Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

今の日本で活動している俳優の日常がリアルに書かれている…『津田寛治に撮休はない』津田寛治さんに聞く!

2026年4月26日

撮影・稽古・打合せ・イベントを繰り返し、撮休の概念のない津田寛治さんだが、ある日をきっかけに不可思議なことが起こり始め、何者かに付きまとわれる感覚に心をすり減らしていく『津田寛治に撮休はない』が全国の劇場で公開中。今回、津田寛治さんにインタビューを行った。

 

映画『津田寛治に撮休はない』は、これまで多くの映画やドラマでさまざまな役どころを演じてきた俳優の津田寛治さんが、主役として初めて自分自身を演じた新感覚ミステリー。映画ファンであれば誰もが知る俳優・津田寛治。撮影や稽古、打ち合わせ、イベントなど多忙な日々を送る彼に”撮休”という概念はない。ある日を境に、津田の周囲で不可解な出来事が起こるようになり、彼は自分が何者かに付きまとわれているという疑いを持ちはじめる。津田は次第に精神をすり減らし、自分自身を見失い、ついには奇妙な幻覚まで見るようになってしまう。そんな彼に、驚きの事実が待ち受けていた。渡辺哲さん、岩崎ひろみさん、篠田諒さん、駒井蓮さん、板橋駿谷さん、映画監督の井口昇さんが本人役で登場するほか、津田さんの娘である幸役で平澤由理さん、映画監督の傘無定久役でこばやし元樹さん、若手人気タレントの忍木田RENTO役で一ノ瀬竜さん、津田さんのマネージャーである九味星子役で中村祐美子さんが出演。『断捨離パラダイス』『夜を越える旅』の萱野孝幸さんが監督・脚本を手がけた。

 

萱野孝幸監督作品『断捨離パラダイス』に主演している篠田諒さんが事務所の後輩である津田さん。『断捨離パラダイス』だけは観たことがあったが、その後、大分・別府のブルーバード劇場で初めて萱野監督とお会いすることに。萱野監督自身も、手ぶらで伺うことは失礼に思い、作品の企画を検討し、企画書を持参してくれた。当時は、具体的なストーリーがあったわけではなかったようだが、監督から「ドキュメンタリーっぽい作品にしたいんだ」と言われ、津田さんは「僕の取材はしっかりとやった方がいいですよね」と回答。「じゃあ、またいつか…」とその場は収まったが、しばらくして台本が送られてきた。実際に読んでみると「どこで調べたんだ??、というレベルで、僕のプライベートな日常をしっかりとリアルに書かれていた」と驚愕。基本的には、萱野監督の想像力を以て全て書いたようで「やっぱり全然違っていましたか?」と不安もあったようだが「いやいや、気持ち悪いぐらいにそのままですよ」と返答せざるを得なかった。監督自身も驚くばかりだ。そして、津田さんにとっては、ストーリーがおもしろく「これなら本当に出演したいな」と希望するレベルであり「テンポが良く、今の日本で活動している俳優の日常がリアルに書かれているな」と感心。「若手俳優や売れているスター俳優ではなく、所謂バイプレイヤーの日常が描かれている。家庭もあり、サラリーマンっぽさもある。この世界にしがみついて役者をやっている男の日常が描かれている」と興味深く受けとめ「バックステージを描いていながらも、類を見ない。こういう作品が観たかったな、と思うことが描かれている」とワクワクした。

 

作中には、バイプレイヤーの日常が描かれているが「あんなに次々と仕事は来ないですけど…」と前置きしながらも「メールが届くと嬉しいですよ。あれ?新しい仕事かな?と思って…ただの業務連絡だと、ちょっとがっかりする」と本音を話す津田さん。普段はコンスタントに出演依頼をいただいており、仕事が集中する時もあり「皆さんも同じかもしれないですが、万遍なく依頼が来てくれたら、どの作品にも注力できる。準備が難しくなり、煩わしくなる場合もありますけど…」と真摯な姿勢が伺える。だが、以前は、混乱を避けるため、演技を技術的に行っていた時期があり「自らの引き出しを以て芝居をした方が混乱せず、整理しながら演じられる。だから、数をこなしていた時期もあったんです。だけど、駄目な俳優になってしまう、と危機感を抱えた時があった。そこから全てを考え直す時期がありました」と告白してもらった。なお、劇中で描かれるようなワークショップに参加した経験はないようだ。かつて、原田眞人監督が主宰のワークショップにどうしても参加したく手続きをしたことがあったが、当日に仕事が入り参加できなかったことがあり「それがショック過ぎて、以降、ワークショップは受けていないです。講師もやりづらいだろうし、迷惑になるかな」と配慮している。

 

台本には、台詞以外の動作や心情などのト書きが書かれているが、本作では独特のようだ。とあるシーンでは、”見たこともないような美しい土下座”と書かれており「自分が経験した中では、時代劇の土下座がお見事だった。袴をパンとやって、両手でやるんじゃなくて、一つずつやる。あのト書きから発想して演じた」と思い返す。とはいえ、ト書きを実現できなかった箇所も多く、冒頭の長回しシーンを挙げ「とんでもないスピードで着替え、なおかつ綺麗に脱いだ衣装をたたむ津田、と書いてあったんですが、流石にできなかった」と悔やんでいる。また、娘が勢い余ってコップを投げるシーンを挙げ「コップが額に当たる寸前で止める。何回もチャレンジし、助監督さんに投げてもらったんですけど、怖がって額にやってこない。結局、ぬるっと画で面白かったんですけど…」と残念がっており「ト書きがおもしろいから、その通りにやりたい。もし上手く出来たら格好良いし、面白いな」と惜しんでいた。

