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プロの現場では、様々な人々が協力し多くの出来事が起こる…「ndjc2025」辻井俊監督、中田江玲監督、八代夏歌監督、鴨林諄宜監督に聞く!

2026年4月22日

次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2025年度作品が完成し、4月24日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田で上映される。今回、各作品を手掛けた、辻井俊監督、中田江玲監督、八代夏歌監督、鴨林諄宜監督にインタビューを行った。

 

文化庁委託事業「ndjc(new direction in Japanese cinema):若手映画作家育成プロジェクト」は、次代を担う優れた長編映画監督の発掘と育成を目指し、2006年度より始まり、2026年度で21年になる人材育成事業。優れた若手映画監督を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
2025年度、約70名の応募の中から選考を勝ち抜いた4名の監督たちは、自ら企画したオリジナル作品の完成を目指し、プロとしての第一歩を踏み出すべく研鑽を重ね、各制作プロダクションのもと短編映画を製作した。そんな新たな才能と広がる可能性を感じられる、短編映画4作品が上映される。

 

映画『36万リットルのオーバーフロー』…

福呂はイラストレーターを目指しながら、プール監視員のアルバイトをしている。そこには、バイト歴10年の先輩・永野や、プロ競泳を目指す女子体育大生・さくら、女子大生のギャル・高橋らが働いている。監視員なのに泳ぐことが苦手な福呂は、永野に小言を言われながらも密かにさくらを想い、単調だが平和な日々を過ごしていた。そんな中、元プロ競泳志望の男性客・新谷がプールにやって来たことで、彼らの日常に変化が起こりはじめる。千葉大学在学中に制作した『組み立てる女』が福井駅前短編映画祭2019にて最優秀女優賞を受賞し、その後テレビ制作会社勤務を経て東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域に学ぶ辻井俊さんが、監督・脚本を手がけた。
※辻井俊さんの辻は一点しんにょうが正式表記

 

大学生の頃、自身でも様々な映画を撮っていた辻井監督。その後、テレビ制作会社に4年間勤務し「また、映画を撮りたい」と思うと同時に「脚本をしっかり書けるようになろう」と志した。そこで、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域に進学し脚本を学ぶも、「時間のある中やっぱり自分で映画を撮りたい」という気持ちが高まり、本プロジェクトに応募することに。プールでアルバイトをしていたことから「この場所で映画を作ってみたい」と考えていた中で、アルバイト3日目に、施設内のトイレを掃除しながら転んで出血するレベルの怪我をしてしまい、虚しさを抱いてしまった。自身が好きな町田康さんの作品から”無能の生き方”といった作家性を感じ取っていたことから「自分はなんて駄目な人間なんや、といつも思っている。ダメな奴が勝手にアホなことをしでかして…でもそれは、自分のせい。誰かのせいでもない。じゃあ、どうするねん…というような映画を手掛けたい」と構想。そして「プールが舞台なら、ヒロインを登場させたい」と検討した。当初は、プールで指導しているコーチ同士のラブストーリーを考えていたが、怪我をした際の感情を取り入れようとしたら「主人公は、プールの監視員。可愛い監視員の女性がTシャツの下に水着を着ており、脱いでプールの安全確認を始める」という画が思い浮かんだ。そこからストーリーを作り上げていき、自身が好きな小説『グレート・ギャツビー』のラストシーンや、当初の構想を取り入れた脚本を仕上げていった。

 

キャスティングにあたり、これはプール監視員という無名の人々の話なので、誰もが知っている俳優というよりも若い新人俳優の方をオーディションで決めていくことに。さくら役の俳優は泳げる必要があり、苦労しながら選んでいった。そして、新谷役の俳優は、本当に泳ぎが上手い必要があり、演技経験がないコーチの方だったが、お願いすると快諾していただけた。最終的には、全員のバランスと醸し出す雰囲気から選んでいる。カメラマンには林海象監督の『夢みるように眠りたい』や、プールを舞台にした『ウォーターボーイズ』で撮影を担った長田勇市さんをお願いした。ベテランのカメラマンであり、共に仕事ができるか不安があったが「芯があるカメラマンさんと仕事をしたかった。僕の意見を突っぱねてほしかった」と思いを明かし「自主映画では自分の思いのままに撮っていた。それはそれで良さがあるんですけれど、果たして、それが正解なのかはずっと分からないままだった」と吐露する。「長田さんはクラシカルな画作りをされるカメラマンという印象で、どういった目線で撮られているのか勉強してみたい」という思いもがあり、長田さんと一緒に仕事をすることが叶った。

