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第15回中之島映画祭開催!グランプリは『10ミニッツ』!

2017年5月5日

大阪市の中央公会堂で5月3日(水)から5月5日(金)にかけて自主製作映画の祭典「第15回中之島映画祭」が開催された。

中之島映画祭は、中之島まつりの中で開催している映画祭。46年前に中央公会堂の建て替え案が議会で提案され、反対運動が起こり中之島まつりが始まった。最終的に中央公会堂は国の重要指定文化財となり、建て替えられることはなくなった。以降、中之島まつりをみんなで楽しくやっていくものにするべく、楽しいものの一つとして映画祭もやってみようと15年ぐらい前に始まった。中之島映画祭は、大阪市中央公会堂の大集会室で開催され、入場料は無料。老若男女問わず普段は自主製作映画を観ていないお客様が中心となっており、まだまだ知られていない新しい才能の発見や自主製作映画を観てもらう機会として開催されている。

今年の映画祭はコンペティション部門を競り勝った9作品と「リンク ザ シネフェス」と題し、日本で行われている他の映画祭と繋がりを持ち自主映画を盛り上げていく企画の第一弾として映画祭『MOOSIC LAB』で取り上げられた映画が上映された。また、今年は新たに舞台挨拶が上映後に行われ、その模様を追いかけた。

5月3日(水)の初日には、中之島映画祭が世界初上映や大阪発上映となる作品が多く上映された。

大橋隆行監督の『さくらになる』は中之島映画祭が世界初上映。桜の樹の下には死体が埋まっている。体のどこかから桜が咲き、死に至るという謎の病が流行した世界。そんな世界で桜に感染した人、それに寄り添う人、様々な人の姿を描く人間ドラマ。

上映後には大橋監督による舞台挨拶が行われた。作品をつくるきっかけについて、大橋監督は「10年近く前から、人間がさくらになることについて考え企画に着手し、様々な経験を形にした」と話す。本作の撮影期間について、大橋監督は「昨年の2月から4月にかけて桜満開から散り始めた頃に撮影し編集を行い、今日に至る」と述べる。桜の撮影については「埼玉県秩父市の山間部で、前作のロケハンをしながら偶然見つけた」と明かし「桜の散り始めを狙い、散っている感じが欲しかった。散り方がまばらだったので、後処理で花びらが舞っているのを加えたところもある」と述べた。

磯部鉄平監督の『海へ行くつもりじゃなかった』は中之島映画祭で大阪初上映となった。面白みのない日々を過ごす麻来はフラれた彼女の結婚式にむかう寸前で怖気づけ引き返す。やけ酒を煽り路上でパントマイムを行うリナに絡む。翌日リナは麻来の忘れ物を返しに再会 一緒に海に行くことに…

上映後には、磯部鉄平監督とブーメランおじさん役の岩本守弘さんが登壇。撮影場所について、磯部監督は「中央公会堂の前の広場で昨年5月ぐらいに撮影した。子どもの頃から通っていた場所で、中之島映画祭で上映できたらいいね」と思っていたので、本当に嬉しそうだ。地元の撮影のこだわりについて、磯部監督は「自転車通勤時、この場所がいいなぁというところを全部使った」と明かす。他所で上映した際には、エンドロールの色が黒ではなく白である理由について訊かれており「主人公らが半歩前に進んでくれたらいいなと、ほのかな希望が黒より白がいいのでは、とスタッフらと話し合った」という。

森田和樹監督の『春を殺して』は中之島映画祭で大阪初上映。クラスに毒ガスを撒きたい女子高生佐知は、屋上でいじめられっ子の美香と出会う。そして二人は一緒に毒ガスを作り始めるが…

上映後には、主演の村上真衣さんと時枝奈々さんが登壇。森田監督のコメントを預かっており「短い時間の映画ですが、見て頂いた方の何かになったりふと思い出したりして頂ければ大変嬉しい。映画も人と同じように忘れられるのは悲しいと思いますので、今度は同じ空間で観客の方と一緒に観られるよう、中之島映画祭にまた参加できるよう映画制作を精進してまいります」と伝えられた。登壇した2人に、演じてみてどうだったか訊かれると、村上さんは「凄く信頼関係があった。演じた役と同じようにもがき苦しみながら撮影をしていた。皆さんに観て頂けることで報われた」と話す。時枝さんは「登場する3人組のなかできゃぴきゃぴ楽しく和気藹々と同年代で演じていた」と述べる。現場の雰囲気について伺うと、村上さんは「学校のシーンは皆きゃぴきゃぴ。エキストラの方もは盛り上がり、高校生活を振り返りながら撮影していた」と話した。

