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映画の中でしか見れない西成が映し出されている…『解放区』太田信吾監督を迎え舞台挨拶開催!

2019年11月1日

ドキュメンタリー作家になることを夢見る映像作家の青年の姿を通して、西成区・釜ヶ崎という町とそこに息づく人々の生き様を映し出す『解放区』が関西の劇場でも11月1日(金)より公開。初日には、大阪・梅田のテアトル梅田に、太田信吾監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『解放区』は、自ら命を絶った友人のミュージシャンを正面から描いたドキュメンタリー『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を監督し、俳優としても活躍する太田信吾さんの初となる長編劇映画。日本最大のドヤ街とも言われる大阪・西成区の飛田新地やあいりんセンター、三角公園などでロケを敢行し、そこに息づく人々の姿を描いた。ドキュメンタリー作家になることを夢見ながら小さな映像制作会社に所属するスヤマは、引きこもり青年の取材現場で憤りと正義感から先輩ディレクターに反抗したことで、職場での居場所を失ってしまう。かつて大阪西成区釜ヶ崎で出会った少年たちのその後を追う企画を立ち上げたスヤマは、まるで自分の新たな居場所を探すかのように単身釜ヶ崎の地を訪れる。しかし、釜ヶ崎で天性のクズぶりを露呈してしまったスヤマは、一夜をともにした女から所持金を奪われてしまう。唯一の理解者である彼女とも連絡が取れなくなってしまったスヤマは、釜ヶ崎という町が持つ深い闇へと足を踏み入れていく…

 

上映後、太田信吾監督が登壇。6年前に大阪で撮影した本作がようやく公開を迎え、切実な思いを語った舞台挨拶となった。

 

大阪の劇場でも上映され、太田監督は「いやぁ、感動ですね。お蔵入りも覚悟していたので」と感慨深い。様々な方から「あの映画はどうなっているんだ」と定期的に聞かれ「もうちょっと待ってください」と言い続けてきたので「やっと日の目を浴びることが出来た」感無量の思いだ。東京では先月から公開されており、評判は賛否両論になっている。監督自身が体験した西成の姿をありのままに描いたので「感想を見ても何も感じない。伝わったことが嬉しい」と感じていた。様々な意見も有難く頂戴し「自分は描き切った、という思いがある。賛否両論あっても仕方ない」と、前向きに受けとめている。

 

長野出身の太田監督は、大学生活を東京で過ごした。2010年、大学の卒業制作である、監督自身が引きこもりから脱していく過程を描いたセルフドキュメンタリー『卒業』がコミュニティアート映像祭に招待され、西成のココルームで上映会が開催される。初めて足を踏み入れた西成の街に対して先入観があったが「労働者の皆さんが映画を観に来て下さり、温かく迎えてくださった」と感謝せざるを得なかった。最初の出会いで、街の歴史をしっかり教えてもらい「街の現実にある光と影の部分、両軸を自分の視点で伝えていくことが出来たらいいな」と思いながら、3年後に映画を作る機会を頂いて、6年経って今年公開となる。

 

現在、太田監督は東京で暮らしているが「人と人との距離感がパーソナルな部分に閉じてしまう空気がある」と感じる局面が多々あった。西成の釜ヶ崎にいると「三角公園には街頭テレビがあり、パブリックな空間が個性を活かしたまま成立している印象がある」と感じていく。一人一人のキャラクターがしっかりと見えてきて「関わりが持てるような空気は居心地が良い」と感動した。撮影した6年前と現在では大きく変化しており「街が変わっていく境目の年に映画が撮れた」と改めて、その重みをヒシヒシと感じている。

 

ここで、出演者の方々や太田監督がお世話になった方々が登壇。朝倉太郎さん、DJ WACCKYさん、難波屋の筒井亘さん、カフェEARTHの寺川大地さん、鬼龍院ヨネキチさん、武田倫和さんと多岐に渡り、皆がそれぞれに西成への思いを時間いっぱいに語っていく。最後に、太田監督は「西成で2013年から2014年にかけて撮影した映画が、6年経って公開されるに至りました。映画の中でしか見れない景色が映し出されており、ある種の時代劇になっていてます」と表現する。大阪万博の際に、2万5千人が全国から労働者として集められ、次第に出来上がっていったドヤ街だったことを取り上げ「その役目が終わりかけている。また、労働力を使っていく現実に関しても違った形で問題も出てきている」と現在の課題を挙げていく。本作には普遍的な思いを込めており「見えない現実に対して少しでも想像する機会にこの映画がなればいいな」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『解放区』は、大阪・梅田のテアトル梅田と京都・出町柳の出町座で公開中。また、11月15日(金)より、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋(11月17日(日)に舞台挨拶あり)、11月16日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場、神戸・元町の元町映画館で公開(共に初日舞台挨拶あり)。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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