 

現場では「的確なショットを撮られる方だな」と実感し「”おもしろそうだから”、”奇をてらって”、”映画っぽいから”といったことではなく、観客が見たい目線でいつも考えられている」と勉強になったようだ。とはいえ「私はこんな風に撮りたい。でも、その提案はなかなか理解を得られないといったことがありました。自分の意見を押し通せば更に何か生まれたかもしれない」と苦慮することもあったが「突っぱねてほしい、という当初の狙いは達成できた」と冷静に受けとめていた。

 

編集段階となり、実際に素材を繋いでいく中で「脚本の段階で練ったつもりでも、映像を見たらストーリーを説明するためだけのシーンが多かった。まず削ることが最も大変だった」と振り返る。そして、撮影時に「主人公の気持ちが表れてこない演技をしてください」と伝えていたことから、分かりづらいところもあり、主人公の決意や選択などが少しでも強調されるように、様々な手段を試みていくことに。劇伴に関しては「シリアスになり過ぎず、コメディになり過ぎないように」といった意向があり、海田庄吾さんに依頼し「水がたゆたっているような…前にも進まず、後ろに進んで悲しいわけでもない。プールの水面ような曲を作ってくださった」と手応えがあったようだ。エンディングテーマについては、大学時代の友人に依頼し、少しだけ前に進んだという印象を感じる楽曲となっている。完成作品について、とあるシーンではスタッフ内で意見が分かれることもあり「途中でホッコリできて主人公が好きになった、という意見もあった一方で、流れが途切れるという意見も。他の正解があったかもしれない」と様々な反応を真摯に受けとめている。今作で取り組みたかったが実現できなかったことを今後に活かしたいと思っており、次は、北海道を舞台にしたサスペンス要素もあるコメディで、ダメ男3人組によるロードムービーを模索中だ。

 

©2026 VIPO

 

映画『繰り返す女』…

生命保険会社の事務員として働く野田貴子は、人付き合いが少なく職場でも孤立しがちな日々を送っている。そんな彼女には、人の持ち物を衝動的に盗んでしまうという癖があった。ある日、野田は苦手な同僚である木村燈の手鏡を盗んだところを本人に目撃されるが、木村は彼女を問いただすこともせず、静かにその場から立ち去る。思いがけない反応に戸惑う野田は、次第に木村の存在を強く意識するようになる。こうして、盗むことでしか誰かとつながれない女と、すべてを捨てて身軽になりたい女の不器用で歪な交流がはじまる。2022年の『最も無害で、あまりにも攻撃的』がぴあフィルムフェスティバルなどの国内映画祭に入選し、脚本を中心に映画やドラマに携わる中田江玲さんが監督・脚本を手がけた。伊藤歩さん、田中麗奈さん、今本洋子さんが出演している。

 

PFFアワード2022に入選した『最も無害で、あまりにも攻撃的』を観た方からお声掛けをいただき、ライターズルームで映画やドラマの企画開発を行っていた中田監督。だが、脚本のプロットを書く仕事をしながらも、監督をする機会に遭遇できず「ndjcに応募すれば監督として働くきっかけになるんじゃないかな」と思い、応募してみることに。コロナ禍前後の頃から、シスターフッドを描いた映画や小説が増えてきている、といったトレンドを受けとめながら「シスターフッドができない2人の話をやってみたら、おもしろいかな」と気づいた。そこで「”盗み”という映画的なモチーフを取り入れつつ、短編の物語が書けるのではないかな」と着想し、脚本を書き始めていく。「相手を思いやるコミュニケーションの取り方ができないからこそ、自分が抱いた欲望のまま動き、相手に向かって突き進んでいく。だからこそ関係性ができた時に、シスターフッド的な友情よりも、クィア性を帯びた愛情が先立つ。そんな主人公像が描けたら魅力的だ」と気づき、ストーリーを展開させていった。執筆を進めながら「小説を書くように脚本を組み立てていくのが楽しい」と気づいており「セリフが少ないので、ト書きを以て情報量を補う側面は必要だった。小説みたいに状況を形容する言葉を意識的に多く入れつつ書いています」と説く。

 