川合元監督の『捨て看板娘』は大阪初上映となる。捨て看板屋の捨て看板娘。子供の頃からそう呼ばれ、バカにされて来た聡美は町を出るが、やがて、帰って来る。失意の帰郷を父将人はじめ町の人々は迎え入れるも、兄の隆一は聡美を突き放す。不器用ながらもひたすらまっすぐな、家族の物語。

上映後には川合元監督が登壇。川合監督は、作品を作るきっかけについて「群馬県中之条町の映画祭『伊参スタジオ映画祭』でシナリオコンペでグランプリを受賞し製作した」と述べる。本作には、クライマックスでは驚くようなシーンがあるが、その発想について、川合監督は「ネタバレした人もびっくりさせたい。CGでもできなくはないが、映像の力を使いたい。合宿しながら撮影をしているなかで、キャストスタッフ総出で準備した」と明かす。撮影期間について訊かれると「1週間で、暑い中皆真っ黒になりながら撮影し、一切雨が降らずに終わった。最後にエンドロール映像を取った後にゲリラ豪雨があった。一歩間違っていたら、完成しなっかった」とハラハラしながら製作したことを振り返った。

5月4日(木)の2日目、初日に続いて上映される作品や世界初上映の作品が公開された。
長澤雅彦監督の『10ミニッツ』は映画祭2日目からの上映。高校生のセイカは、いつも聴いているラジオ番組で「ラジオのDJになるにはまず行動すること」とアドバイスをされ、街の魅力を発信するインターネットラジオを始める。あるとき、悩みを相談するメールが送られてきて……

上映後には、長澤雅彦監督と出演の村田結佳さんと村本寿子さんと室積光さんが登壇。本作を作るきっかけについて、長澤監督は「山口県下松市にて公募した[下松の魅力を全国に発信する物語]から始まった作品」だと話す。撮影中に印象に残ったエピソードについて各出演者に伺うと、村田さんは「撮影当時が中学2年生だったが、現役高校生の方と共演し、優しくして頂いた」と話し、村本さんは「撮影当時は高校2年生だったが、中学2年生の村田さんが大人っぽくキリッとしていて刺激を受けました。下松市民ではないが、下松市の方々に温かく見守っていただいて、楽しい撮影ができて良かった」と応える。また、室積さんは「スタッフもキャストも地元の人々が中心になって出来上がった。出演者同士が同じ保育園だったこともあり、地元に密着して作った映画だということを改めて強調したい」と述べた。最後に、長澤監督から「長編デビュー作『ココニイルコト』で大阪が舞台だった。ラストシーンのラストカットは、淀屋橋駅から地上に上がってくるカットだったこともあり、中之島公会堂に来るたびに何とも言えない気持ちになる。この街で新しい作品を皆さんに観て頂いて本当に嬉しい」と喜んだ。

生見司織監督の『いもガール』は中之島映画祭が世界初上映。かつては塩対応としてもてはやされ、今は事務所のお荷物と化した笑えない元アイドルが、ひょんなことから川越の「ミス・サツマイモ」に選ばれることに。そんな彼女が笑える日がやってくるのかっ!?川越市役所職員との交流の中で、奮闘する成長物語。

上映後には、生見司織監督と出演の村木雄さんが登壇。作品を撮るきっかけについて、生見監督は「埼玉県川越市で映画祭をするということで、川越市を舞台にした映画を作ろうという話になった。川越の名物・特産がさつまいもだった」と明かす。撮影中のエピソードについて訊くと、生見監督は「撮影当日は、ユネスコの世界遺産に登録された日だった。人波が押し寄せる中で、撮影順を含めどのように撮影するか考えた」と明かした。

