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意外性に富んだ作品達が勢揃い!「ndjc2019」川崎僚監督、島田欣征監督、山中瑶子監督に聞く!

2020年3月11日

次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2019年度作品が完成し、3月13日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で上映される。今回、各作品を手掛けた、川崎僚監督、島田欣征監督、山中瑶子監督にインタビューを行った。

 

文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、平成18年度より始まり、今年度で14年目になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
8月に行われたワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ3人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作。フレッシュな感性と第一級の確かな技術が作り上げた個性豊かな短編映画3作品が上映される。

 

『あなたみたいに、なりたくない。』…

28歳の地味なOLの鈴木恵は、「婚期を逃した孤独な女性」と陰口を叩かれている先輩・小山聡子のようにはなりたくないと、結婚相談所に入会する。次から次へと婚活男性に会ってみる恵だったが、これまで自分自身としっかり向き合ってこなかったこともあり、相手を見つけられないまま疲れ果てていく。そんなある日、街で偶然会った聡子の自宅へ招かれた恵は、彼女の意外な一面を知る。主演は『2つ目の窓』の阿部純子さん。監督は、2018年の初長編『wasted eggs』がタリン・ブラックナイツ映画祭に正式招待、イタリアのレッジョ・エミリアアジア映画祭でも上映された川崎僚さん。

 

『Le Cerveau – セルヴォ -』…

生活苦の中、最愛の息子・蒼太を必死に育ててきた前川早弥。しかし蒼太はネオン症という奇病に冒されてしまう。蒼太を救うための生体移植手術には、投薬を続けた早弥の身体が必要だった。ある夜、早弥は事故に遭い命の危機に陥ってしまう。見知らぬ研究室で目を覚ました早弥は、自分が大東アキという別人の姿になっていることに気づく。次々と起こる異常事態に困惑しながらも、息子を救うべく奔走する早弥だったが… 監督は、広告映像やPV、CGデザインなどを手がけてきた島田欣征さん。

 

『魚座どうし』…

小学4年生のみどりはママと2人暮らし。パパは仕事で外国へ行ったきり、ほとんど帰ってこない。ママの心には穴が空いていて、みどりは自分がそれを埋められないことを知っている。学校へ行けば友達がいるけど、なんだか満たされない。同じく小学4年生の風太の家にもお父さんはいない。お母さんは宗教に熱心で、お姉ちゃんは中学生になって反抗しはじめた。子どもたちは今日も「起きたら何もかも大丈夫になっていますように」と願いながら眠りにつく。監督は、初監督作『あみこ』がPFFアワード2017に入選、第68回ベルリン国際映画祭に史上最年少で招待された山中瑶子さん。

 

☆30分の短編を35mmフィルムを用いて限られた予算という条件による制作について

川崎監督:

今までの6年間で自主映画を10人前後の制作体制で撮ってきました。今回、初めて予算がある商業映画の座組で監督させてもらいました。自分達の周りだけだと考えが脚本に及ばないが、プロのスタッフが入ると、本当にそれでよいのか問い質されたこともありました。プロって違うんだな。クオリティがある作品を皆で目指していました。35mmフィルムを用いて、一瞬一瞬を無駄に出来ない勝負の瞬間による熱量を感じられて良かったです。

島田監督:

4日間に詰め込んでおり、妥協せざるを得ないところもあり、限られた撮影時間内でどのように操縦するか、苦労もありました。キャリアがあるプロの方達に対して、もう1テイク撮るか次に向かうか選択が何度もあったので試されました。ディレクターについて考え、演出し導いていくか求められたので、意思表示は心がけるようにしていました。撮影所の方達も初めてだったので、どう振舞い進めるのかディレクションは勉強になりました。

山中監督:

自主映画を最初に撮っていたので、その時の感触とは全然違いました。人数が増えれば増える程、自分のイメージを共有するのも簡単にはいかなくなります。それぞれに思惑があると思いますが、面倒がってしまい…私が出来たことはあまりなく、スタッフの皆さんが私を助けてくれました。徐々に準備を進めて、その通りに映画を作ることには面白みを感じません。当日の現場で役者と向き合った時の自分に素直でありたい。ぶち壊したいと思っていても出来ないこともありましたが、楽しかったです。

 

☆意外性に富んだ3作品が勢揃い

川崎監督:『あなたみたいに、なりたくない。』

…劇中、意外な設定で用いられた台詞がタイトル

タイトルが後に響く作品が好きです。『酔いどれ天使』が好きで、タイトルは顔になる。実際に私は婚活をしていたので、当時を思い出して、何故私は止めたのか、と突き詰めました。本当は結婚したくないのかもしれない。周りに言われて、頑張って焦っているのが自分らしくない。そんなことで頑張りたくない。自分が本当に嫌で止めたことを思い出しました。20代のうちに決めないといけない思い込みに縛られていることについて気づかないといけない。だから、このセリフを大切にして作っています。