キャスティングにあたり、プロデューサーと何時間も議論し、様々な俳優を挙げていく中で、伊藤歩さんと田中麗奈さんが主役2人の候補に。伊藤歩さんは、岩井俊二監督作品ではもちろん、大学受験で通っていた塾を抜け出し友人と観た映画『昼顔』で演じていた役柄の印象も強く、「力強い存在感で、ストーリーを支える方だな」と魅力的に思っていた。また「今までは、人から憧れられる対象として描かれる役柄を演じられることが多かった」と受けとめており「逆に、今回は、人を眼差し憧れる主体としての役柄だったので、今までとは異なる役になるかな。すごく観てみたいな」と希望し、オファーしている。田中麗奈さんは、幼い頃に観た『ゲゲゲの鬼太郎』で猫娘を演じていることが印象深く「子供の頃の記憶に鮮明に残るほど、画面にいることで、その画を豊かにする格好いい方だ」と受けとめていた。三島有紀子監督『幼子われらに生まれ』でもその魅力を再確認し、今回の依頼に至った。自身の成長とともに思い出に残っている役を沢山演じられてきた2人とお仕事ができることは予想外の出来事になっている。

 

撮影にあたり、カメラマンの飯岡幸子さんを依頼した。杉田協士監督の『春原さんのうた』を鑑賞した際、「このカメラは誰がやっているんだ?」と気になり、飯岡さんの名前を見たら直ぐ映画を観に行くほどのファンになっている。今までの自主制作では自身で撮影していたが、今回は「絶対に飯岡さんだ」と思い依頼した。現場で実際に仕上がっていく画を見ながら「本当に素晴らしい画作りをされる方だ」と気づかされ「対象との距離の取り方、どういう風に画面が構成されるか。想像を上回るものが目の前に現れる」と喜んだ。また、美術に関しては、担当した中村哲太郎さんによる場づくりが興味深かった。「もので溢れかえった書斎」という設定の部屋では、その中央に丸い大きな地球儀が置かれ、積み上げられた大量の本や段ボールの四角さが際立つ。田中麗奈さん演じる木村の手鏡を盗む場面についても、伊藤歩さん演じる野田の襟の赤さに注目し「襟の赤さと後ろのライトで作った夜の青さが、その場面を印象付けている。すごく力強いシーンになったな」と感じ、照明を担当した岩木一平さんとスタイリストの小笠原ヨシエさんに感謝せざるを得ない。そういった想定外の出来事に遭遇し「プロの現場では、様々な人々の力を借りて沢山の出来事が起こるんだな」と実感している。なお、ト書きが多い台本を以て演じていただくにあたり、俳優とのコミュニケーションは重要であり「プロとして長年活躍されている俳優部を前にして、どんな言葉をかけられるのか」と自らの課題として認識していた。特にセリフの少ない役柄を演じる伊藤さんとは場面ごとに細かいニュアンスについて話し合いながら調整していき、撮影3日目には「役に対する理解を共通認識にできた」という手応えを感じた。

 

編集作業では、まず素材を並べてみると30分程度だった。そこから1シーン程度をカットし、各々のシーンを少しずつ招請していく過程が難しかったようだ。特に、車体が浮くシーンでは部分的にスローモーションを施しており「どの瞬間を、どれくらいの速さで、どの程度の長さを取り入れるか」について、時間をかけて仕上げていった。編集の松尾浩さんと様々なパターンを試しながら、「車が浮いて、腹の底がふわっとする感覚」を視覚的に見せる工夫を施し、最終的には納得できるシーンとなった。劇伴については、近年の音楽における流行も汲み取りながら「主役の2人は、たくさんのものに囲まれて暮らしている。だからこそ、音が何層にも重なるオーケストラ的な編成で、ミニマリズムの対極であるマキシマリズムの要素を劇伴として取り入れられたら」と着想。そこで、音楽を担った原田智英さんにヴィヴァルディ等の参考となる楽曲を送り、それぞれのシーンで主人公の変化に合わせて調整しながら、主人公のテーマ曲と気持ちが昂る楽曲を作っていただいた。先月開催された合評上映会では「緊張感が30分間ずっと持続している」といった感想をいただくことが多く「静かな映画なので、緊張感がなければ飽きられてしまうことが怖かったんですけど、そのように言っていただけて良かったな」とホッとしている。他にも終盤ではクスッと笑えるシーンを取り入れようと脚本を書いていたので「おもしろかった」「シュールだった」と観客を楽しませることができた、と受けとめていた。今後は「もう少しだけ短編作品を撮ってから長編作品を手掛けられたら」と望んでおり「昔からずっと女同士の話を書きたい、と思っています。女同士が主人公で、クィア性を帯びたストーリー等を今後もずっと書いていけたらいいな」と未来を楽しみにしている。