5月5日(金)の最終日、コンペティション部門の作品上映に加えて、リンク ザ シネフェス企画特別上映やグランプリの発表も行われた。

木場明義監督の『スリッパと真夏の月』は初日に大阪初上映が行われたが、最終日に舞台挨拶が行われた。町の発明家であった亡き父が作った『物質転移装置』を発見した昌子は、姉の光子と実験をしていたが、機械が故障していまい光子が異世界へ消えてしまう。昌子はなんとかして光子を自分たちの世界へ戻そうと奮闘するのだったが…

上映後には木場明義監督と主演の森下あかりさんが登壇。撮影時の大変だったエピソードについて訊かれ、木場監督は「夏で暑く虫が飛んでくる中で、様々な小道具や着ぐるみづくりを行った。小道具は凝って一生懸命作った。オープニングシーンを想定し子供たちの幼少期を想定して撮ったが、最後の最後に子どもたちに全部壊された」と吐露する。森下さんは「リハーサルを監督の自宅で行ったが、日に日に小道具が増えていった。暑い夏に撮影し、座るスペースがもない状態で台詞の読み合わせを行った」と明かした。作中に登場する物質転移装置はどのようにして作ったかを聞くと「百均でプラスティックのたらいを購入し、部品をつなげて銀色やさびがつく特殊な塗料を塗ったり、扇風機の羽をつけたりして製作した」と話す。一番見てほしいシーンについて、森下さんは「妹からメッセージが送られてくるシーンはアナログな手法で撮ったが、映像になるといい感じに撮れている」と述べ、観客の反応が気になっている。最後に、森下さんは「作品の雰囲気はほっこりしており、心が温まる感じが好き。小さな子から大人まで楽しめると思うので、気に入ってもらえれば嬉しい」と締め括った。

最後に「リンク ザ シネフェス企画特別上映としての酒井麻衣監督の『いいにおいのする映画』が上映された。「魔法使いになりたい。」夢見がちで光遊びが好きな少女・レイは、かつて遠くに行ってしまっていた幼なじみのカイトに再会する。カイトはVampilliaメンバーとライブハウス付きの家に住み込み、作曲やPA、照明を手がけていた。ライブハウスを訪れたレイはステージの照明に心をときめかせ、Vampilliaに懇願し、照明技師への道を歩み出す。そんなある日、ふとしたきっかけでレイの血を見たカイトのとある病気が勃発。その出生の秘密、父・モンゴロイドの葛藤が明らかになり、戸惑いながらもそれを受け入れるレイ。2人の禁断の恋の日々が始まるが……。

上映後には出演のVampilliaのmicci the mistakeが登壇。撮影中のエピソードについて訊かれるとmicci は「遊園地にある”ドラゴン”に乗っているようなファンタジー作品と思って演じていた」と摩訶不思議にコメント。酒井監督の印象について伺うと「東京でライブ出演時に楽屋に訪れた。小さな女性がつぶらな瞳で『映画を撮らせてください』と言ってきた。作品には、シリアスなシーンが多くて戸惑った」と明かす。最後に「ファンタジー!!」と叫びながらも、関西では5月6日(土)から公開の酒井麻衣監督の最新作『はらはらなのか』に出演していることについてもアピールして締め括った。

全作品の上映後、中之島まつりのメインステージでグランプリの発表および授賞式が行われた。各作品の監督や関係者から感謝のことばが述べられた後、中之島まつり実行委員長の竹村さんより、グランプリ作品は『10ミニッツ』であることが発表された。グランプリ受賞を受け、『10ミニッツ』の長澤雅彦監督は「お客さんに選んで頂いた賞ということで、心から嬉しいです。来てくれたお客さんがいいなと言ってくれたことが、監督としてはこれ以上嬉しいことはないです」と述べた。また「ここに来る前に法善寺にお参りに行きまして、おみくじをひかせて頂いたら[1番大吉]をひいてしまいました。これはここで運を使い果たしてしまったと思ってがっかりしたんですが、法善寺の力は凄かったなと改めてまたお参りに行かなければ」と話しながら、観客に感謝を述べた。

中之島まつり中之島映画祭は2018年5月3~5日開催の第47回中之島まつりへ向けて、スタッフ(実行委員)を募集している。中之島まつり中之島映画祭は手作りのおまつり。映画を審査したり、大看板やポスターを作ったりすべてスタッフらで運営している。映画鑑賞やおまつりが好きな方、新しいことを始めたい方が集まっている。興味を持った方は、中之島まつり中之島映画祭まで連絡を。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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