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4月から社会に放り投げられる高校生を描いた…!『高崎グラフィティ。』川島直人監督が込めた思い

2018年9月15日

群馬県高崎市を舞台に、高校を卒業し新生活を控える5人の男女を描いた青春群像劇『高崎グラフィティ。』が、9月15日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。今回、出演の佐藤 玲さんと山元 駿さんと共に、本作を手掛けた川島直人監督にインタビューを行った。

 

映画『高崎グラフィティ。』は、群馬県高崎市を舞台に高校の卒業式を終えた5人の若者たちの姿を描いた青春群像劇。幼なじみの美紀、寛子、優斗、直樹、康太の5人は高校の卒業式を終え、それぞれが将来への不安を抱えながら新生活を待っていた。そんな中、美紀の父親が娘の入学金を持ったまま姿を消す。同棲を始める彼氏に浮気疑惑が浮上する寛子、先輩に保険金詐欺を強要させられる優斗と、それぞれがトラブルに見舞われながら、5人は自分について初めて考える…

 

本作は、3分以内の予告編を公募し、グランプリ受賞者が制作費3,000万円相当で予告編を基にして映画を制作できる「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」で第1回グランプリを受賞したことで制作された作品。

 

応募当時を振り返り、川島監督は「3分以内の作品で、タイトルに地名が含まれている、その土地で撮った映像が1カット以上必要、というルールが決まっている。さらに、プロットとなり得るものが必要だったが、応募時には、本編の内容が詳しく決まっていなかった」と告白。元々は、川島監督と佐藤玲さんで進めていた企画で「2015年3月24日に大学同期の玲さんから、TwitterのDMで『一緒に作品を作らないか』と誘われてスタートした」と振り返る。佐藤さんについて「これだけの熱意を持った方からのオファーは、ちゃんとやるべきだと思った。良い作品が出来ると確信したので、主演に決めていた」と明かす。

 

千葉県生まれ埼玉県育ちの川島監督は「東京まで歩いて行ける場所で育ち、その街に住み続けられる。その街の中でしか生きていくしか選択肢が無いと思っていた。自分の両親の仕事を継いだり、近所にあるお店や街中の銀行に勤めたりするのが普通」だと感じる環境の中で育った。大学に入り、地元から一大決心をして東京に出て来ている地方出身の人達にたくさん会い「この感覚は違うのかな。自分の身の回りの話として関東圏内の高校生の話を書きたいな」と感じる。そこで、佐藤さんから大学卒業前の3月をオファーを受け、4月から社会に放り投げられる高校生の話を書く、と決断。関東圏内の各地を周りながらロケ地を考えている時、カメラマンの武井さんから「高崎を観に来てくれよ」と誘われ、実際に周ってみると「古びた商店街が残っており、四方が山に囲まれて閉塞感がある。でも、文化も入ってきており、オシャレなお店も多く、駅前にはOPAもある。街として発達しているから不自由しない」と受けとめ「この街はいいな」と印象に残ったことが高崎に決めた理由の一つだった。

 

佐藤さん演じる女の子を主演にして考えた時、川島監督は「最後は僕の地元の話を反映させたかった。中学時代、ずっと遠くをみていたと思う子が主人公のモデル。目の前の子達とは上手くつるんでいたけど、デザイナーになりたくて地元を出た」とエピソードを明かす。主要な登場人物にモデルがいるが「僕の内面が5分割で入っている」と述べ「実在の人物から名前をトレースし、そのままキャラクターをつくった。僕の中から出てきたり、その子が経験したりしたエピソードをはめていった」と解説する。

 

キャスティングにあたり、高校生役はオーディションで募っていった。大人側の出演者に関しては、川島監督が佐藤さんと武井カメラマンの3人で話し合い「玲さんにも相談してもらいつつ、僕が仕事したい方にオファーした。豊田監督作品で育った僕は渋川清彦さんに出てもらいたいたかった。お父さん役はピンとこなかったが、年齢を考えると適している。台本では数回しか登場しないので、インパクトを残せる人が良い」と捉え、群馬県出身の渋川さんにオファー。川瀬陽太さんについては「2人から提案があった。当初、お父さん役を想定していたが、台本を読んでくれた川瀬さんから社長役を提案された。むしろ合っていると思い、お父さん役は渋川さんになった」と打ち明け「僕が求めていることを理解し、シーンを超えて、作品としてどういうキャラクターであるべきか考えてくれるので、僕としてはやりやすかった。今作は高校生5人がメイン、大人は壁であるべき存在だと理解し、演技もオーバー気味に演じてくれた」と太鼓判を押す。

 

撮影当時について、山元さんは「2日間だけだったが、物凄く寒かった」と振り返ると、川島監督は「冬に朝のシーンは撮れないので、女性陣はヘアメイク等で大変だったと思います」とフォローする。佐藤さんも「日中のシーンが多かったので、毎朝早くに現地に入って、カイロ貼って寒さを凌いだ」と告白。川島監督は、11月に主要キャスト5人が決まった後に「仲の良い5人の空気感を出してほしかったので『仲良くなれ』という無茶振りを依頼した」と打ち明ける。これを受け、佐藤さんは「『仲良くなれ』と言われて、仲良くなるのは難しい。皆でご飯に行ったり、リハーサルを都内で何度も行ったりしたので、芝居が広がり、普段の会話も距離が縮まった。撮影に入ってからも、空気感を探りやすかった」と振り返った。

 

劇場公開を迎え、川島監督は「連日、舞台挨拶に立たせてもらい、感想を聞き、お客さんに届き始めている」と手応えを感じている。上映前は、様々な人に広く届いてほしいな、と思っていたが、連日の舞台挨拶をしていくと「リピーターの方が増えている。今はこの作品を深く愛してくれたらいいな。今後も、1館ごとにしっかりやっていきたい」と決意。本作を通して「5人が頑張り、映画を通して青春してくれた。この5人でやれてよかった」と満足している。山元さんは「僕は、出過ぎず引き過ぎず、バランスが難しく、ニュートラルなタイプの役だった。やりがいありつつ難しい」と冷静に分析した。佐藤さんは「お客さんに観てもらえている安心感がある。撮影期間は怒涛の勢いで過ぎていったので、ようやくゆっくりと映画に向き合える。自分から切り離されてお客さんの物になってきた」と一安心した。なお、現在の川島監督は友情をテーマにした男2人が登場する脚本を執筆しており、未来を見据えている。

 

映画『高崎グラフィティ。』は、9月15日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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