 

©2026 VIPO

 

映画『うねうねとまっすぐ』…

田舎町に暮らす天然パーマの高校生であるまるのお弁当はいつもホットケーキで、家に帰ってもまたホットケーキを食べる。ある日、都会から直毛男子の素直が転校してきて、まると同じアルバイト先で働きはじめ、2人は一緒に帰るようになる。圧倒的存在感を放つ素直は、何かを内に秘めている様子だった。まるが帰宅すると家の様子がやけに明るく、いつもあるはずのホットケーキがない。珍しく一緒に食卓についた父は、家を出て行った母が再婚したことを告げる。監督・脚本は、高校の卒業制作で撮りあげた短編映画『サンライズ』がPFFアワード2024に入選した八代夏歌さん。テレビドラマ「Maybe 恋が聴こえる」の大和奈央さんが主人公のまる、テレビドラマ「女優めし」の小方蒼介さんが転校生の素直を演じた。。

 

卒業制作で作った短編映画『サンライズ』を以てPFFアワード2024に応募し入選した八代監督。その後も脚本を継続的に書いていた中で、PFF事務局からndjcに関する案内メールを受け「もしかしたら次の作品を撮れるかもしない」ときっかけを見つけ、応募した。脚本執筆にあたり、最初に主人公のキャラクター設定が思い浮かんだ。「映画的に血となる人物がいたら、ストーリーができそうだな」「こういう設定があったら、おもしろそうだな」と様々なアイデアを繋ぎ合わせていき「子供の映画が撮りたかった。高校生の不安定な時期を過ごす子供たちが、恋愛関係ではなくとも、2人だけが分かるもので通じ合ってくるストーリーが書きたいな」と思いを巡らせ、作り込んでいく。初めは好きな映画の脚本を参考に、見よう見まねで書き上げていった。

 

キャスティングにあたり「若い方で、あまり演技が固まっていない人の方が、面白くなるんじゃないかな。オーディションで実際に見た上で決めてみた方が良いよ」とアドバイスを受け、主演の2人についてはオーディションを実施。多くの方を見た中で、特にビビッときた2人を選んだ。その後、クランクインした際に「自主映画を撮った時、私が撮るから皆が私に協力してくれていた。そこでは、各々が脚本の内容等に詳しく言及することはなかった。今回、多くの部署の方が、私が書いた脚本に登場するキャラクターに関する解釈等を持っていて、皆がそれらを話してくださる」と現場の状況が違うことに気づき「こんな風に私は思っているから、もし違うなら詳しく共有した方がいいかも」と次第に考えるようになった。そこで、自らの案を提案していき、それらを何度も試してもらい「1人の力だけじゃなく、全員の力で作ること自体が違うな」と感動する日々を過ごしていく。なお、各々のキャラクターには劇中では描かれない設定も作り込んでおり、衣装合わせの際には、詳細を最後まで書いたものを1人1人にお渡ししている。

 

編集段階となり、最初から素材を繋いでいった時点で30分ちょうど程度となった。だが、繋いだだけでは淡々とストーリーが流れていくように感じ、「主人公の気持ちがより出るようにするにはどうするべきか」と検討。多くのシーンを入れ替えていきながら、シーンをどこで切るかなど、細かな部分を一秒単位で考えていった。劇伴に関しては、物語の後にも続いていく2人の人生を想像していく中で希望が感じられる音楽にしたいと提案。音楽の田井さんからは「沢山の音楽を入れなくてもいいんじゃないか」とアドバイスを受け、本作のテーマにあった楽曲を作ってもらい、挿し込んでいる。その後、合評上映会では「主演の2人の表情が良かった」「若くてフレッシュな映画が観られた」といった感想をいただいた。今後も「子供の話が書きたい」と願っており「子供の不安定さや、様々な人が見せる色々な姿、悪い面も良い面も丁寧に描きたい。年齢が離れた人同士の友情を描いてみたい」と次の機会を楽しみにしている。

 

©2026 VIPO

 