 

なお、劇中における”津田寛治”を演じるにあたり、役作りについて「技術的な芝居をずっとやっていたらダメになる、ということの1つとして、役作りもあった」と説く。「役作りを意識していることが良くないんだな」と気づいており「一度、役作りから外れないといけない」と言及。役作りの一環として資料を読んだり、その人物の履歴書を書いたりする方法が謳われているが「まず、”自分”を中心にして作っていかないといけない。自分がその役になるために演じるのではない。自分だからこそ、その役にキャスティングされた」と認識し「演じる必要はないんじゃないか」と気づかされた。かつて、竹中直人さんが監督した作品に出演した際に「キャスティングした時点で、その人の役作りは終わっているんだよ。何もする必要ないんだよ」と言われたことを最近になって現れて思い出し「だからこそ、役作りから一度解放されることも、大事だな」と考えている。そこで「役作りをしない、ということにチャレンジしたい」と思っていた中で、本作の企画があり「願ったり叶ったりだった。役作りをしない、演じない芝居をチャレンジしよう」と本作に臨んだ。

 

現場では、とても楽しみながら演じており「物語の中に入り込むことができた。役作りのような計算をして演じていない。芝居をせず、本能的に自分として存在していることが物語になっている」と感じながら「物語の中にいる度合いが他の作品と比べものにならないぐらい密度が濃くて長かった。貴重な経験だった」と幸せだった。特に、ホームレスの人達と焚き火を囲みながら演技論を喋っているシーンについて「リアルだったな。火の力はすげえな」と印象に残っており「 焚き火を見ながら、ずっと集中していた。その中で、”いや、でも、やっぱり愛されるのが大事なんですよね”と言っていると、芝居をしているのか、人に言っているのか、が分からない。相手も”じゃあ津田ちゃんにとって…”と言うのもリアルになってくる。火の力を借りて、リアルな気持ちになっていましたね」と振り返る。

 

編集作業について、冒頭の長回しシーンを挙げ「僕の背中を以て、素材を繋いでいる。編集が少しでもズレていたら、ありきたりなシーンになってしまう。コンマ数秒程度の編集が違いだけで、ほんの少しだけ観客の意識の先に向かっている」と感心。「あのテンポの中で急にテンポが落ちるので、現実に戻ったのかな、と思いきや、そこで更にテンポを一つ落として、これも撮影だった、と見せるシーンもある」と挙げ「編集の力を以て見せているんですよね。観客は、あーっ、と思わされてしまう。編集力が凄いので、それほど凄いネタでなくとも、凄いと思わせる力のあるシーンになる」と解説する。とあるアクションシーンについても「ありがちなネタなんだけど、編集の妙で、意識の半歩先に進むことが出来る」と述べ「教えてもらって出来るものじゃない。生まれ持った編集のセンスがある人なんだろうな」と受けとめていた。また、「編集のセンスが良いけど、編集の力だけで撮っている監督ではないこともすごい」と思っており「若い監督には、編集の力に頼って撮る方も多い。監督は、現場で20テイク程度も重ね、じっくり撮るんですよね。何故そんなにテイクを重ねるのか…芝居をあまり割らず、長回しで撮りたいんですよね。だから、芝居を割らないで撮るやり方と、編集で見せるやり方を混合させられる監督」と驚くばかり。だが、津田さんは大変だとは思わず「もう1回、もう1回…と言って20テイクを重ねるのではない。次はこうやってみましょうか、と言って、監督が役者と一緒に寄り添いながらテイクを重ねる。だから、大変というより、一緒にみんなで模索しながら良いシーンを見つけていく」と真摯に捉えていた。

 

完成した作品を鑑賞し「めちゃくちゃ面白かったですね」と楽しんでおり「自分が出演している作品は、初めて観た時なら、どうしても客観的に観られない。特に、主演作品だとなおさら客観的に観られない。だけど、今作に関してはいつもの主演作より何十倍も自分しか出てない。それなのに、自分が出演していることを忘れるぐらい物語に惹き込まれていた。観終わった後、凄い映画を観ちゃったな、あまり観たことがない作品だな、と感じたことを覚えていますよね」と話す。本作は、既に各地の劇場で公開されており、お客さんが予想以上に物語に惹き込まれていることが分かり「こんなの見たことない」「もっと話題になってほしい」といった声が届いていたり、先輩の俳優から「これはもっともっと評価されるべきだよと」と言ってもらったりしている。その中には、20回以上も鑑賞しているお客さんもいるようだ。なお、萱野監督と今後も映画を製作するなら「警察のサイバー犯罪対策課 VS AIヤクザ、といったAIを駆使したヤクザものをやってもらいたい。そんなVシネマ作品を手掛けてほしい」と楽しみにしている。

 

映画『津田寛治に撮休はない』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のkino cinéma心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・元町の元町映画館で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts