐るべき剣の才能を秘めていた…

上映後、学生時代はずっと大阪に住んでいた熊切和嘉監督は「こうやって2週目を大阪で迎えられたことが嬉しい」と感謝を述べ、舞台挨拶は始められた。

本作を撮った理由やきっかけについて、熊切監督は「今回は、2年前にプロデューサーからオファーされた企画。その前に、文化庁の海外研修制度でパリに映画留学をさせてもらっており、様々な映画を鑑賞していた。バスター・キートンのサイレント映画等を特集で観ていて、肉体表現で映画を語ることに興味があった」と話し「原作を読んだ時、まさに肉体で語る映画ができるのではないか」と思いがあった。映画の舞台は鎌倉だが、本作の制作を契機に熊切監督は鎌倉に引っ越したという。「ロケハンで鎌倉に行ってるうちに気に入ってしまい、せっかくだからと住み始め、今も住んでいます」と明かす。「これまでの作品でも、そういう思いはあったが、なかなか住むまでは至らなかった。鎌倉は東京から電車で1時間ちょっとで行ける。通いだと大変なので、先手を打って住んじゃおう」ということだった。

本作は、主演の綾野剛さんと村上虹郎さんの2人の対決に注目が集まっているが、2人をキャスティングした理由として、熊切監督は「綾野君は、5年前に『夏の終り』で一緒にやっており、会う度にいつかまた一緒にやろうという話をしていた。綾野君に悲しくて悪い男をやらせたかったので、苦しい役だと思うけど、全力でやってくれるんではないか」と考えた。演出について「事前に台本に沿ってシーンの雰囲気はどうであるか照らし合わせた。現場に入ると、感覚的には綾野剛が2人いるように感じた。演出家としての綾野剛と肉体としての綾野剛が存在する。演出家の綾野剛に相談すると、演出家の綾野剛が肉体の綾野剛にやらせてみますと伝えている感覚になった」と振り返る。なお、綾野さんは、剣道5段の腕前に見せるために身体を作り込まれた。「撮影に入る2,3ヶ月前から完全に身体を鍛え、食事をコントロールしていた。筋肉の話をしながら、本番に向けて身体を作っており、完全にアスリートだった」と表現する。

村上さんについて、熊切監督は「以前から役者として興味があり、剣道をやっていたという噂を聞いた。4年ぐらい前、渋谷の映画館にジャ・ジャンクー監督の映画を観に行った時、村上君に話しかけられ、性格の図太さや不意に間合いに入ってくる雰囲気を感じ、劇中のシーンにピッタリではないか。また、生命力を感じた」を振り返る。実際、村上さんは剣道が初段で、立ち姿が綺麗に映えている。「最初は下手に見せることが難しい。普通に竹刀を振ると経験者に見えてしまう。初心者のように見せるシーンでは剣道ができない僕に演技の見本を依頼し、それを真似して演技してみせた」と漏らす。村上さんへの演出について「役柄の背景の部分は事前に話していた。変に制限すると急に堅くなってしまう人ではないので如何に伸びやかに演じさせるか」を考えたという。印象的な2人の決闘シーンについて「3日間ぐらいかけて撮影し、様々な仕掛けを施した。かなり長いシーンで俳優は大変だったと思いますが僕は楽しかった」と漏らす。「生々しく描きたかった。きっちりと決めずに撮影日の状況に合わせて現場を作り上げ、仕掛けをつくって撮影を始めていった」と語る。

主役の綾野さんと村上さんを脇で支えるのは小林薫さんと江本明さん。凄みを醸し出す2人の出演について、熊切監督は「小林薫さんは『海炭市叙景』『夏の終り』に続いて3本目になる。出て頂くだけで安心できる。今までの作品では情けない男の役が多かったが、今回もダメな男でありながら、今までスクリーンに映したことのない怖い一面を撮った。小林さんが醸し出す、ふとした瞬間に殺気を感じる部分を映したい」と思っていた。柄本さんについて「いつか一緒に仕事をしたい、素敵で尊敬している俳優です。今作は話の構造が『スター・ウォーズ』と似ている。師範の光邑は『スター・ウォーズ』ではヨーダにあたる。ヨーダと言えば誰かとキャスティングを探していくと、江本さんに辿りついた。昔なら志村喬さん、今だったら江本さんだ」と思った。

ここで、お客様からの質疑応答を受け付けた。柄本さんへの演出について聞かれると「柄本さん演じる光邑は臨済宗の住職。江本さんと臨済宗のお寺に見学に行き、臨済宗としての僧侶の心構えを教えてもらったが、帰路の途中、あまり囚われ過ぎないよう、柄本さんなりの光邑を演じてほしいと要望した」と応える。他にも、熊切監督の処女作『鬼畜大宴会』のラストで刀が登場することを挙げ、本作とのつながりや意味合いについて問われると「『鬼畜大宴会』とはつながっていない。三隅研次監督の「剣」三部作を受け、新「剣」三部作をやりたかった。刀に怪しい魅力を感じている」と返した。

最後に、熊切監督は「自分としてはまだ客観的に観れていないですが、出来る限りの力を込めて作ったと思っています。皆さんの心にちょっとでも残ったならば、『武曲』のことを思い出してもらえたら嬉しいです」と話し「もう一度観ると、さらによかったと思いますので、宜しくお願いします」と感謝を述べ、舞台挨拶は締め括られた。

映画『武曲』は、6月3日(土)より関西をはじめ全国の映画館で絶賛公開中。各種のタイアップやコラボレーションも展開されている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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