映画『巡り巡る果て』…

関東近郊にある、昔ながらのカメラ店。店主の杉原文雄と従業員の深谷稔は、実の親子のような関係を築き、互いに支えあってきた。近頃は文雄に認知症の症状が現れはじめているが、稔はこれまで通り、彼と店を守り続けようとする。そんなある日、写真家を目指して出ていった文雄の息子である貴一が帰ってくるが、その存在は稔の居場所を少しずつおびやかしていく。監督・脚本は、2024年の『ぼくの姿』が福井映画祭16THにて審査員特別賞、2025年の『屈折の行方』がPFFアワード2025および第26回TAMA NEW WAVE「ある視点」部門に入選した鴨林諄宜さん。NHK連続テレビ小説「虎に翼」などの平埜生成さんが稔役で主演を務め、『明け方の若者たち』の楽駆さん、『検察側の罪人』の酒向芳さんが共演。

 

元々ndjcを知っていた鴨林監督。『ぼくの姿』が福井映画祭16THで審査員特別賞を受賞し、映画祭に推薦してもらえる機会を得たことで、応募に至った。「父親が住む実家に血の繋がっている息子が帰ってきたら、血の繋がっていない息子(他人)がいて自分の代わりになっている」といった3人の関係性を脚本に落とし込む中で、血の繋がっていない息子を主人公にして物語を膨らませていった。なお、本作は、PFFアワード2025で入選した『屈折の行方』と共通する作家性があり、写真やカメラについては「元々、カメラという機械が好きで、”撮る・撮られる”関係性にもおもしろみを感じていて追求していきたいテーマである。これからも、写真やカメラは自分の中で身近なモチーフになる」と話す。また、年配の登場人物を描くことについては「若い世代を撮りたいと思う一方で、中年以降の男女に惹かれることが多い。自分がまだ経験していない世代を描くことは難しいが、今後も登場させると思う」と言う。

 

キャスティングでは、プロデューサーが多くの候補を提案してくれた。映像や写真の資料を見ながら登場人物3人のバランスを勘案し、「平埜生成さんと楽駆さんと酒向芳さんを掛け合わせたら、皆が魅力的に見えるのでは」と考えてオファーした。また、カメラマンの選定については、監督自身は“フィックス”で撮ることが多いが、自分とは違う“常に動かす”スタイルに挑戦する意味も込めて、柳田裕男さんに依頼した。現場ではプロのスタッフたちの仕事の早さや意図の汲み取り方に感心した。「スタッフは皆脚本を読み込む力があり、芝居をしっかりと見ている。自主映画では、芝居を見る前に優先されることがあまりにも多かった。現場で芝居をしっかりと見ることは、映画の面白さや魅力に繋がる」と実感。また、演出についても部署関係なく意見が出てくることに驚き、その中で「自分は演出するのが仕事、それができなければ監督の意味がない」とヒシヒシと感じたという。映画で描いた認知症については、“認知症”を映画のアイテムとして使わないよう、熟慮の上で脚本を書いたが、演出部のスタッフも認知症について詳細に調べ、医師の意見を聞いたりしていることが分かった。綿密なリサーチは自主映画では手が行き届かないこともあり、一つ一つの細かな検証と理解の積み重ね、そこから深める俳優との対話が大切であると気づいたとともに、スタッフの協力にも深く感謝し、チームでつくる映画の魅力を改めて感じたようだ。

 

編集では、ndjcの規定尺である30分に収めることに最も苦労した。無理に収めてみたものの出来事の羅列になり“間”が失われてしまったので、構成から見直し、編集スタッフはもちろん他部署のスタッフにも意見をもらい、多方向から検討した。なお、劇伴に関しては、音楽によって観客の映画の観方を方向づけることはしたくないという鴨林監督の意向を汲んで仕上げてもらったという。鑑賞した方からは「主人公の稔を可哀想に思った」と言われることも多いが、作品から哀愁を感じてもらうことを意図していたため、「可哀想」は必ずしもネガティブではないとのこと。次のステップでは、ndjcでの経験を活かして長編を撮りたいと意気込みを語ってくれた。

 

©2026 VIPO

 

 ndjc2025」は、4月24日(金)より劇場公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田で公開。4月26日(日)16:00の回上映後には、監督4名による舞台挨拶を開催。

 

©2026 VIPO

 

☆各地の公開情報

東京・恵比寿ガーデンシネマ
期間:4月24日(金)〜4月30日(木)
舞台挨拶:連日18:30の回上映後 ※4月26日(日)を除く

 

大阪・テアトル梅田
期間:4月24日(金)〜4月30日(木)
舞台挨拶:4月26日(日)16:00の回上映後

 

名古屋・ミッドランドスクエ シネマ
期間:5月22日(金)〜5月28日(木)
舞台挨拶:5月23日(土)18:30の回上映後

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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