これから世界に羽ばたく新人監督への応援を…!「ndjc2025」辻井俊監督、中田江玲監督、八代夏歌監督、鴨林諄宜監督を迎え舞台挨拶開催!
次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2025年度作品が完成し、4月24日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田で上映中。4月26日(日)には、テアトル梅田に辻井俊監督、中田江玲監督、八代夏歌監督、鴨林諄宜監督を迎え舞台挨拶が開催された。
文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、2006年度より始まり、2026年度で21年になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
2025年度、約70名の応募の中から選考を勝ち抜いた4名の監督たちは、自ら企画したオリジナル作品の完成を目指し、プロとしての第一歩を踏み出すべく研鑽を重ね、各制作プロダクションのもと短編映画を製作した。そんな新たな才能と広がる可能性を感じられる、短編映画4作品が上映される。
映画『36万リットルのオーバーフロー』…
福呂はイラストレーターを目指しながら、プール監視員のアルバイトをしている。そこには、バイト歴10年の先輩・永野や、プロ競泳を目指す女子体育大生・さくら、女子大生のギャル・高橋らが働いている。監視員なのに泳ぐことが苦手な福呂は、永野に小言を言われながらも密かにさくらを想い、単調だが平和な日々を過ごしていた。そんな中、元プロ競泳志望の男性客・新谷がプールにやって来たことで、彼らの日常に変化が起こりはじめる。千葉大学在学中に制作した『組み立てる女』が福井駅前短編映画祭2019にて最優秀女優賞を受賞し、その後テレビ制作会社勤務を経て東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域に学ぶ辻井俊さんが、監督・脚本を手がけた。
※辻井俊さんの辻は一点しんにょうが正式表記
プールという場所から発想して脚本を作り上げた辻井監督。かつて、プールでアルバイトをしていたことがあり「沢山の水があるところに様々な人が、水があるからこそ集まってくる」「プールのトイレを掃除していて、水で滑ってこけちゃって、血が出ちゃって、何してんねやろう、と思った」といったことを挙げ「なんかうまくいかないな、と思う。でも、それはホントに自分のせいでしかないな」といった多くの実感を交えて、プールを題材にしたストーリーを考えていった。ファーストシーンについては熟考しており「変な形や間抜けさが好きなので、阿保らしさを随所に散りばめていきたいな」と思いながら製作しており「水を扱った撮影は凄く時間がかかった」と振り返る。泳ぎが上手な方が現れて、泳ぐシーンについては拘っており「脚本には、物凄く上手い泳ぎ、といったニュアンスを書いていたんですけど、どうやって撮ろう」と検討。「上手い泳ぎは見ていられる。その時間の中で周りの人達がどのように変化するのか」と注視し、長回しで撮ることも考え、時間をかけていった。

映画『繰り返す女』…
生命保険会社の事務員として働く野田貴子は、人付き合いが少なく職場でも孤立しがちな日々を送っている。そんな彼女には、人の持ち物を衝動的に盗んでしまうという癖があった。ある日、野田は苦手な同僚である木村燈の手鏡を盗んだところを本人に目撃されるが、木村は彼女を問いただすこともせず、静かにその場から立ち去る。思いがけない反応に戸惑う野田は、次第に木村の存在を強く意識するようになる。こうして、盗むことでしか誰かとつながれない女と、すべてを捨てて身軽になりたい女の不器用で歪な交流がはじまる。2022年の『最も無害で、あまりにも攻撃的』がぴあフィルムフェスティバルなどの国内映画祭に入選し、脚本を中心に映画やドラマに携わる中田江玲さんが監督・脚本を手がけた。伊藤歩さん、田中麗奈さん、今本洋子さんが出演している。
コロナ禍前後の頃からシスターフッドを描いた物語が増えてきている状況を察しながら「シスターフッドが出来なさそうな2人の物語を書けたらいいかな」と構想し、ストーリーを膨らませていった中田監督。 「関係性を築くのが、相手を思いやるコミュニケーションではなく、自分の欲望を相手にそのままぶつけていくようなスタイルのコミュニケーションの取り方をする主人公だからこそ、友情よりもクイアネスを帯びた愛情みたいなものが先立つ。 だからこそ、1つの問題を解決するため、それぞれの思いは違えど、肩を組み合って連帯するよりも、いつ消えてしまうか分からないような関係性の中で、緩やかに紐帯する2人の話を書けたらいいな」と思い、書いていった。自主制作映画を撮って以来、4年振りの制作となり、5日間の撮影の中で「どのようにして、プロの役者の方に素人が話したらいいんだろう」と迷いながらクランクインし「伊藤さんも田中さんも、各シーンでコミュニケーションを細かく取っていただいた。最初の2日間は、役者さんに目線の話とか台詞毎に”ここで下げてほしい”とか言っていたんです。それだと、理想に描いていたものが表れないな」と次第に気づくことに。3日目頃になると、コミュニケーションがあるシーンが増え「心情や、どのような経緯を経て此処に辿り着いたのか、と話をよくするようになってから、それぞれの登場人物像が摺り合わさっていったな」と手応えを掴んだ。田中さんとは、演じたキャラクターの生い立ちに関することも話している。伊藤さんについて「誰かに眼差される役柄を演じることが多い方なのかな」と思いながら「今回は、誰かを眼差す人として描かれている新たなキャラクターなのかな」と受けとめていた。田中さんについても「おおらかで優しい感じの役柄が多い」といったような印象があり「逆に、周りに合わせないぞ、という気持ちはありつつ、輪の中には混ざれる人物像も新しい役柄なのかな」と思い描いた。

