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『堕ちる』大阪で上映開始 2日目ゲストトーク開催

2017年4月30日

4月29日(土)より大阪・十三のシアターセブンで、無口な織物職人が地下アイドルにハマっていく映画『堕ちる』が上映されている。公開2日目には、村山和也監督とヨーロッパ企画の酒井善史さんを迎えてのゲストトークが行われた。

映画『堕ちる』は群馬県桐生市を舞台に、寡黙な中年の織物職人が、ひょんなことからローカル地下アイドルにハマり、彼女の衣装作りのために奮闘する姿を描いた短編作品。かつては織物産業が盛んだった桐生市の老舗織物工場で、熟練の織物職人として働く無口な耕平。ある日、散髪に出かけた理髪店で、店主の娘である中学生の少女めぐみと出会った耕平は、なぜかめぐみに心ひかれてしまう。めぐみが歌手を目指していることを知り、彼女がステージに上がっているというライブハウスを訪れた耕平は、そこでめぐみが地下アイドルの「めめたん」として歌って踊っている姿を目にする。最初は驚いた耕平だったが、めめたんの歌声とダンス、笑顔に魅了され、気が付けば握手会にも参加。瞬く間にめめたんの魅力にのめり込んでいく……

映画上映後、村山和也監督と酒井善史さんによるトークショーが開催された。なお、村山監督と酒井さんの二人は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」で挨拶した程度だという。

まずは、村山監督より酒井さんに主演の中村まことさんについて伺った。酒井さんは、中村さんと舞台で共演したことがあり「役者としては大先輩。化け物みたいな役者」だと当時は思っていた。「今作も化け物感が突出していた。ほとんど喋らないのに、最後まで見ていられる」と酒井さんは語る。これを受け、村山監督は「中村まことさんでなければ、鑑賞するには耐えられない映画になる。中村さんの演技力がなければ成立しない」と応えた。「これまで一緒に仕事をしたことはなかったが、見た目の印象からしてもストイック。職人の役に合うので出演をお願いした」と村山監督は明かす。

さらに、村山監督は、酒井さんに中村まことさんとの共演について伺った。酒井さんは4,5年前に京都での公演で中村まことさんと共演したことがあり「グイグイと作品をおもしろくしてくれるすごい役者だ」という。これを受け、村山監督は中村まことさんについて「リハーサルを行わず一度だけ打ち合わせをしただけで、脚本を渡したら、現場では主人公の耕平になりきっていた。シーンごとにキャラクターや心情は変化していくが、見事に役にはまっていった」と話す。また、酒井さんは中村さんについて「役者としても職人肌のタイプだ」と思っている。村山監督は「中村さんは、出演のオファーに対しても時間をかけて考える方で、本作でも返事をしばらく待った。舞台挨拶への登壇も熟考されたことがあり、簡単に呼べる方ではない」と認識している。

村山監督は、酒井さんに『堕ちる』というタイトルの意味についてどこまでわかったか確認してみた。酒井さんは、アイドルファンになり日々が堕落していくこと等を指摘する。村山監督は「『恋に落ちる』、『堕落する』、『話がオチる』、『つきものが落ちる』等の意味を込めた。シーンの各所にも様々な小道具等が落ちることもかけている。日本語にある同音異義語のおもしろさを取り入れた」と明かす。

ここで、村山監督は、本作を制作したきっかけについて話した。村山監督は、めめたんが所属しているLuce Twinkle Wink☆のPVを監督するなど、商業的に監督業を営んでいるが、映画は撮っていなかった。監督自身が表現したかった映像を以て、監督の作品を観たい人に届けたいという想いから、村山監督は映画が撮りたかった。村山監督は「『きりゅう映画祭』が企画募集をしていたので、実際に群馬県桐生市を訪れて、名産の桐生織と仕事で携わっているアイドルを掛け合わせて出来た企画が本作」だと明かす。撮影について、村山監督は「昨年6月に2日ぐらいで撮影した。予算があるわけではないので、役者の拘束もできない。ほぼ寝ずに48時間ぐらいで撮影した」と話す。とはいえ「自主映画だが、プロのスタッフが集まって制作した。作品のクオリティは十分に鑑賞できるレベルに達した」と語る。作品を鑑賞した酒井さんは「32分間に濃縮されている。密度が凄く、あっという間の作品」だと感想を述べる。作品作りについて、村山監督は「”めめたん”の文字をかたどった雲等、ちょっとした演出を所々に細かく入れながら、クライマックスに向けて感情のゆらぎを表現した」と話し「映画が撮りたかった想いを詰め込んだので、表現したかったことは濃縮されている」と述べた。

お客さんからの質問を募ってみると、2日間の撮影順について聞かれた。村山監督は「地方自治体の施設で撮影しているので、時間の制限がある場所を先に優先し、まとめて撮影していった。エキストラが必要なシーンもまとめて撮影した」と応え「本当は順番に撮影できればいいが、職人が次第にアイドルにはまっていく感じを出せれば」と考えている。また、村山監督は「主人公の部屋は旅館の和室を利用して撮影した。現場の裏側では布団が積んでいる合宿所のようなところで、撮影後に寝泊まりしていた」と明かす。酒井さんは、本作に登場する工場についても聞いてみた。村山監督は「映画に出てくるような昔の織機がある工場は現在はほとんどない。今はほとんどがコンピュータで制御されている織機。作中に登場する柄のプログラムが書き込まれた基盤を用いた織機が唯一残っており、週3回程度稼働し、基本は観光地として利用されている」と応える。

他にも、エキストラについて質問が挙がった。村山監督は「桐生市の市民エキストラの方々に当日来て頂いた。選んでいなかったが、シーンの設定に上手くはまってくれる人が多かった」と話す。本作にはアイドルファン役のエキストラも多数出演したが、村山監督は「アイドルファンに作品を認めてもらうためにも、実際に地下アイドルのライブやファンミーティングに行って、どうやってアイドルが好きになったのかを取材しエピソードを反映した」と明かす。さらに、アイドルファンになっていく主人公の描かれ方について質問が及ぶと、村山監督は「一本目の映画では、監督自身の内面等が登場人物の個性に出てしまうと言われる」と話した上で「しっかりとした仕事があるが、それ以上に上のステップに登れない時期が私自身にあった。芸術の女神のような人に出逢った経験を以て、職人からステップアップしていく様子を反映して描いた」と応えた。

なお、村山監督によるトークショーは今月だけで18回も開催し、今回は9日連続トークショーの最終日だった。村山監督は「基本的に全てイチから企画し1人で行っている。自分が出るしかないと思って開催している。本当は根暗で全然喋れない」と吐露。酒井さんは村山監督の様子に驚きながらも、スキルを高く評価する。村山監督は「根底は、オタク気質で社交的ではないと思っている。映画をつくったことで、前に出ざるをえないが、逆に良かった」と現在では思っている。

イベントの最後には、本作に登場する「めめたん」タオルのプレゼントをかけた酒井さんとのじゃんけん大会が行われた。今回のイベントで最後の1枚をプレゼントすることもあり、最後の一人となるまでじゃんけんが続けられ、大いに盛り上がりゲストトークは締め括られた。

映画『堕ちる』は5月5日(金・祝)まで大阪・十三のシアターセブンで上映。19時40分~20時17分にて、料金は 800円となっている。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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