島田監督:『Le Cerveau – セルヴォ -』

…フィルムとは思えないCG・VFXの活用

VFXが得意分野であるため安心感もありました。予算も十分だったので、臆することなくCGを導入しました。広げ過ぎると難しいので、全編ではなく局所で使うようにしました。

山中監督:『魚座どうし』

…突然、突拍子のないクライマックスを迎える

ああやって終わる映画がいいな。30分は難しい。思い上手くまとめ過ぎない方がいいのかな。うお座は、12星座で一番最後に出来た星座。11星座の足りないところを補うために出来ている。唯一の水の生きものの星座。他とは違う世界で生きている。観察力が高い。日本では学年最後の生まれ。現世をよく見ているイメージと今作の子供達のイメージと上手く結び付けば良かった。でも、うお座の説明を採り入れていない。

 

☆自身の性格や経験が作品に投影されているか

川崎監督:

自主映画時代は女性2人の話を書いてきました。女性は子供が産めてしまうから、生きていくことがヘビィ。こんな自由になった世の中なのに、日本は、結婚して子供を産むことが幸せなんだ、という概念がまだ強い。私達はどうしても女であることから逃れられない。そのテーマや手掛けたいことは一貫して変わらない。

島田監督:

格好良いものやダークなものが好きなので、暗くて嫌なサスペンス要素は入っています。実は、ひねくれ者。人の思い通りになることを嫌がる。観客の予想に気づいたら、抗えたい。壊して引っ掻き回す。僕の性格が表れている。友達にも「この監督は最後まで信じちゃいけねぇな」と云われた。人がこうすべきという常識に対し、その人自身が自己犠牲しなきゃいけないということに対して、その人も我儘になって良いんじゃないかな、という考え方を持っています。他人の幸福を願うより自分の幸せを願っても良いんじゃないか、ということを書きたいと思って反映しています。

山中監督:

プロデューサーには不親切な女だと云われていました。「そういう映画になった」と嬉しそうに言っていました。「底意地の悪さが出てるね」と云われるので、そうなんだろうな。

 

☆他の監督作品から刺激を受けたこと

川崎監督:

こんなテイストの違う3種類の作品が集うんだな。私は、映画館に年に1回しか来ないひとにも伝わる作品を作ろうとしています。私自身はコアな映画ファンではあるので、2人の作品は自分に出来ないことをやれているからこそ、おもしろいな。

島田監督:

作品づくりの前にあったワークショップでは、2人の作品が特に好きでした。出来上がった作品を観ると「この人達らしいな」と感じました。僕が好きで求めていたものを観れて嬉しかった。個性がありますね。

山中監督:

それぞれ違う作家性があります。映画言語が違うのがおもしろい。私と決定的に違うのは、テーマを持つこと。私は余計なひねくれ方をするので、素直に映画が撮れたら良いなぁ。

 

☆長編にするなら…

川崎監督:

婚活は奥が深い。様々な方法がある。普通の恋愛と違い、同時並行で会ったり、駆け引きがあったりします。相対評価してしまったり、相手をマイナス査定してしまったりして興味深い。伊丹十三監督が好きで、情報映画の手法を採り入れたので、さらに丁寧に描けたらおもしろい。30分だと主人公の物語をお客さんに届けるために簡潔にしました。やりたいことを全部やれていないので、そこを描きたい。

島田監督:

元々、尺の感覚を分かっていませんでした。30分が今まで一番長かったですね。最初に書いたのは30分オーバー作品だったので、全く収まらず僕の技術では無理だったので、削ぎ落としました。なんとか30分に収まる構成になったものの、人間的な部分を描いたり設定を膨らませられたら、さらに出来たかな。題材も空想的なので、長編にすると主人公の気持ちの変化を描いて深みを持たせたかな。論理的要素がこのジャンルでは大事だと認識しつつ長編では実現出来たかな。

山中監督:

元々、長編で以前書いていたのを改編しました。設定やシチュエーションが違います。子供達の友達がいて、両親の世界があります。どちらが子供でどちらが大人か分からないことをテーマにして書いていました。30分だったので、登場する大人は紹介程度で子供をずっと撮っていました。人間の多面的な部分を描いていたかったですね。

 

☆今後の予定、次回作について

川崎監督:

霊柩車をジャックするロードムービーを考えています。また、性別で区切らないことに対する映画も作りたい。

島田監督:

やりたいことが沢山あります。そのなかで書いてみて、一番撮りたい作品にチャレンジしたい。次は長編にチャレンジしたい。CGだけでなく、エモーショナルな作品にもチャレンジしたい。

山中監督:

長編を撮りたい。外国で撮りたい。日本と数ヶ国のスタッフと一緒に映画制作をしたい。どのシステムでも日本人は改革が苦手。分かりきっている分業スタイルがある。部署毎の不干渉なく意見を言い合えれば、作品が良くなります。全員外国人なら違うので、良いなぁ。

 

若手映画作家育成プロジェクト ndjc2019」は、3月13日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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