映画『うねうねとまっすぐ』…
田舎町に暮らす天然パーマの高校生であるまるのお弁当はいつもホットケーキで、家に帰ってもまたホットケーキを食べる。ある日、都会から直毛男子の素直が転校してきて、まると同じアルバイト先で働きはじめ、2人は一緒に帰るようになる。圧倒的存在感を放つ素直は、何かを内に秘めている様子だった。まるが帰宅すると家の様子がやけに明るく、いつもあるはずのホットケーキがない。珍しく一緒に食卓についた父は、家を出て行った母が再婚したことを告げる。監督・脚本は、高校の卒業制作で撮りあげた短編映画『サンライズ』がPFFアワード2024に入選した八代夏歌さん。テレビドラマ「Maybe 恋が聴こえる」の大和奈央さんが主人公のまる、テレビドラマ「女優めし」の小方蒼介さんが転校生の素直を演じた。
「子供の話が書きたいな」と思い、執筆を始めた八代監督。そもそもは「今だから分かる子供の感情とか感覚を忘れないうちに撮りたいな」と思い立ち「最初にキャラクター設定から思いついたけど、髪の毛がうねうねしていて、大雑把な性格の女の子の繊細な部分を描いていきたいな」と着想。「子供同士の関係性を今回は挑戦したい。恋愛じゃないけれども、2人だけで通じ合えるもので通じ合っていく関係性を描きたい」と思いを膨らませていった。学校での撮影は難しく「エキストラさん含め凄く沢山いて画面に映るのはすごく計算したかった。でもこっちを見ていたら、こっちがおろそかになって… みたいなことが結構多かった」と苦労を重ねている。とはいえ、拘ったシーンでもあり、撮影中は楽しんでおり「自分の中の記憶を辿って、こんなやついたな…と。 現役の高校生も沢山いたので、”こんなやつ、いたよね”といった話もしながら撮っていきました」と振り返る。

映画『巡り巡る果て』…
関東近郊にある、昔ながらのカメラ店。店主の杉原文雄と従業員の深谷稔は、実の親子のような関係を築き、互いに支えあってきた。近頃は文雄に認知症の症状が現れはじめているが、稔はこれまで通り、彼と店を守り続けようとする。そんなある日、写真家を目指して出ていった文雄の息子である貴一が帰ってくるが、その存在は稔の居場所を少しずつおびやかしていく。監督・脚本は、2024年の『ぼくの姿』が福井映画祭16THにて審査員特別賞、2025年の『屈折の行方』がPFFアワード2025および第26回TAMA NEW WAVE「ある視点」部門に入選した鴨林諄宜さん。NHK連続テレビ小説「虎に翼」などの平埜生成さんが稔役で主演を務め、『明け方の若者たち』の楽駆さん、『検察側の罪人』の酒向芳さんが共演。
このプロジェクトは、30分間の短編作品という規定があり「その中で、できるだけミニマムな体制で物語を作れないかな」と検討した鴨林監督。元々、自主映画として考えていた作品の構想があり「血の繋がりがある息子が実家に帰ってくると、自分の代わりになっている男がいる。そういう怖さや気持ち悪さで、最初に脚本を書き始めた」と話す。キャスティングについて、酒向さんは、プロデューサーが候補として挙げており「周りの2人とのバランスを見て、平埜さん、楽駆さん、酒向さん、という三人は、関係性のバランスがよく見えてきてたので、最後に決まったんですけど、酒向さんを選びました」と説明。舞台となった昔ながらのカメラ屋さんについて「映画は、登場人物と同じぐらいに場所も大切。場所がノり切れなかったら撮れない、というぐらいに場所は大切なもの」と説き「何度もロケハンし、様々なカメラ屋さんを回って、静岡、千葉、茨城を回った」と明かす。舞台となったカメラ屋さんは千葉県にあり、現在も営業しており「歴史がずっと残されている。現在の2階は、現像の暗室になっているんですよね。今はほとんど使っていないんですけど、あぁいったところもしっかりと写したいな、と思ってこのお店を選びました」と語った。

「 ndjc2025」は、関西では、4月24日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田で公開中。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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