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『シンプル・ギフト』は本当に大切なものを失くした人だけが獲得できる気づき…篠田伸二監督に聞く!

2018年12月7日

エイズで親を失ったアフリカの子供たちと、震災で親を奪われた東北の子供たちがNYブロードウェイで歌い、踊り、音楽で心をひとつにしていくプロジェクトを追ったドキュメンタリー『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』が、12月8日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。今回、関西での公開タイミングに篠田伸二監督にインタビューを行った。

 

映画『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』は、エイズで親を失くしたウガンダの子どもたちと東日本大震災で津波に親を奪われた東北の子どもたちが、ブロードウェイの舞台に挑戦する軌跡を追ったドキュメンタリー。アフリカ大陸の貧困削減を目標に、優秀な遺児を各国に留学させ、アフリカのニューリーダーを育成する。それはあしなが運動創設者・玉井義臣さんのライフワークである遺児たちの教育支援活動の集大成だった。その活動を世界に発信するため、玉井さんが思いついたのが、ブロードウェイの舞台でアフリカの子どもたちが歌い踊るという大胆な試みだった。玉井さんの思いに賛同した「レ・ミゼラブル」でトニー賞を受賞したジョン・ケアードが舞台演出を担当。東北の震災遺児たちも加わり、舞台経験のない素人の子どもたちと超一流のスタッフたちのブロードウェイに向けての猛レッスンがスタートする。監督は、TBS社員としてさまざまな番組を手がけ、本作が初の長編映画監督作品となる篠田伸二さん。

 

あしなが運動の創設者である玉井さんは50年も活動し続けている。日本国内で日本人の親を亡くした子供たちを支援してきた。交通事故で親を亡くした交通遺児への支援に始まり、阪神淡路大震災が大きなきっかけとなり災害遺児へも支援しいている。当初、交通遺児は年間3万人いたが、現在は5000人を切っており、社会問題としては終息の傾向。だが、自死は変わらずに毎年3万人もいる。次第に支援が多様になっていった。80歳を迎えた玉井さんは「アフリカに向かわないといけない」と思い立った。周囲から批判もあったが「日本国内でしっかり活動している。だがアフリカの現状を見過ごせない。世界中の支援の輪を広げないといけない」と考え、大きく訴える機会を計っていた。そこで、1912年に生まれた小説『あしながおじさん』の100年を迎える2012年をターゲットに絞る。3.11後の秋、ミュージカル『あしながおじさん』が上演された際に、ジョン・ケアードに会い、思いを形に出来ると考え、半年かけて説得した。

 

篠田監督は、本作を手がける中で、時間の捻出に苦労しており「本業の合間にウガンダへ5回訪れたり、ブロードウェイ本番前の合宿に伺ったりしていた」と振り返る。撮影後は「映像をどのようにして作品に仕上げるか。完成した作品をどのようにして世に出すか」が重要と考えた。本作では、300時間の映像を90分にしており「捨てる作業が基本。ドキュメンタリーは時系列に並べても作品にならない。最終的に、観た方に残らないといけない」と、これまでドキュメンタリーを制作してきた立場から説得力がある。言葉を大事にしており「外国語も全て洗い出し、日本語と同じように編集できるレベルまで3ヶ月かけて洗い出した。編集現場には私も立ち会い、心が動かされたシーンを拾い出すのに時間をかけた」と明かす。

 

本作のタイトルは、当初は『あしながおじさん』だった。劇場公開にあたり「お客様に観てもらい、自分事として考えてもらいたい。それが”シンプル・ギフト”」だと篠田監督は述べる。『シンプル・ギフト』とは「本当に大切なものを失くした人だけが獲得できる気づき」だと説く。東北地方を訪れたことについて「被災者の方が異口同音に『家族との当たり前の日常生活が本当に大切だと気づいた』と皆仰っていた」と振り返り、ウガンダの方達も同じだったことを思い返す。また「京都の龍安寺にあるつくばいには”吾唯足知(われ唯だ足るを知る)”と彫られている。これがシンプル・ギフト。日本人の心に刺さる」と痛感した。

 

現在の篠田監督は、本作のナレーションを担当している紺野美沙子さんの舞台演出を手掛けている。表現する手段について「TVであろうが映画であろうが、映像であろうが、舞台であろうが、何でもやる」という姿勢だ。リクエストがあれば「あらゆる手段を駆使する。ドキュメンタリーや映像であれば撮る。年齢は関係ない。次は決まっていないが、表現の場は常に持っていたい」と考えており、今後も果敢に取り組んでいく。

 

映画『シンプル・ギフト ~はじまりの歌声~』は、12月8日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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